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レポート:勝央まちづくりサロン『まちづくりとDX』(自治体DX)(9月15日)


 この記事では9月15日に開催された、勝央まちづくりサロンの活動報告をさせていただきます。岡山県勝央町(しょうおうちょう)で民間、行政、住民を巻き込んで、まちを元気にする取り組みを行っている一般社団法人しょうおう志援協会が主催です。facebookページはこちら↓

 2020年3月から開始し、毎月開催しています。最近は、これまで「SDGs」、「健康」、「姉妹都市」をテーマとして、楽しくお話をしてきました。感染症対策でオンライン開催が多いですが、感染が落ち着いたら、会場での開催もできればと考えています。過去の内容はマガジンに記録しています。

 ちなみに、前回2021年8月は『地域のライター育成』をテーマに開催しました。

1.今回のテーマは「まちづくりとDX」

 今回は、テーマを考えていたところ「9月1日よりデジタル庁スタート」というニュースを思い出しました。そこで、最近良く聞くデジタル化やDXを話題にしたいと考え、企画をすることとなりました。

 DX(ディーエックス)とは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略で、デジタル技術によって、人々の生活をより良いものに変革することを意味しています。

 今回、ゲストとして勝央町役場 総務部 元気なまち推進室の二木悠介(ふたつぎ ゆうすけ)さんをお招きしました。二木さんは津山市出身の岡山県の職員さん。縁あって勝央町役場に派遣中で「自治体DX推進」を担当されています。

 DXに関心がある方はもちろんご参加いただきたいですし、さらに「DXって何?そもそもITやICTやらも良く分からん」という方も、この機会に一緒に学んでいきたいと思い企画しました。

【二木さんの略歴】
平成23年4月、岡山県庁入庁。美作県民局地域政策部総務課に配属される。 令和3年4月から勝央町役場総務部に派遣中(入庁してから5か所目の職場)。 担当業務は、行政改革、地域おこし協力隊、公共交通、自治体DX推進(副担当)など。

2.自治体DXとは?

 サロンの冒頭、二木さんより、自治体でのDXの説明をしていただきました。自治体DX推進計画というものがあるのですね。勝央町でも、取り組みが進んでいくようです。

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 総務省のHPより引用しました。上記の31手続きの電子化を2022年度までに構築することを目標にしています。DXの住民に対するメリットはこんなことがあるようです。

・住民の利便性向上:自治体手続きがオンライン化で可能に
・行政の業務の効率化から、住民へのサービスの向上
・データの統一化、活用によって新たな価値の創出

 さらには、取り残される住民が出ないように「デジタル活用支援員」という制度もあるようですね。

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 勝央町では、まだこれから、ハンコ文化の改正、テレワークの導入など、課題は多いということでしたが、庁内で少しずつ準備を進めていると説明していただきました。

3.民間DXの現在

 すでに民間でもDXが進んでいます。参加者から知っている情報を紹介していただき、情報交換を進めました。民間企業ではテレワークの推進が進んでいることや経済産業省管轄の「DX認定制度」なるものが始まっていることを教えてもらうことができました。

 民間のサービスでは、利便性と個人情報管理のバランスが懸念となっています。すでにGoogleやfacebookでも議論になっていますね。年配の世代はインターネットに慣れていないので不安意識が高いという傾向がある、その反面、若い世代は慣れ過ぎている反面セキュリティーへの意識が希薄な傾向であることが課題では、というそれぞれの世代の課題を反映した意見もありました。

 ただ、「葉っぱビジネス」で有名な徳島県上勝町では、お仕事として年配の方が5年以上も前からスマホを使って商品管理をするなどの実績があります。お年寄りであってもデバイスの使用が可能ということも紹介してもらいました。

4.民間とのDXの違いから自治体DX推進を考える

 会の後半では、勝央町をはじめ自治体でのDXを推進するための課題や解決するためのアイデアを考えていきました。

 課題1つ目として、民間は、収入とサービスのバランスをとって、効率の良いポイントで線をひいて、線の外の人は相手にしないという対応も可能です。でも、行政サービスとして、ラストワンマイル、コミュニティの中までデジタルを普及させようと思うととても大変。これが課題ではないかという話がありました。例えば、インターネット環境が悪い地域やデジタル機器での順応が苦手な場合です。

