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全盲

古びたリュックサックの奥底から
すっかり温いミネラルウォーター
半分と少し残った透明
上下に振って遊んだら

取り残された液体の存在意義
落伍者風情の私と比べてどうか
充足を捨てたミネラルウォーターにも
ささやかな潤沢が残されて

役立つ人でありなさい
出処不明の常識に首が締まる
生きてはいるが透明の
私は取るに足るものかしら

出口も手がかりもないまま
凶悪な迷宮へ放り込まれ
生存を強要されるから
ポーズだけはそつなくこなす

無色を許さない大多数
こいつを正義と呼ぶならば
私は受信も送信もしない
全盲を騙る

Writer of Wide Scence