育つのは、俺だった。「怖い顔」
娘(三歳半)がこんなことを言った。
「お仕事しないで」
私は在宅で働いており、デスクでキーボードを叩いていた。
娘は遊んでほしくなったのだろうなと思った。
かわいいやつだ。
娘は私の部屋着の裾を引っ張って続けた。
「お仕事しているとつまんないでしょ」
なんとかわいらしいことを言うのだ。
「そうだよねえ。つまらないよね。ごめんね」
だが、私がそう言うと娘は不思議そうな顔をした。
「パパが、だよ」
私が笑っていないのを見て、助けてやろうと思ったらしい。
もちろん笑いながら仕事をするなんて、よほど良くできた人にしかできないのだが、パパの顔は「こわい顔だったよ」と。
私は仕事の手を止めて、少しだけ娘と遊んだ。怖い顔だぞー、と言って娘を追いかけた。娘はきゃははと笑って逃げた。
数分後デスクに座った私はもう怖い顔はしていなかった。
育つのは、俺だった。
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