論文タイトルの決め方 -5ステップで決める方法の実例付き解説-
タイトルは、論文中で最も短いながらも最も重要な文言です。論文の内容を把握していない他の研究者達にとって、まずは40字程度の論文タイトルこそがその論文の全てであり、読むべきか否かを最初に判断する材料だからです。
タイトルを決めるのは、中々悩ましいパズルのような工程です。限られた文字数に収まるように、書籍や映画の題名のように目を惹きつつも、内容を正確に反映する言葉をうまく選んで組み合わせないといけないからです。
ここでは、卒論・修論・博論だけでなく、学会誌論文も含めた論文タイトルを決める際の基本の手順を紹介します。
※この記事は、著者のブログ「駆け出し研究者のための研究技術入門」の記事のリライト版です。
この記事で紹介する方法
この記事で紹介するのは、次の5つのステップでタイトルを決める方法です。
①研究の【肝】をはっきりさせる
タイトルを決めるにあたって、まずは他の研究との違いを生む【肝】や【売り】が何かを整理していきましょう。
あなたの研究を特別なものにしているのは、扱った対象ですか?用いた手法ですか?得られた結果ですか?少なくとも1つはあるはずですので、まずはそれをはっきりさせましょう。もちろん、「この対象に対してこの手法を用いたこと」のように、組み合わせに特徴がある場合もありえます。
読者がタイトルから知りたいのは、この【肝】です。他の論文に比べて何が特別なのかをタイトルに記載して知らせない限り、読者に特別読む気を起こさせることはできません。「この研究の肝は×××です」とはっきり言えるように、行った研究の独自性や新規性を整理することから始めましょう。指導者や共著者、また先輩や後輩に素直に尋ねてみてもよいでしょう。
まだこの段階では文字数を気にしなくても構いません。言葉も口語調であったり、多少曖昧でも大丈夫ですので、とにかく肝を言葉で表現してみましょう。
②到達度を表現する語尾をつける
上記の①で【肝】が決まったら、その肝について「何を済ませたところなのか」が分かる到達度表現を決めましょう。
到達度表現というのは、たとえば、【実現/解明/達成/実証/証明/評価/改善/作成/構築/考案/解析/調査/分類/予備的実験/試作】などです。この到達度表現が、タイトルの語尾の候補です。
到達度表現が決まったら、【肝】と組み合わせて文を作ってみましょう。ここでも文字数や言葉遣いをそこまで気にする必要はありません。
③意義や価値を追記する
上記➁までで、【肝+到達度の語尾】まで定まったら、次にタイトルに盛り込むべきは「そこまでの達成を頑張ったのは何のためなのか」という意義や価値が分かるようにするための説明です。
もし②までで決めた【肝+達成度の語尾】の説明だけで、想定する読者に対して十分それらが伝わるのであれば追記は不要です。しかし、そうでなければ、「~の実現のための」「~の達成に向けた」「~の改善に資する」「~が可能な」のような、「そこまで到達すれば確かにやる意義があるね」と思ってもらえる内容を追記しましょう。ここでも文字数や言葉遣いをさほど気にする必要はありません。
④推敲する
上記③までは、情報量を増やすことをやってきました。しかし、タイトルには文字数制限が設けられていることがほとんどですので、ここからは情報量をできるだけ減らさずに、また可能なら情報量を増やしつつ文字数を少なくするための推敲を実施していきます。
推敲の方法は下の記事を参考にしてください。内容を具体化したり、意味を限定したり、短く切って読みやすくする作業を行います。
⑤最終チェック
タイトルだけで意味が分かるか
まずはタイトルだけが読まれたときでも意味が正しく伝わるかどうかを確認しましょう。意味の分からない用語が入っているタイトルの論文はなかなか読まれないでしょう。論文の中で定義した独自の略語は用いないようにしましょう。
自明情報は省かれているか
論文を提出する分野において、書かなくても当然だと判断される内容は省くことが可能です。また、研究一般でも当然だと判断される内容も省けます。たとえば、「新たな」「発見」「興味深い」「に関する研究」などは論文となる時点で当然なので省けます。
質問形式でなく、答えを書いているか
質問形式のタイトルは人目を惹くものの、情報はあえて隠しているので少なくなります。ダメという訳ではありませんが、まずはその質問の答えを明確に書くことを検討し、それとの比較で質問形式としてもよいかを判断するのがよいでしょう。
過度な期待を持たせないか
よい論文タイトルとは、そのタイトルを見た時に想像した論文の内容と、実際に論文を読んだときに読み取った内容が一致するものです。過度な期待を持たせるタイトルでも、過少評価を受けるタイトルでも不適切です。
主観的な表現が入っていないか
読み手によって程度解釈の分かれる主観的な表現はタイトルに含めるべきではありません。「特別の」「非常に」「究極の」「素晴らしい」「上手な」などがそうです。
まとめ
論文のタイトルを決めるための基本的な方法を紹介しました。もちろん、ここで紹介した決め方に沿わない良いタイトルもありますが、まずはこの決め方をマスターすれば、タイトル決めの苦労は随分減ると思います。是非お試しください。
参考
・一流の科学者が書く英語論文(東京電機大学出版)
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