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ホノルルで過ごした6日間 マラソン撮影現場の裏側

 はじめまして。新卒で株式会社フォトクリエイトのプロダクトマネジメントチームに配属になりました、「わっきー」 です。
フォトクリエイトは全国で契約している写真館やプロカメラマンがイベント等で撮影した写真のオンライン販売サービスを運営している会社です。

この記事は フォトクリエイト Advent Calendar 2019 の 20日目 の記事です。

突然の宣告

 それはまだセミの鳴き声も盛んな夏のある日のことでした。フォトクリエイトでは月に一回、上長との1on1面談があります。いつものように1on1で話を終え、そろそろお開きかという頃、上長の @KaoriNamiki からさりげなく告げられました。

「あー、そうそう、わっきー12月にホノルルマラソンの現場行ってもらうからよろしく」

 あまりにも軽いノリで言われたので、こちらも軽いノリで「あ、はい、承知しました。」と答えてしまいました。
僕はハワイには行ったことが無かったこともあり、半ば観光気分でした。ホノルルの現場に行ったことがある先輩社員の皆さんが口をそろえて「(仕事じゃなくて)プライベートで行きたい」という理由がこの時はまだ分かっていなかったのです。

ホノルルマラソンとは

今では25000人規模の大会となっていますが、初年の1973年にはたった200人未満の参加者から始まったホノルルマラソン。
特徴としては制限時間が無いということです。ですので参加ハードルが低く、日本人の参加者も多数います。
 フォトクリエイトではこの大会の公式写真を撮影、販売しています。
販売サイトは”[オールスポーツコミュニティ]”です。オールスポーツではマラソンやトレイル、ロードバイクなどのスポーツ系の大会の写真撮影・販売を行っています。日本の主要なマラソン大会のほとんどを撮影していて、ホノルルマラソンで撮影した写真もオールスポーツで販売しています。

 ホノルル到着当日、時差ボケを引きづりつつも意気揚々とハワイの土を踏みしめます。一日目は何か作業をする必要があるわけではないので現場視察と称した観光を行います。ただ、観光と言っても眠気を紛らわすための観光なのでもはや労働。このタイミングで寝てしまうと永遠に時差ボケに苦しめられることになります。ここで起きておけるかどうかが勝負になるのです。

我々の戦いはエキスポから始まっている

 エキスポはいわゆる前夜祭のようなもので、参加者がナンバーカード、"ゼッケン”を受け取るイベントです。協賛企業などが会場に自社商品やサービスを展示・販売しています。スポーツウェア、シューズ、サンダル、リュック、補給食、スキンケア用品、マッサージなど、様々なブースが出ていました。

 オールスポーツもエキスポに出展し、走る前の姿の撮影と、大会中の写真を撮影・販売していることを告知しています。

 ブースは二か所設け、片方ではフラガールとの撮影も行えるようにしていました。
 フラガールとの撮影ができるとのことでなかなかの盛況ぶり。
二か所で撮影を行うと抽選で扇子かクリアファイルがもらえるというキャンペーンを行っていたので、多くの方が両方のブースを訪れてくださいました。

 ホノルルマラソンのエキスポは三日間開催されます。カメラマンはこの間、ひたすら撮り続けます。僕たちスタッフはブース前を通る人たちにひたすら声をかけてブースへ誘導します。次々と様々な人が様々なことを聞いてこられます。英語、日本語、中国語、韓国語、フランス語、よくわからない言語、どこで撮ってるのか、何のブースなのか、トイレはどこか、ゼッケン受け取りはどこか、、、

 エキスポだけでもかなり体力のいる仕事でした。休憩中以外は基本立ちっぱなしになるうえに、普段使わない英語での対応も必要になります。参加人数が多いので次から次へと人の波が押し寄せます。ようやく先輩方がプライベートで行きたいとおっしゃっていた意味を理解しました。

 中には「いつも写真買ってるよ!ありがとう!」と声かけてくださる方もいらっしゃいました。そのたびに、「よし、いい仕事してるぞ自分」と言い聞かせつつ、三日間はあっという間に終わりました。

エキスポを終えた関カメラマンにインタビュー

 ここでカメラマン目線の話も聞いてみようと思いました。エキスポから撮影に入り、当日も撮影現場に入ってくれる関さんに話を聞いてみました。

Q. エキスポを終えてどうでしたか?当日への意気込み等お聞かせください。
やはり声かけは難しいですね。しかも撮影時の構図固定のため、いかに短時間で被写体の楽しそうな姿を引き出せるかという点で苦労しました。他のカメラマンさんはその辺上手い方がいて、見習って練習する必要があると実感しました。明日の大会当日の撮影では熱い空気感も含めて皆さんの輝く瞬間を写真のなかに収めれればと思います。特にゴール地点での撮影なので、一番感動できる重要なポイントを撮るのだという認識で臨みます。

マラソン大会当日

 朝2:30。部屋に鳴り響く目覚ましの音。ほとんど眠れていませんが、それでも仕事があります。エキスポの疲れが残る重たい身体を引きずってなんとか集合場所へ。
僕が入るポイントであるカハラの担当カメラマンとスタッフと合流して現場に向かいます。
 時刻は4:30。撮影場所の確認とカメラの設定を調整し、試し撮りを行います。そして5:00。スタート地点では花火があがりマラソンがスタートします。僕のいるポイントはそこから離れていたので、マラソンが行われているとは思えないほどの静けさでした。