 課題2つ目は、行政の窓口業務がオンラインで簡略化するということは、民間組織では配置転換や場合によって人員整理も可能ですが、行政では現実的に難しいという課題もあります。DX推進後の組織のあり方、効率化した方がよいものとそうでないものとの分類も考えていく必要もありますね。

 ある参加者からこんな提案がありました。「ハーズバーグの二要因理論」を住民サービスにあてはめると、DX推進の効率化は不満足を減らす要素、そして、DX推進しても人的なサポートが必要なことは満足感を与える要素と考えられます。

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 課題として挙がった、ラストワンマイルに該当するサービスも人的サポートが必要だが、これは当事者にとっては不満足を解消するだけでなく、自分にとって丁寧に対応してくれたという満足度を与える要素に該当するかもしれない。だから、効率化した分は積極的に人的サポートを提供することが大切。

 このようにサービスを分類すると、DX推進後のそれぞれの業務のイメージが作りやすいと感じました。

5.行政のマインドが課題?民間にできることは?

 サロンならではの行政に対しての忌憚のない意見も出ました。 

 自治体DX推進といっても、結局デジタル化したシステム運用するのは人で、ラストワンマイルなど満足度を高めるのは人、人抜きには考えられません。事務的手続きが減る分、人の力、人のスキルが改めて求められるのではないか、という意見もありました。

 行政は、これまでの歴史上、部署間、班ごとで仕事の共有をすることが難しい一面もあります。これではデジタル化が推進してもうまく活用できないかもしれません。行政の仕組みが変わっていく中、デジタルに長けた民間もうまく使って、業務が推進できればという意見が出ました。今後は変化に対応できる行政職員が求められるかもしれません。

 それと、民間としては、これまで10年20年とデジタルを活用して業務の効率化を着々と進めてきた経験があります。そこには、あえてDXと言わなくてもやってきたこともあるかもしれません。「こんなこと手伝える」ということも民間それぞれが発信して、「行政がやること」、「民間がやること」を協力していければという関係ができればと思います。

 各分野、いろんな取り組みに専門性が高くなってくる時代に、行政が入札を考えて民間が応募するという主従関係があるものでなく、行政、民間が一緒に良い方法を考えるという対等な関係が必要だと感じます。ここは、しょうおう志援協会のような行政と民間の間に立った組織が重要になると感じました。

6.若者がキーパーソン!

 地域にDXを推進するために活用できるのは学生ではないか、という意見もありました。参加者の一人から鳥取県用瀬町(もちがせちょう)での取り組みを紹介してもらいました。

「もちがせ週末住人の家」を立ち上げた松浦さんの記事です↓

週末住人の取り組み
もちがせ週末住人は「宿を持つ地域&学生コーディネーター」として、「チャレンジする大学生と暮らす宿」を運営しながら、いろいろな形でチャレンジする仲間を増やしています。

 学生はデジタルスキルは高いが、社会経験が乏しく経験を積む場所を探している。ただし、お金もなく、時間もない。地域と学生をマッチングすることができれば、デジタルの仕組みが地域広がったり、満足度向上のラストワンマイルのサポートもできるのではないか、というアイデアが盛り上がりました。

WWOOF(ウーフ)というお金のやりとりなしで、「食事・宿泊場所」と「力」そして「知識・経験」を交換する仕組みも広がっているようです。

 高校や大学でも「地域連携」という窓口部署ができてきている学校が多いようです。学生や保護者にとっては、学校の地域での活動も重要なポイントとして見られるようになってきています。時代の流れを感じますし、私達の会も時代に合わせた活動に取り組んでいきたいと感じます。

 今回、DXをテーマにして話をしながらも、人の力、人のできることに焦点が当たったのが印象的でした。「便利になって何をやるのか」が問われているような気がします。

お読みいただきありがとうございました。


【この記事について】
筆者はLocally Driven Labs(LDL)に参加してまちづくりについて全国の仲間と学んでいます。メンバーはオンラインの活用などの地域の実践を記事にし、マガジンにまとめて情報共有しています。


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