「このツノは、未来の貴女のため」ヒスイの毎週ショートショートnote 字数オーバー(笑)
わが家が代々受け継いできた老舗ホテルには、「人のツノ」が見える場所がある。東館の、祖母の部屋だ。
私は子供の頃、そこでツノを見た。
祖母は静かな人だったが、ときどき厳しい顔で母を部屋へ呼んだ。
母を心配した私は、こっそり部屋をのぞいた。
障子ごしに、うなだれた母の影が見える。向かい合った祖母はぴしりと、
「お客様の前で、何という失態です!」
やがて祖母の額から、ツノがはえてきた。鋭くとがったツノが、母に迫る。
「……ママにげて」
私の小声が聞こえたようだ。ツノはみるみる