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レポート:わたしのまちの魅力開発塾 第3回「古民家を『学びの地域交流拠点』に」

 この記事では「わたしのまちの魅力開発塾~しょうおう志援塾2021~」の第3回「古民家を『学びの地域交流拠点』に」についてまとめたいと思います。8月27日(金)に開催されました。

 「わたしのまちの魅力開発塾」の詳細についてはこちらの記事にまとめています。申し込み方法も記載していますので、この記事をお読みになってご興味のある方はご参加いただければと思います。

 そして、以前の内容はこちらのマガジンにまとめています。

 今回は、外部講師として、岡山県高梁市(たかはしし)で「教育DX×移住したくなる地域づくり研究所」を立ち上げた横山弘毅さんに講師をお願いしました。

1.講師の横山さんのご紹介

 横山さんは、13年勤めた東京のオンライン教育ベンチャー企業を退職し、昨年度に高梁市に移住。古民家をリノベーションし、「学びの地域交流拠点」づくりに挑戦中です。昨年はクラウドファンディングで多くの賛同を集め、古民家リノベーションは地域ニュースに取り上げられるなど話題になっています。

 都心でオンラインの前線で活躍されたからこそ感じる地方の教育の可能性について、お話いただきました。

2.移住「促進」の違和感

 はじめに横山さんの経歴をお聞きしながら、高梁市へ移住された経緯や、まちづくりへの想いをお聞きしました。

 大学卒業後、2007年ごろからのオンライン教育の分野の黎明期から関わり、主に広告やPRを担当したそうです。初めは時代を先取りしすぎて鳴かず飛ばずで、やっと社会に受け入れられ企業も急成長というタイミングで、横山さん曰く「2020年8月、うっかり高梁と出会う( ;∀;)」というご縁があり、急遽移住されたとのことです。

 その高梁市の課題としては、他の自治体と同様、人口減少が続き、大学や高校など教育機関に恵まれていたけれど、その一方で連携があまりできていないという現状があります。

 横山さんの仕事をしてきたオンライン教育の事業は、「田舎の子どもの教育機会の担保」を使命としていたところもあり、神奈川県に住み東京で仕事をしていながらも、「自ら地方に軸足を置いて実践がしたい」という気持ちも以前から抱いたということです。そこでたまたま高梁市とご縁があったということです。

 横山さんは、こんな想いで教育を通じてまちづくりに関わっていると紹介していただきました。

移住促進ではなく、
移住したくなる街づくり。
羨ましがられる街。
自慢したくなる街。

 「移住者=サービス受給者」として「促進」するのはではなく、一緒に地域で汗をかく人に来てほしい。そして、『そもそも、今いる、この地で育った人が「このまちが良い」と感じることができているか』、を大切にしたいという想いがあるということでした。

3.古民家再生リノベーション「学びと地域の交流拠点に」

 横山さんが昨年夏に高梁市とご縁があってから、元駄菓子屋だった古民家のリノベーションに取り組むこととなりました。駄菓子屋に魅力を感じたのは、「人が集まる場所」という良いイメージがあったということです。

 横山さんは、お金もたくさんかかる改修(リノベーション)をするにあたり、クラウドファンディングに取り組みました。クラファンをやった理由としては、「高梁でクラファンという仕組みを使っている人がいることを知らせたい」、ということと「外の人からこの古民家にお金が集まるということから、地元の人に自分たちのまちの魅力に気づいてほしい」という気持ちからということでした。(ちなみに、私が横山さんと知り合ったのも、クラファンを通じてでした)

 この取り組みを通じて、300人を超える応援者が集まるという結果を得て、古民家はの改修が行われました。改修は、壁の張替えなど、自分たちでできることはできるだけ周りの人を巻き込んで一緒にやったということです。こちらが改修後の古民家の紹介ページです。

 子どもの学習スペースとしての使用や地域の交流の場、シェアオフィス、イベント会場としての使用を考えられています。

4.機会が人を成長させる、出会いが機会を生み出す

 横山さんは、ICT教育の支援員としても高梁市の学校で授業を行っています。学校関係者とのつながりを活かし、いろんな取り組みを企画しています。

 地域全体で子どもから大人までいろんな人のチャレンジを応援するための「高梁100Challenge」や高梁ふるさと納税の勉強会、「高梁YouTub部」という情報発信の講座、高校での探究の時間のサポート、教職員向けの講座、ビジコン企画、移住企画、などなど、横山さんが関わっているプロジェクト、お仕事があります。

