見出し画像

SPY×FAMILY で理解する【研究テーマの整理法】

自分の研究テーマをしっかり整理しておくことは、研究を進めるうえでも、また論文を書いていくうえでも大切です。

しかし、「研究テーマ」という用語そのものが曖昧なので、テーマをしっかり整理していくためには、まずは「研究テーマ」の意味自体を明確に理解しておく必要があります

下の別記事では、研究テーマの正体とは【挑む世界観×作戦】のことであり、【世界観】は「理想・現状・課題・問題」がひと繋がりになった構造、【作戦】は「目標・手段」を定める方針であるアプローチのことだよ、という解説をしました。

そして、このことは研究を「魔王に挑む冒険RPG」だと捉えるとわかりやすいよ、という話もしました。


この記事では、別の題材で「研究テーマ」を整理する方法を解説したいと思います。

今回の題材は【SPY×FAMILY】です。面白いですね。うちの家族も全員でコミックスとアニメを観ています。

この作品に登場するロイド、アーニャ、ヨルの3名がそれぞれの研究を進めている、という想定で、研究テーマを整理してみます。整理してみることで、この3名がどんな世界観の中でどんな作戦を立てて必死に生きようとしているのかがはっきり見えてきます。

概ね、コミックス第2巻までの情報に基づいて推測して作成した例の紹介です。作者さんの意図とは異なるものになっている恐れもありますし、これ以後の話の展開によっては変わる部分もあるはずです。また、紹介する以外の整理結果ももちろんあり得ます。あくまで研究テーマの整理法を理解する題材としてご覧ください。

ロイド・フォージャーの【世界観×作戦】

まずはロイド・フォージャーの例です。作成したものはこちらです。

ロイド・フォージャーの【世界観×作戦】

一つずつ確認していきます。研究テーマの各要素が満たすべき条件についても触れていますから、しっかり確認してみてください。

【理想】こどもたちが泣かない世界をつくる
これは第1巻の序盤のロイド自身の心の声で語られた内容ですね。『簡単には叶わない&行動の原動力になっている&共感を得られる』という【理想】の満たすべき条件を満たしています。

【現状】西国は東国と長く対立し、仮初の平和も崩れつつある
これも第1巻の序盤で語られる内容です。『理想に反した状況である&納得してもらえる』という【現状】の満たすべき条件を満たしています。

【課題】東西平和を脅かす東国の要人の不穏な動きを探る
これは第1巻の14ページでロイドに対してC暗号で伝えられるミッションそのものですね。『現状と理想の間にある&期限内の達成が見込める』という【課題】の条件を満たしています。

【問題】東国の要人はひきこもりで用心深く、なかなか表舞台に顔を出さない
これも同じ14ページでロイドに伝えられる情報です。『課題の達成を妨げている&簡単には解消できない』という【問題】の条件を満たしています。

【作戦(アプローチ)】偽装家族をつくって要人の息子が通う学校に通わせてチャンスを得る
これも14ページでロイドに伝達される作戦方針です。『問題を踏まえている&課題達成の見込みがある&実施が現実的である』という良いアプローチの条件を満たしています。

アーニャ・フォージャーの【世界観×作戦】

続いてアーニャの例です。

アーニャ・フォージャーの【世界観×作戦】

【理想】ちちとははとずっとなかよくくらしたい
これは第1巻の終盤のイーデン校の面接でアーニャが答えた内容からの推測です。この気持ちが本心かどうかはなかなか確認しづらいですが、純粋な気持ちで発言したような表現で描かれていることや、他のいろいろな行動もこの気持ちが原動力になって出ていると考えると納得できますので、これが理想であると捉えても良さそうです。

【現状】ちちのみっしょんしっぱいしたらかぞくなくなる
これは第1巻の終盤でアーニャの心の声として語られた内容です。こんな不安定な状況からは脱したい、という気持ちがあるようです。

【課題】とくたいせいになる それか じなんのいえによばれる
これは第二巻のMission:8でアーニャがロイドのこころを読んで把握したミッションです。プランA とBですね。

【問題】すてらをあつめるのむずかしい すぐとにとでる じなんとなかわるい
これは第二巻の中盤で、アーニャが学校生活を送る中で見出した、『こうだから課題達成は難しい』という課題達成の阻害要因です。

【作戦】みんなのこころのこえをきいて ちちをたすけながらしっかりかんがえてうごく
これも第二巻中盤のさまざまな場面で描かれる、アーニャが選んだアプローチです。問題をどうにか解消しようと、色々な友達の声が聴こえてつらくとも、ロイドの願い(心の声)をなんとか叶えようと奮闘している様子が描かれています。

ヨル・フォージャーの【世界観×作戦】

最後にヨルの例です。

ヨル・フォージャーの【世界観×作戦】

【理想】ユーリにしあわせになってもらう
ヨルの理想についてはまだしっかり描かれていない部分が多いので悩ましいですが、ユーリの昇進を妨げないようにしていたり(第1巻中盤)、「私はただ 弟を安心させたくて…」という発言が出たり(第1巻中盤)、ユーリの昔話を嬉しそうにしていたり(第2巻中盤)と、ユーリのことを気にかけて行動を選んでいる場面が多いので、これを理想だとみなしました。

【現状】いつまでも独身なのでユーリに心配をかけている
これは第1巻の中盤の職場との会話の場面と、ユーリとの電話の場面で描かれる内容です。ユーリに心配をかけ続けていると、【理想】が叶わないので、なんとかこの現状を抜け出さないといけない、という設定になっています。

【課題】ロイドとの結婚生活をユーリに祝福してもらう
これは第2巻終盤から始まるミッションです。ロイドと結婚した形になったことはユーリにばれてしまったので、【理想】を叶えるために急遽達成が必要になったミッションです。

【問題】殺しの仕事をしていて結婚は偽装
これは第二巻までの全体で描かれる内容です。殺しの仕事をしていることがユーリだけでなく、ロイドにもばれると、ロイドとの結婚生活も破綻し、ユーリにも大迷惑がかかることを自覚しており、課題達成を大きく難しくする要因となっています。結婚が偽装であることも、ユーリにばれると祝福してもらえる見込みは無くなりますから、これも問題です。

【作戦】かりそめであったとしても今の家族を精一杯守る
そんな難しい問題に直面しているヨルが選択したアプローチは、『たとえかりそめでも、今の家族であるロイドとアーニャを精一杯守る』というものであるようです。これは、第2巻の序盤から中盤にかけて描かれています。力技で危なっかしい作戦ですが、ヨルさんらしい、不器用ながら自分の得意を活かしたアプローチになっています。

おわりに

SPY×FAMILYの3人の主人公を題材として、研究テーマの構成要素がそれぞれどのような条件を満たすものであるかと、それらがどのように繋がりあっているのかを説明しました。

上記のようにすっきりと整理できたのは、SPY×FAMILYの作品の中で、主人公3名の【世界観×作戦】がしっかりと設定されているからです。設定がめちゃくちゃであれば、整理することは叶いません。皆さんも、自分の研究テーマ、すなわち【世界観×作戦】をしっかり設定してから研究に挑み、論文を書いていきましょう。

この記事で紹介した、SPY×FAMILYで理解する【研究テーマの整理法】は、Twitterに掲載したものがもとになっています。Twitterの方もフォローしていただけると嬉しいです。

この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?