「名言との対話」 9月3日。長谷川慶太郎「好きなことをトコトンやること」

長谷川 慶太郎(はせがわ けいたろう、1927年11月29日 - 2019年9月3日)は、経済評論家。

京都府生まれ。大阪大学工学部を卒業後、新聞記者や証券アナリストを経て、国際的視点に立ったユニークな分析をする国際エコノミストとして活躍した。終戦の翌日から軍事の勉強を始め、自衛隊幹部学校、防衛省防衛研究所一般課程の非常勤講師を30年以上にわたって務め、「現役自衛官の中にはわたしの教え子がたくさんいる」と称している。こうした年季の入った軍事知識に裏打ちされた独特の分析に定評がある。また工学部出身でもあり、最先端の技術情報に詳しい。政治、経済、国際問題を大胆に予測し、企業経営者や投資家にはファンが多い。 石油危機の到来と終息を予見するなど政治・経済、国際情勢についての先見性をもつ的確な分析を提示した。「 長谷川慶太郎は『高橋亀吉プラス石橋湛山プラス、シャーロックホームズ』である」とは、中谷彰宏の言である。

1981年「世界が日本を見倣う日」で文藝春秋読者賞、1983年『世界が日本を見倣う日』で第3回石橋湛山賞を受賞。1990年のベルリンの壁崩壊に象徴される冷戦終了後は、世界的規模の国家間戦争は今後経済的に割に合わず、その結果各陣営に囲い込まれた経済的資源が世界で共有されることによりデフレーションが継続するとし、1994年『「超」価格破壊の時代』で日本経済のデフレ到来をいちはやく予測した。2005年前後からはデフレは100年継続し、21世紀はデフレの世紀になると主張している。

私は1982年に『私の書斎活用術』の取材で、五反田駅徒歩5分のマンションのご自宅にうかがいインタビューしたことがある。当時はベストセラーを連発して多忙であったが、1時間くらいならということで応じていただいた。リビングも兼ねた23畳のワンルームの一角の小さな机で原稿を書いていた。この小さな机から多くの著作が生まれているのかと感銘を受けたことを思い出す。本は月に30-40冊、速読で読む。好きなことだけしかやらないという考え方で勉強を続ける。自分の関心のないことは一切切り捨てる。国柄があらわれる軍隊と工場を見る。朝5時からものを書いている。新聞の切り抜きは自分でやり、休みの日曜日はせっせと切り抜きをする。

ゴルバチョフから注目され、ソ連を訪問する機会もあった。「ソ連はつぶれた。私はソ連崩壊の6年前に共産党政権がつぶれるといったが、そう断言できた最大の理由は何十年もモデルチェンジしない生産現場を、自分の目で見て知っていたからである」と語っている。

2019年4月、月刊誌『致知』5月号が届き、長谷川慶太郎のインタビューを読んだ。この雑誌で長谷川は「歩くこと」を強調している。人に会うことと現場をみることを心がけている。現場を押さえるから絶対の自信がある、それが仕事の基本だ。

『長谷川慶太郎の対局を読む2017』で「私は既成政治や利権構造にウンザリしているアメリカ国民がトランプ氏を新大統領に押し上げるのではないかと予想している」と、トランプが大統領になると予想し、見事に的中している。

『長谷川慶太郎の大局を読む』シリーズは2020年版までつづいた。そこではトランプ大統領の誕生、イギリスのEU離脱、ソ連邦の崩壊、そして日本はデフレからは脱却できないとすでに20年前に喝破していた。デフレ論については当時は奇妙な言説だと思っていたが、今となってはその予測通りに推移していることに驚く。

死後の2020年3月発刊の『中国は民主化する』では、中国共産党は崩壊する、中国は7つに分かれて民主化すると書き、それを遺言としている。長谷川慶太郎は好きなこと、得意なことに生涯を通じて、トコトン励んだのだ。さて、中国はどうなるか。

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