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地域活性化の順番、ブルーチーズとれんこん

地域活性化=人口を増やす、ではありません。

仮に人口が少なくても、
その地域の「経済」が活性化し、
そこに住む人が
より豊かに幸せに暮らせるようになれば、

それは「地域活性化」だと
言えるのではないでしょうか?

仮に見かけの人口が増えたとしても、
内実が貧しく
都市部に稼ぎを収奪されるような
展望の見えない暮らしが続いていては、

それは地域活性化ではないのでは?

人口増加とはあくまで「結果」であり、
それが目的ではない。

そう考えていったとき、

いかに「高付加価値の産業」を生み出し、
経済的に「他の地域は無いもの」を
生み出せるかどうか?

そここそが、大事だと思います。
「稼げる地域」は、活性化する。
「稼げない地域」は、衰退する。

順番が違ってはいけない、と思うのです。

人口だけがいくら増えても、
稼げる地域、豊かな地域に、
なったりするわけでは、ないですよね。

「そういう理想論を言われてもねぇ…。
うちの地域には、本当に何もないんです」
「山や田んぼ、大自然だけしかない」
「高付加価値の産業?
作れない、できない、売れません!」

反論が、聞こえてきます。
そんな絶望への「発想」のヒントとしまして、

本記事では、
二つの事例の概要を紹介します。

元々の人口や施設の有無に左右される
「工業」「商業」「サービス業」ではない。
「畜産業」「農業」にかかわる事例です。

◆事例1:江丹別の青いチーズ

北海道の江丹別(えたんべつ)。
旭川市の郊外にある地域。
80名程度の本当に小さな集落です。

ここに「江丹別をチーズ界の
ロマネコンティにすること」

を目標にして、
「ブルーチーズドリーマー」を名乗り
頑張っている方がいます。

伊勢昇平さんです。1986年生まれ。

この方、学生の頃、
江丹別=田舎過ぎると地元を馬鹿にされて、
怒っていたそうです。
「電気が通ってない」「水洗じゃない」…。
伊勢さんは、ふるさとを罵倒される
怒りのエネルギーを、学びに向けます。

「世界で、でかい仕事をしたい!」

そう考える高校生の伊勢さんに、
英語の先生は、こう言った。

「世界標準で生きろ」
「お前の家は、牧場だ。
その牛乳で世界一のチーズを作るのも、
立派な世界標準ではないのか
?」

そう言われた伊勢さんは
帯広畜産大学に進学します。
チーズ作りを学び、卒業後は住み込みで
チーズ生産の現場で働くなど、
「チーズ一色」の生活を送りました。

さて、地元に戻ってブルーチーズの
生産・販売を我流で始めた伊勢さん。

するとJALから「機内食に使わせてくれ」と
電話が入って、爆発的な人気が出ます。
あっという間に世界標準!
「ちょろいぜ!」と、天狗になりました。

…ところが、好事魔多し。

ある時、チーズの青カビが全滅しました。

「安定して生産できなきゃ、使えないな!」
「しょせんはまぐれだよ、まぐれ!」

手の平返しで周りから誹謗中傷を受け、
絶望の淵へと追い込まれていきます。

「…我流では限界がある。
チーズの本場で勉強してくるしかない!」

そう思った伊勢さんは、
すぐさま円をユーロに変えて、
フランスへチーズ修行に出かけた。

2015年、30歳前のことです。

これが功を奏して、安定した
チーズ作りができるようになったといいます。

北海道では、ふつうに牛乳を出荷すると、
1リットルで80円程度。
ところが、ブルーチーズに加工すれば
1リットル換算で1,000円に跳ね上がります。

高付加価値化の酪農!

このスタイルに惹かれ、人が集まってきて、
レストランなども開店していった…。
そう、新たな経済・産業が生まれたことで、
結果的に人口が増えていったのです。

『一本何百万もするワイン、
「ロマネコンティ(ワイン)」も、
「ボーヌロマネ」という村の区画で
「コンティ」という所があって、
それが、そのまま名前になっている。
世界中に広がりブランドになっている。
農産物は、本来そういうものだと思います

そう語る伊勢さんは、今日も
「ブルーチーズドリーム」を追いかけます。

◆事例2:5,000円のれんこん

茨城県の霞ヶ浦の近くでは、
「れんこん栽培」が盛んです。

ただし「れんこん」と言えば、
「泥臭い」イメージがありますよね。
ゆえに「そんなに高くは売れない」という
印象を持たれがちではないでしょうか?

そういう状況を覆すべく、
野口憲一さんは
「れんこんのブランド化」を進めています。

何と1本、5,000円!

彼は1981年、かすみがうら市の生まれ。
実家のれんこん生産を手伝いながら、
大学院で民俗学・社会学の研究を続けて
博士号も取得した異色の民俗学者です。

ブランド構築のために高価な箱を作って、
売り出してみたのは2013年頃のこと。

ところが、全く、売れなかった。

売れるようになったのは2017年。
新聞で「れんこん世界進出!」と
掲載されてから
、だと言います。

『日本一になるためには、世界に出て、
パリなどの一流レストランで
使われるようになることが大事だ。
まずは、海外での評価を上げること』

そのように野口さんは考えて、
パリのレストランに営業をかけたのです。

実際に食べてもらい、高評価を得て、
パリへの輸入ルートを構築していき、

世界的な評価を得ることに成功!

これが日本でも
高価で売れることにつながりました。

もちろん、1本5,000円は、高い。
たくさん売れるわけではありません。
1年で売れるのは、20本から60本程度。

ですが、野口さんは
この超高級・高品質のれんこんを、
「あえて少数しか売り出さない」という
戦略をとっているそうです。

『例えば、エルメスの300万円のバッグが
大量に販売されたとしたら
300万円の価値はなくなりますよね。
それと同じ。
ただし無理に量を少なくしているわけではない。
フラグシップモデルとして厳しい選別を
パスするれんこんは本当に少ししか採れない。

台風が来た年などは、
一本も収穫できないこともあります』

厳しく選別した最高級のれんこん!
良いものを必要とされるところに高く売る!

これも、高付加価値をつける一つの方法、
ではないでしょうか?
このような「発想」と「実行」が、
ひいては、れんこん全体の価値向上を
促すのではないでしょうか?

以上、二つの事例の概要を紹介しました。

「うちの地域は、何もない…」
「うちの商品が、高く売れるわけがない…」

そういう思い込みを、捨てる。

発想する。何かないか探す。
見つける。つくる。行動する。
世界に向けて周知する。
他人の目に触れさせる。

伊勢さんや野口さんの試みは
「高付加価値の産業」につながり、
ひいては「地域の活性化」にも
つながっていきました。

順番を間違えない。

高付加価値の産業からの地域活性化。
地域活性化だけを考えてはいけない。
まず、稼げるものを。
「稼げる地域」をこそ、つくる。

読者の皆様自身はいかがでしょう?
皆様が住む地域はいかがでしょうか?

※本記事は以前に書いた記事の
リライトです↓
『江丹別の青いチーズ、5,000円のレンコン』

参考にした元の記事への
リンクも貼っています。
ぜひ合わせてお読みください!

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