見出し画像

石垣島、あらら?な旅日記 3


竹富島、静寂のなか

わたしは信じていました。
わたしが竹富島に着いたら晴れる、って。
夫はホテルから傘まで借りたのだけど、そういう降りそうな天気だったのだけど、見事!わたしが竹富島に着くと空は晴れたのでした。
夫は言いました。
「ひさこねこの神通力おそるべし」
竹富島は石垣島からフェリーで15分ほどのところにある、小さな島で、町並みがとてもきれいなのです。
わたしたちは観光コースになっている、水牛車に乗ることにしました。
水牛さんはせっかちなのか、すごく速く歩き、前の水牛車を煽る勢い。水牛を御するお姉さんも困っていました。
三線を弾いて歌わなきゃならないのに、満足にできずじまい。
水牛車散歩が終わると、わたしたちは、水牛さんと記念撮影。

そして。
それからが、わたしの期待していた竹富島散策なのです。
でも、夫は散歩というものが好きではない人で。
ほかの観光客の人はレンタサイクルで、島を回っていました。
わたしは自転車にうまく乗れないので、歩くほうがよほど好きです。
緑の濃いなかの白い道をしっかりと歩いていきます。


植物は声を出しません。驚くほど、静かにそこにあります。
わたしは、あ、と思いました。
しん、としている。
なにも聴こえない。
車の走る音も、電気機械が動く音も、人の声も、風のざわめきさえ、聴こえない。
沈黙をこの手にしている、と思いました。
なんということだろう。いつでも、自然は黙っていたわけじゃないのに、ここでは、密やかな生がちゃんと生きている。
わたしも黙っている。
そう、心の奥から鎮まろう。
鎮まって、このなにも聴こえないことを受け取ろう。

でも、わたしの静けさは、夫の声で消えてしまいました。
これがわたしの現実です。
いま、感じていたものは、そうっと心のわたしだけの空間に仕舞いましょう。
わたしは夫と話しながら歩き、ビーチへ出ました。
そこでスカートの裾をまくりあげて、水のなかへ入りました。
水はやわらかくふれてきて、わたしは心から笑えてきました。
楽しいね、海。
海は海でいるだけでいいね。

やさしい、やさしい竹富島でした。

さて。現実は。

そして、わたしたちには、現実問題が!
やっと、見つけたカフェでクリームソーダを飲んでいた時。

「ねえ、もうお金が1万円切ってるんだけど・・・」
わたしたちは今回の軍資金は6万円と決めてあり、それがもうわずかとなっていたのでした。
「ええっ、そうなの」
夫も眉間にしわが寄ります。
「じゃあ、おれが1万円足すよ」
「そう?ありがとう」
 わたしはソフトクリームをすくったけれど、ふと鞄をさぐり、
「あ、わたし、障害者手帳がない!」
と言いました。
「えええ」
わたしは精神障害2級なので、手帳を持っているのです。手帳があると、バスやフェリーの乗車券が半額になります。身分証明書も兼ねた大切なものです。
その手帳が鞄のどこを探してもないのです。
「フェリーに乗るまでは持っていたよね」
フェリーの乗車券を買うときに、提示したので、そこまではあったのです。
「じゃ、フェリーのなかか・・・」
夫はつぶやき、もう、それからは観光どころではありません。
夫と、船の乗船所で訊いてみました。そうしたら、石垣島の乗船所でしかわからないと言われました。
わたしは、しょんぼりしながら、帰りのフェリーに乗りました。まだ竹富島にいたかったんだけどな。
石垣島のほうの案内の人に訊いても、手帳はありませんでした。
しかし。
「あ、あった!」
わたしは鞄のポケットのなかに入れていたのです。それを発見できたのでした。よかった~!
ほんと、よかったね、と夫は食べ物を買いにいきます。実はお腹が空いて仕方がなかったのです。食べ物が食べられるなら、竹富島でも石垣島でもどちらでもいい感じでした。
この港、離島ターミナルはお土産ものとか、お弁当をたくさん売っていました。
夫はお弁当、わたしはサンドイッチを食べました。
まだ、13時頃だったと思うけど、夫がもう帰りたいというので、ホテルへ帰ることにしました。夫は疲れやすいのです。持病もありますし。バスは丁度いい時刻のものがなく、タクシーでホテルに帰りました。はい、高額なタクシー代。こういうふうにお金が飛んで行くのでした。

貝がらひろい

わたしは海岸へ行くたびに、貝がらを拾いました。
変わった貝はそうはありませんが、白い砂浜に光る貝がらはどれも美しく見えます。
この日、わたしはめずらしい貝がらがあると思い、拾いました。巻貝でした。巻貝を拾うことはあるけれど、そう多くはありません。
そして、少し貝がらを拾って、ホテルの部屋に戻りました。
もってきた貝がらを水洗いしようと、テーブルの上にティッシュをしいて、さらさらと出すと、白い貝がらのなか、オレンジ色がかった巻貝が、ごそごそと動きだすではありませんか。
「やどかりさんだ」
わたしは叫びました。夫も見にきました。その貝はやどかりさんが背負ったおうちだったのです。
「わあ、ごめんなさい」
わたしは言い、夫も浜へ返してあげたら、と言うのでそうっと持ちあげて砂浜へ返しました。うまく自分のテリトリーへ帰れたでしょうか。
やどかりさんのほうでも、びっくりした顔をしていたように見えました。
巻貝を拾うときは、要注意、とわたしは胸の手帳に書きました。

この夕の食事は、わたしは金ちゃんヌードル、夫は一平ちゃんでした。
沖縄のおいしいものをまったく食べずに、翌日は帰途につきます。

                         4へつづく
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?