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ファビオ・ペロンの2015年作、けっこう楽しい

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Fábio Peron / Fábio Peron e a Confraria do Som

ブラジルのバンドリン奏者ファビオ・ペロン。以前、2016年の『Affinidades』について記事にしたことがありますが、その前作、2015年の『Fábio Peron e a Confraria do Som』のことがけっこう好きなんですよね。だれひとり話題にしていないというか、言及していてもイマイチな作品っていう見方ですけれども、なかなかどうして、楽しいアルバムだと感じています。

ショーロなのかジャズなのかよくわからない、ショーロ・バンドリン奏者にしてこの2015年作ではけっこうジャジーなアプローチも聴かせているということと、曲ごとにメンバーを替えて多彩なゲスト・ミュージシャンを招きすぎているというのと、この二つで印象がぼやけてしまうというのが、そういったイマイチ評価の原因じゃないかと思うんですが、ぼくに言わせたらその二点こそこのアルバムの楽しさですね。

特に多彩なゲストをどんどん参加させているというところ。個人的にはこういった、なんというかごちゃごちゃのおもちゃ箱をひっくりかえしたようなアルバムがむかしから大好きで、ずっと前にLP二枚組偏愛主義ということを書きましたが、つまりそういうことなんです。ビートルズの『ワイト・アルバム』、ローリング・ストーンズの『エクサイル・オン・メイン・ストリート』、レッド・ツェッペリン『フィジカル・グラフィティ』、プリンス『サイン・オ・ザ・タイムズ』などなど、どれも雑多なごった煮状態で焦点が定まりませんが、そういうのが好きなんだからしょうがないです。

あっちこっちとひっくり返しながら聴ける、そのたびに違ったおもしろさがあるという、そんな楽しみかたができるなって思うんですね。ファビオ・ペロンのこの2015年作も収録時間一時間越えという長さ、レコードだったら二枚組ですよね。この曲はピアニスト、ここではフルート奏者、こっちではクラリネット、あそこでは7弦ギターリスト、はたまたエレベがフィーチャーされたり、あるいはドラムスが入ってジャズ・コンボみたいになったりと、楽しさ満載で飽きさせません。

ジャジーな演奏スタイルだってけっこう聴けますし、一曲だけミナスふうなヴォーカルが入るMPBっぽいものがあったりして。それでもぼくはやっぱりしっとりとメロディーを歌わせるショーロな演奏が好きですね。フルートとのデュオ中心でやる2曲目、ギターリストとのデュオの6曲目なんかもバンドリンの響き、フレーズの泣きが絶妙です。

クラリネット奏者とのデュオの8曲目(ファビオは7弦ギターを弾く)もいいし、ヴァイオリンとギターとのトリオでユーモラス&コケッティシュにやる10曲目も楽しい。ラスト14曲目は、全 3:34 のうち2分過ぎごろからドラムスをふくむバンドが入って猛然とスウィングしはじめますが、そこまでのバンドリン独奏パートがほんとうに美しくって、聴き惚れます。

(written 2020.10.4)

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