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日本の大学、日本のオーケストラ

東京にはロンドンやニューヨークよりも多くのプロのオーケストラがあります。こんなにオーケストラの多い都市は世界でも珍しいでしょう。

東京に住んでいて、気軽にライブ演奏に触れられるのはクラシックファンの喜びです。毎晩どこかでオーケストラ以外でも、ピアノやヴァイオリンのリサイタルや室内楽の生の演奏が聴けるのです。


世界のトップ・オケもやって来る

さらに音楽ファンの喜びは、日本の各都市にウィーンフィルやボストン交響楽団など世界屈指のオーケストラがかなりの頻度でやってくることです。

外来の名門オーケストラ公演では、日本の楽団の5倍以上の値段のチケットがすぐに完売します。

海外から来るオケのメンバーも一所懸命演奏します。東京でも大阪でも、耳の肥えた日本の聴衆を相手に楽団は最高の演奏を披露しようとするのだそうです。

相乗効果があり、コンサート会場はコンサート会場は熱気と興奮に包まれ、拍手が5分以上続くは珍しくありません。

コンサートでは、モーツァルトやベートーヴェン、ブラームス、マーラーの交響曲などドイツものは定番であることが多い。ファンならたいてい知っている曲が取り上げられます。

日本のオーケストラも同じような曲を演奏するので、生の演奏であってもなじみ曲が多いものです。

日本のオケと世界トップオケが競う

だから「東京のオケで『ブラームスの1番』を聴いた」その翌週、同じホールでベルリンからやって来るオケが同じ曲を演奏する、ということは何ら珍しくありません。

冷静に考えると、日本の楽団と世界の楽団とが同じ土俵(ステージ)で集客を争っているのです。

だけど日本の客は、日本のオケとヨーロッパや北米から来たオケとでは、その身構え方が違うような気がするのです。例えば、日本の楽団のコンサートでは、カジュアルな服装の客が多く、拍手は長く続きません。

まるで違うスタンダードを国内と国外のオケに当てはめているのでしょうか。

もしもお客が「日本の楽団はそんなもの」と思っていたら、残念です。日本のファンは日本の楽団が世界の一流になることを期待していないのでしょうか。

世界を相手にする気概

しかし楽団側も、世界を相手にする気概が弱いように見えます。綺麗な音をだす演奏技術や、アンサンブルの点で、弱いかなと感じることがあります。

「一体どうなってるの?」と音楽プロデューサーの友人に尋ねたことがあります。

「クラシックの演奏会は最初から赤字だ。助成金がなければやっていけない。あの安いチケットじゃ、団員の給料もまともに出ないよ。公演数は多く、団員はくたくた。実はね、非正規の奏者が結構多いんだ。余裕がない。必死で演奏しているよ。素晴らしいと思う」

日本の楽団が世界の舞台で活躍することは難しそうです。確かに、日本の楽団の音楽CDは、国外はおろか国内でも売れません。

大学と大きく異なる

なんだか、世界と競争させられるようにみえる日本の大学を思い起こします。

世界に向けてインパクトのある日本発の論文の本数や被引用回数が減っているとか、「世界大学ランキング」が芳かんばしくないというニュースをよく耳にします。世界という舞台では日本の大学は冴えないのでしょうか。

すぐに分かるところでは、日本のオーケストラが「日本人ばっかりでやっている。外国人奏者もチラホラいるが、国際性を言うためのアリバイのよう」という点が、そうです。日本の大学も似ているように見えます。

もちろん外国人教員の多い日本の大学もあります。専任の教員を雇うとなれば、日本語が壁になっているのかもしれません。日本の大学では、ほとんどの場合、教授会をはじめ、各種会議は日本語で行われるのですから、学問内容がすぐれていても、日本語ができないと務まらないのでしょう。

ところで、外国人と日本人の比率をみていて、一点、日本のオーケストラが大学と大きく違っていることに気づきました。

それは、日本のオーケストラは女性プレーヤー(奏者)がとても多いことです。大学の女性教員の比率でいうと、日本は世界でも最低レベルです。
(了)

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