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コロナ禍でのアメリカ生活㉓「危機の際の企業のメッセージは金太郎飴状態」

一昨日のMembers主催のセミナーは、「Purpose-driven companies」をキーワードに、コロナ禍におけるマーケティングの話をしたが、参加者が150名ぐらいまで膨れ上がり、半分ぐらいは「ひさみファン」でしょうと担当者に言われた。何はともあれ、多くの方に視聴していただいたのは、非常に有難い。どうもありがとうございました。。普段日本語を喋る機会が殆どなく、尚且つお喋りな私が話し始めると、予想通り1時間では収まり切れず、セミナー後のフィードバックも質疑応答のためにもっと時間を増やして欲しいという声をいただいた。今後のオンライン或いはオフラインも、セミナーは1時間半か2時間ぐらいはとって、ゆったりと話せるようにしたい。

危機の際に、なぜ企業はGenericなマーケティングメッセージしか発しないのか?

セミナーの中で、広告代理店の方が「企業メッセージとして、マーケティングギミックではなく、Purpose(信念・目的)が重要なことは分かるが、自分達、広告代理店は何をすべきなのか?」という質問があった。答えの全てをここに書くことは避けるが、国を挙げての危機的な状況下(例えば9.11のテロ攻撃、戦争勃発、マス銃撃事件、自然災害など)に陥ると、企業メッセージは、一様に金太郎飴を切ったように、非常に無難で当たり障りのないGenericなメッセージになる。以下は、それを皮肉ったヴィデオで、冒頭は悲しみを感じさせるピアノの音楽が流れ出して、センチメンタルな言葉をちりばめて制作されており、ロゴを変えたら、どの企業の広告かさっぱりわからないほど、Genericな(金太郎飴的な)のコーマシャルとなっている。
“uncertain times”
“we‘re here for you”
“people” and “families”
“comfort and safety of your home”
"we're all in this together!"

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When a company or brand releases a Coronavirus Response ad, they might tell you that we're living in "uncertain times", but that "we're here for you". They may say their top priority is "people" and "families" by bringing their services to the "comfort and safety of your home". And don't forget: "we're all in this together!"

誰もが思いつく、当たり障りのない、センチメンタルなメッセージではなく、企業のPurposeを行動で可視化させてほしい

徐々にビジネス再開が始まっているとはいえ、失業&休業、感染への恐れ、制限のある不自由な生活、さらに、George Floyd事件による全米に広がった抗議運動と暴動という、様々な不安の中で、人々は生活をしている。そんな状況下で、各社がオンエアするコマーシャルは、ロゴを変えたら見分けがつかないぐらいに全てが同じ。あたかもロイヤリティフリーの無償のヴィデオ素材で同じ広告代理店が作ったかのようである。現時点で、企業として、他に言いようがないにしても、あまりにも意味のないメッセージが自宅にいる私達の目に触れる。消費者は、こんなセンチメンタルなメッセージに広告費を投下するならば、実際に今直ぐ最も困っている人達をサポートする行動を示して欲しい、言うだけでなく、企業のPurposeを行動で示して、可視化させてほしいと思う。

Kotlerは2013年に「5Ps(Product, Price, Place, Promotion and Purpose)」を提唱している

Philip Kotlerが、すでに2013年に5番目のP(Purpose)を加えて「5Ps(Product, Price, Place, Promotion and Purpose)」を提唱しているように、今マーケティングで重要視すべきはPurposeである。彼は “Purpose should be a form of core business(信念&目的はコアのビジネスを形作るものでなければならない)”として、Purposeと同様に、企業の資産として重要なものとして「corporate culture」を挙げている。

なぜ5番目のP(Purpose)が必要なのか? Kotlerは調査した結果、社員が働きがいのあると考える企業のマーケティングコストは、同業他社よりもはるかに低く、顧客満足度と顧客維持率ははるかに高いという結果を得ている。企業が顧客、社員、サプライヤーに関心を示していれば、誰もが幸せになり、したがって、ビジネスの全体的な収益力が向上する、と彼は言う。

エージェンシーはいやでも応でも戦略的なマーケティング領域に踏み込まなければならない

冒頭の広告代理店の方の質問への答えは、エージェンシーは、クライアントに対して、戦術的な領域からより戦略的なマーケティング領域に踏み込む必要があるというコト。Purposeに関しては、「すでに企業が持っているPurposeが、その企業のコアのビジネスを形成するものとなっているか? 企業はそれを単なる理念あるいはお題目のように取り扱っていないか? CEOから前線の社員までがそれを共感し実施したいと思っているか?」など、プロフェッショナルで尚且つ消費者目線を持つ、ニュートラルな立場でPurposeを研磨できる立場にある。

消費者心理を考えると、現在のように混沌とした社会状況下では、戦術的なマーケティング費用は無駄であり、一般論にしか思えない企業メッセージの露出は、意味がない。Sustainableになり得ないマーケティング活動は避けたほうがいい。

消費者は、Social issueに対する企業の行動を期待し、見つめている

米国では、George Floyd事件以降、全米に広がる抗議運動に対して、企業がどう考えているか、どう行動するかを、じっと見つめている。5/31-6/1の直近の調査結果は、人々は、企業が問題に足を踏み入れるのを怖がって沈黙を守るのではなく、問題解決への声明と行動を期待している。企業に期待する行動のトップ4は、以下である。

• 略奪により被害を受けたスモールビジネスのための基金設立:49ポイント
• コミュニティのクリーンアップのための寄付:42ポイント
• 抗議者と警官をサポートするステートメント:21ポイント
•社会の正義や不平等問題への寄付:20ポイント



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行動のみが可視化可能なので、今、重要なことは「有言実行」することだと思う。


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