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耳に心地いいラウンジーなカリビアン・ジャズ 〜 トロピカル・ジャズ・トリオ

(2 min read)

Tropical Jazz Trio

ジャズのピアノ・トリオ、といってもこれはピアノ+ベース+、ドラムスじゃなくてパーカッションですが、『トロピカル・ジャズ・トリオ』(2019)は、グアドループ出身の二名とフランス人ベーシストという構成。

トロピカルといっても、そこから連想できそうな明るい陽光や跳ねる裸体と開放感みたいな要素はこのアルバムの音楽にありません。むしろ仄暗い落ち着きが支配していて、ややダーカーというかほのかな翳り。

そこがいかにもラテン性を感じさせるところなんですが、やはり主役たるグアドループ出身のピアニスト、アラン・ジャン・マリーの資質ゆえということなんでしょう。同じく同地出身のパーカッション奏者、ロジェ・ラスパイユのカラフルなプレイもみごと。

演奏されているのはオリジナルにくわえ、多くがジャズ系の名曲。デューク・エリントン、ホレス・シルヴァー、ディジー・ガレスピーなどはカリブ(〜アフリカ)を意識した曲を残しましたからとりあげられて当然なんですが、トニーニョ・オルタ、チャールズ・チャップリン、セルジュ・ゲンズブールや、シャンソンの名曲「さくらんぼの実る頃」だってやっています。

いずれの曲もビギンやグウォカを下敷きとしたクレオール・ジャズ系の料理になっていて、ものによってアフロ・キューバン・スタイルやジャズ・サンバ系のアプローチも聴かれます。

ラウンジ・スタイルなおしゃれなピアノ・ジャズで聴きやすく、そこに若干のファンキーなアフロ・リズムをからめた、ベテラン揃いの手練れトリオならではの余裕や円熟味を感じさせる内容で、ふだん聴きの音楽として耳疲れせず、とてもいいですね。

(written 2022.3.11)

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