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社会教育の再設計シーズン2 第4回「市民がまちで学び、まちをつくるには?~シブヤ大学の実践より~」に参加しました。

 この記事では、社会教育の再設計シーズン2 第4回「市民がまちで学び、まちをつくるには?~シブヤ大学の実践より~」に参加した感想をまとめます。こちらは、東京大学社会教育学研究室の主催事業で、オンラインで受講できます。2021年1月8日の19:30~21:30に開催されました。

 こちら、LDLでお世話になっている岡崎さんに紹介していただき、参加しました。地域の社会教育の場を、補助金に頼らず運営され、受講料は無料という仕組み、全国的に広がっているところに関心をいだきました。

 私自身、地域で研修事業を担当しているので、運営方法など参考になることが多いのではと感じ、参加しました。

1.シブヤ大学の概要

 代表理事の左京 泰明さんより、2006年シブヤ大学の設立からの説明がありました。当時はNPOといっても、その概念が浸透していなかったので大変だったようですが、立ち上げメンバーに広報、資金調達の専門家を入れて、スタートアップ企業のようにスタートしたのがうまくいったきっかけではないかと言われていました。

  特定の場所を設けず、「街全体がキャンパス」とし、講師役もいろんな人が担当するという柔軟な仕組み。そして、ボランティアが主体となって運営し、ボランティアも学びの一過程と位置付けていることがユニークな点です。ポイントは「企画力」。企業との連携により、学ぶ側、伝える側、双方にとって魅力的な場となるように努めたそうです。伝えたい側と受講したい側とがうまく結びつくように考え、受講者に満足してもらえるようにするプロセスが強みだということを知りました。

 地域でイベントも開催することで、地域の活性化につながっていきました。次第に、「まちづくり」の文脈でも注目されるようになったようです。

 さらに、同様の取り組みは全国に広がっており、京都、名古屋、札幌などにこの仕組みが広がっています。韓国からも熱心に視察が来て、実施されているということでした。

2.最近の流れ:「学び」という社会の中の居場所

 左京さんは立ち上げからこの大学を運営してきましたが、昨年に後進に運営役を引き継ぎ、代表理事としてサポート役に回りました。これまで若者世代として大学を運営してきた自分の年齢が若者世代と離れてきたのがきっかけだったと言います。引き継ぎにあたっては自由に運営してほしいという想いと、これまでの歴史との間で苦労をしたそうです。

 また、コロナ禍で昨年からはWEB開催となり、WEBならではのコミュニケーションの難しさ、他のWEBスクールが増えたことでの自らの位置づけに試行錯誤しているということでした。

 最近は、カルチャー的な内容から、ダイバーシティなど、社会課題について学ぶ内容の割合が増えているように感じたそうです。趣味などのスクールは一般の人が開催しやすくなりましたが、社会課題についてはNPOという公共の場だから開催しやすいのかもしれません。

 質疑応答の場面でお話されていましたが、最近の若者はSNSでコミュニケーションが簡単に取れる反面、意見が分かれるのはデリケートな内容を話しにくくなったという話がありました。意見を言うことは場合によって非難にさらされることがあります。また身近過ぎる人とデリケートなことを話すには、意見が違うことで仲が悪くなるかもしれません。このシブヤ大学のように、意見を受け入れてもらえる第三者が集まる場だから、想いを表出することができるのかもしれないと言われていました。

 また、こうした学びの場は、特に渋谷という都市部では、特に社会の居場所になるという話もありました。孤独な人に「孤独な人は来ても良いですよ」という場所があっても、それはこの場所の定義がすでに「支える側」と「支えられる側」と位置づけられてしまいます。それは、人によっては身構えたり、立場の固定化ができてしまいます。みんなが同じ「学ぶ」という主体的な姿勢で参加していること、場合によって「教え合う」ということが、参加者の力を高め、元気にするのではないか、という話がありました。

 私は、このことは孤独という課題に対する「社会的処方」の考え方にも通ずるものがあると感じました。私も、社会人をスタートしたばかりのころは、「自分が早く一人前になりたい」という思いもあり、よく研修会に参加しました。しかし、これは自分の心のさみしさを埋めたいという気持ちもあったのかな、と思い返しました。不安、淋しいという気持ちと、成長したいとか、自分にない意見を知りたいという気持ちは近い場所にあるのかもしれないと感じます。

3.人が学び、育つ場所

 印象に残ったお話が、左京さんが運営で見ていて、「参加者からボランティアとなり、自分の企画を考え、開催するまでの過程」が一番の学びになっているということでした。ある受講生は活動がきっかけで自らのお店を開いたという方もいらっしゃいます。企画者になると、普段会えない、話せない人でも、アポイントを取るために連絡する理由ができます。こうして、その人の想いが人をつなぎ、成長につながるということでした。この話は、私も地域で研修事業を担当して、「企画者が一番得るものがある」という部分で共感するところがあります。

 ただ、あまりこのようなロールモデルを押し付けないようにしているとも言われました。受講スタンスはそれぞれ、参加者の多様性を受け入れるという姿勢が、長く続いている秘訣のように感じました。

4.WEB開催の難しさ

 今後も、しばらくWEB上での開催が続くことと思います。WEBだとアクセスしやすくなったという反面、参加者の想いの大小の幅が大きくなり、マナーがいまひとつという方も増えたそうです。かくいう私も、今回のように東京のお話をWEBで聞くチャンスが得られるようになりましたが、最近は様々な興味あるWEBセミナーで予定が埋まりがちとなり、これまで現地で受けていたものと比べ、心構えがゆるく参加できてしまうということを感じ、自戒しました。ただ、これは自体は良い悪いではなく、WEBの特徴なのかもしれません。どう主催者も受講者側もどう使っていくかですかね。

 また、居場所として参加していた方は、直接会うことが減ることで、その役割を果たしにくいのかもしれません。リアルな研修だと、隣の人と雑談をしたり、こそっと言いにくいことも言えます。しかも、その言葉はその場で記録されることがありません。でも、オンライン開催だと雑談は難しく、SNS上だと記録が残ってしまいます。こうした点も、何か新しい居場所としての在り方が求められているのかもしれません。

 企業からのスポンサーも少し厳しい状況とも言われていました。ただそうした中でも企業の協賛集めや企業スポンサー集めのあり方などは気になるところです。「補助金に頼らず、参加費が無料で参加できる」という運営方針は、自分達の考えで事業を進めることができるということでもあります。一方、補助金だとどうしてもその補助した側の意向に沿う形となります。「住民が主体となる学びの場」のあり方。私も学んでいきたいと感じました。

 以上、うろ覚えの部分もありますが、まとめてみました。今回、シリーズの研修のこの回のみの参加でしたが、社会教育、生涯教育が「社会人の学び直し」という役割だけでなく、「社会的処方」というテーマと結びついたことで、関心が高まりました。でも、私の興味のある研修や活動が多すぎて、取捨選択に悩む今日このごろという感じでございます…(^^;)私自身も”やりたい"こと探し中でしょうかね。興味のある方はこちらの記事もシブヤ大学のことを知れる良い記事ですのでどうぞ。

お読みいただき、ありがとうございました!

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