 高校に関わり始めて、高校生の変化が始まっています。クラファンをしたい、縁日を企画したい、プロジェクトマッピングイベントをやりたい、など、子ども達が自主的に取り組みをやりたいという声が上がり、取り組みにつながっています。横山さんが気を付けていることとしては「答えを与える」のではなく、あくまでコーチング的な関わりを意識しているようです。

 印象的な言葉として「機会が人を成長させる、出会いが機会を生み出す」という言葉を紹介していただきました。はじめは社会の人に緊張していた生徒も、話をするのが慣れていっているようです。大人の役割は、彼らのきっかけづくりや、裏でちょこっと話を通しておくなどで、生徒たちの自主性を重要にすることということでした。

5.地方ならではの教育の価値とは?

 質疑応答時間では、受講生さんから感想を伺いながらいろんな質問をお聞きし、横山さんにお答えいただきました。とても興味深い内容で、30分時間を延長していただきました。Q&A形式でまとめてみます。

Q:地方ならではの教育の価値とは?

A: ICTは教育のベースづくり、都市部と地方部の教育のベースがそろったことで、さらにプラスオンができるのは、地方の方ではないかと考えている。高度経済成長期に人口的にディベロッパーが作った「まち」よりも長年かけてできた自然や歴史のある町には大きな魅力がある

 教育は投資効果が高い、時代によってふり幅が大きい。今はたまたま東京が先端であるが、次の動きがあるのではないかと感じるし、それを作りたい。地方が本格的に取り組めば、これまで最先端が東京だったものが、変わるのではないか

 町全体で教育に注力しているところはまだ少ない。学校単体として、個性的な学校があって人が集まっているというところはあるが、地域ぐるみの活動はまだこれからだと感じている。

Q:身体的経験の大切さについて

A: 自分が体育教師養成過程出身ということもあり、デジタルだけでなく、身体的な経験も大切だと感じている。

 都会の教育の課題として、中高一貫校も増えて中学受験が多い。近年、タワマン高層階の子は、火とか煙とか虫とか、自然と接する経験が少なく、学力的に伸びにくいという話がある。これまでのオンライン教育の経験上、地方の子、身体的経験の豊かな子どもの方が、教育機会を整えることでの学力の伸び代が大きいような感じがする

 デジタルが絶対に良い訳ではなく、ツールとして考え、使い分けが大切。デジタルでなくてもできることであれば「ここからはipad仕舞いましょう」と言って仕舞って授業をすることも良いのではないかと考えている。

Q:地域の人の巻き込み方のポイントは?

A: 1人では地域の取り組みはできない。自分の考えを伝えるためには、発信するスキルがあることが大事。そういう意味では、前職でPRや広報を担当していて、その重要性を感じているし、経験が活きている

 強いリーダー、TOPがいると速く動きがあるが、いなくなると長続きせずに終わってしまう。地域の人が自分から動き、根付いたものとなるように意識をしている

 「~すべき」という「べき論」ではなく、とりあえず、小さくてもやってみる。そして、「楽しそうだなぁ」という感じで「クンクンとにおいを嗅いで集まってくる人」を集めるイメージ

 少数でも盛り上がって楽しそうというところが伝わると人が増えてくる、そんな風に巻き込んでいくようにしている。そして、自分と考えが違う相手でも否定せず、「リスペクトから入る」ことで仲間を増やすことにつながる。

Q:教育では稼げないという意見を聞くことがあるが、どう思うか?

A: 教育が稼げないか、というと一概にそうでもない。ボランティア的にでやるイメージがついているが、値付けを適正にすることが大切。そうでないと運営する側がハッピーに続けることができない。

 教育畑の人はPRに対して後ろめたい想いを感じている人が多い印象。どう伝えるか、どう集めてくるかにも力を入れていくことが大切だと考えている。

6.アーカイブはこちらから

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次回は9月17日(金)19:30~の予定です。お読みいただき、ありがとうございました。

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