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「日本人の協調性」は本当か?

日本人の美徳や長所として「高い協調性」が挙げられます。「利他精神の表れだ。自分よりも他人を優先する人たちだ。素晴らしい」と。

同時に、これをネガティブに「集団主義」が根底にあると解説する人もいます。

どうでしょう? 本当は日本人は集団主義の人たちというよりは、「個人プレーの人たち」のような気がします。


客室乗務員に賞賛の声

確かに、空気を読むことがうまい日本人は、他人の要求を察知して、ひとつの目標に対して、さっと手分けして動きます。運動会や学芸会などイベントで、段取りよく、チームワークで動くように励まされますよね。
 
そうやって「あうんの呼吸」を学びます。言葉で表現しなくても、ちょっとした合図で統制が取れるのです。

日本のエアーラインの客室乗務員のソツのない動きは典型例でしょう。欧米系の航空会社が取り入れようとするのですが、「できない」のだそうです。
 
自然災害の被災地で、炊き出しの分担や行列を作るときに、なすべきことがリハーサルもないのに整然と行われます。これも同じです。海外から賞賛されることが多い。

集団主義と関係が?

だけど日本人のいわゆる協調性の高さは、協調性を尊ぶということよりは、「我慢」や「同調圧力」から来ているのではありませんか。
 
他人の目を意識しながら我慢して自分を抑え、「人に迷惑をかけちゃいけないし」と協調性が形成されるような気がします。
 
日本独特の「世間体」が関与しているように思います。自分がどう見られているかという他人の見方や評価が軸になっているのです。世間においては、他人の評価が優先されます。
 
キャンパスで学生をみていると4-5人の「いつものメンバー」で動く集団が目につきます。「いつメン」は小さな世間です。たいてい、つまらなさそうにしている4人目、5人目の学生がいます。
 
世間の中では「他人は他人、私は私を」貫くことが難しいーー。実は私もこれを会社生活や大学で経験しています。

本当は「個人プレー」したい

ところでスポーツやアートの世界では、個人の技量が大きくものをいいます。

実は日本人は個人の力で活躍する人が多い。体操やスケート、ゴルフではもちろん、団体種目の野球やバスケットでも日本人選手が個人技で世界トップ級の活躍をしています。

バレエやオーケストラの指揮者、ピアニスト、イラストレーター、マンガなどアートの世界でも同じです。
 
だけど、団体スポーツとなると、協調性を得意とするはずの日本人のチームが世界の主役になるかと言ったら、そうでもなさそうです。野球以外では「日本代表チーム」はなかなか首位に入れません。もちろん、背の高さ、身体のボリュームなどフィジカル面の差も大きいかもしれません。
 
本当は、日本は「団体戦の国」でも「集団主義の国」でもないのかもしれまません。

カイシャという団体戦

世界の中で日本経済の衰退ぶりが指摘されます。団体戦を得意とし、日本経済を引っ張ってきた「カイシャ」の力が衰えたのかもしれません。

かつてカイシャは、英語辞書にもとりあげられた「カロウシ(過労死)」を生み出したほど、文字通り「自己犠牲」「滅私奉公」の世界でした。

日本経済の低迷ぶりは、もしかして、カイシャのパフォーマンスの衰退かもしれません。その背景に、「会社人間」や「社畜」であることに「ノー」を突きつける人が増えてきたのか。

コンプライアンスやガバナンスの考え方が普及したきたので、そうしたムチャなカイシャのあり方も少しは影を潜めてきているとも言えそうです。また、内部告発ゆえにカイシャがまともになるケースが増えています。

本当は「個人プレー」をしたいのに、上下関係のきついところで、無理やり滅私奉公をさせられる「昭和時代」への拒否反応があるのかもしれません。

もしもそうなら、個人を大事にする人が増えているわけで、良いことですね。

「和をもって尊しとなす」の正体

海外の各都市で、現地の日本人駐在員に出会うと、たいてい生き生きしています。日本社会のしがらみから外れて、自由を感じるのではないでしょう。

個人主義的な傾向が強いと思われている米国人は、実はチームワークが上手です。個人が尊重され、団体の中でも役割がきちんと与えられるので、総じてうまく行くのでしょう。

対して、日本の会社では、同調圧力が強く、一人ひとりが、我慢しながら「空気」を作る努力をします。で、社畜や会社人間をたくさん作ってきました。これをZ世代が容認するのは難しいでしょう。

ところで、はるか昔。聖徳太子はなぜ「和を以て貴しとなす」と協調性を重視するよう説いたのでしょうか。

実は当時の日本人は、「個人プレーの人」が多く、協調性が弱かったのかもしれません。だから、太子がこのように号令をかける必要性があったのかもしれませんね。

いえ、そもそもこの国の民は、集団主義が嫌いだったのでは? 
(了)

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