 ここから約30名のカメラマンが10時間ほど撮影し続けます。
5時半ごろ。ほんの10分前まで風の音しか聞こえなかったカハラでもぽつり、ぽつりとランナーが通過していくようになります。
そして数人の集団が断続的に来るようになり、次第にやってくる集団の数は増え続けます。最後にはコースラインからあふれんばかりの群衆がうねりながら押し寄せてきます。
 日の出前のこの時間はピントも合わせづらく、カメラマンとしても苦しい時間帯です。
カメラマンはシャッターボタンを押すのに人差し指と中指、薬指を交互に使います。人差し指だけで押し続けると指をつるからです。

 太陽が昇り始めると今度は暑さとの闘いになります。
カハラは、太陽を遮るものが何もなくジリジリと焼かれた僕はまるで干からびたミミズのような状態になっていました。
こんな中を走るランナーの皆さんはもっと大変だろうなと思いつつ声かけを続けます。
 だんだんと歩くランナーが目立ち始めます。カハラは38-39km地点、つまりマラソンの終盤です。ここまでくる頃には誰しもが消耗しきっています。いわゆる”ゾンビウォーク”集団が大量に来るポイントです。

「カメラが前にありますよ!ポーズきめてください!」

 僕の声はむなしくランナーの上を通り過ぎていきます。
撮影ポイントは坂になってて、見えにくいのですがそこを超えるとエイドステーションがあり、水とジュースが飲めます。
ランナーに走ってもらえれば、ランナーはエイドに近づき、僕らとしては良い写真が撮れる、まさにwin-winの状態が作れるわけです。
そこで声のかけ方を変えてみることにしました。

「カメラ前にありますよ!ホノルル走ったって自慢できる写真が残せますよ!エイドもカメラのすぐ向こうにあります!」

 すると多くの方がなけなしの体力を振り絞って笑顔で少し走ってくださるようになりました。(そしてそのままエイドへ消えて行かれました笑)

 14時、ランナーの数も減り清掃車が通り始めました。撤収の指示が出たので荷物をまとめて帰ろうとしていました。すると一人の親子が僕に声をかけてきました。

「すいません、コースを車で戻ることはできますか?」

 なんでもご主人の足の調子が悪いらしく、かなり後ろの方にいるとのこと。ただ、彼はなんとしてもゴールしたく、奥様に杖を持ってきてほしいと頼んでいたそうです。

 しかし、コースは交通規制がかけられており、僕たちスタッフですら来るときに苦労したほどです。何か打つ手はないかと周りの人に聞いて回ります。すると救護室の医者からありがたい一言が。

「警察車両がいなくなったからたぶんもう車で通れるぞ!」

 親子にそのことを伝えるとお礼を言いながら去っていきました。無事杖を届けれると良いのですが。。。

 そんなこんなでホテルへ戻り、メモリーを納品係に届けてその日の業務は終了です。
 夜はホテルでお疲れ様会です。今年は一日中晴天で、皆さん太陽に焼かれて真っ黒になっていました。しばらく熱いシャワーは浴びれなさそうです。

フィニッシャーマンデー

 僕たちの仕事は大会の後も続きます。
完走賞の受け渡しや表彰が行われる”フィニッシャーマンデー”と呼ばれるイベントがあります。
フォトクリエイトは最後の告知と記念撮影を行います。毎年のことだそうですが、完走賞を持った人たちで長蛇の列になります。

 関カメラマンも午前中はスタッフとして参加してくれていました。
昨日の撮影について伺ってみることにしました。

Q.当日の撮影はどうでしたか?
やはりゴール地点での撮影は大変でした。まず、当然なのですがゴールしてくる人たちが疲れ切った顔をしているので、そこで「笑ってー」って言ってもなかなか笑ってくれないんですよね。エキスポの時も思いましたが"どうやって声をかけていくか"はこれからの自分の課題だなぁと再認識しました。またこの現場に入らせてもらえる機会があるかもしれないので、それまでに今回見つけた課題を克服できるように練習を重ねようと思います。

 そんなこんなでフィニッシャーマンデーもあと少しで終わりという頃、どこかで見たことのある顔が、、、
僕は思わず声をあげました。

「あぁ!ゴールされてたんですね!」

 撤収前に僕に杖を届けたいと声をかけてきた親子とそのご主人でした。
ご主人はニコニコしながらフィニッシャーTシャツ(ゴールした人に配られるTシャツ)を着ていました。そんな彼の足は義足でした。

 彼の「なんとしてもゴールする」という想いで走る姿もきっと写真に収められていることでしょう。
改めてフォトクリのサービスが好きになった瞬間でした。

全イベントを終えた夜

 これでホノルルマラソンのイベントの全行事が終了しました。
最後の夜はフォトクリ行きつけの店で打ち上げが行われます。
来年以降もホノルルマラソンの撮影はフォトクリエイトが行います。記念すべき50回記念大会も間近です。
その時にまた、今度はランナーとしてハワイを訪れてみるのもいいかもしれません。

 また、フォトクリエイトで誰かの輝く瞬間をカタチに残したいという方、少しでもご興味をお持ちいただけたようでしたら、人事部門の担当者 twitter: @tetsunosuke へお知らせください。

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