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仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド を見てきました(ネタバレ感想)

2024/2/2(金)公開の映画『Vシネクスト 仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』を見てきたので、そのネタバレ感想をやります。まだ見てない方はブラウザバックで。











以下、ネタバレ注意






普段そこまで映画を頻繁に見る人間ではないので、何点と評価するみたいなことはやりませんが、全体的な気持ちとしては懐かしく、見てよかったな、と思えるものでした。ただ、細かいところでちょくちょく思うところはありました。
前提として、私は昭和ライダーに関するバックグラウンドは一切なく、平成ライダーで初めて見たのが仮面ライダー555。その後『剣』、『響鬼』、『カブト』、『電王』、『キバ』、『ディケイド』、『W』、『OOO』と見て、『フォーゼ』の序盤でリタイア。その後しばらく仮面ライダーシリーズから離れていましたが、『ビルド』の後半あたりから戻ってきて、『ジオウ』、『ゼロワン』を見通しました。『セイバー』でまた離れましたが、『ギーツ』を見通して今に至ります(『ガッチャード』は未履修)。要は、いわゆる平成1期にはそこそこ詳しく、平成2期と令和ライダーもふんわりと分かるくらいの人間だということをご理解ください。

○全体的に
実は仮面ライダーシリーズのVシネを見るのは初めてだったのですが、とにかく上映館数が少ない。あと劇場も小さい……。まあまあ本編映画ではないしこんなもんだよな……とは思いましたが、最初から見に行くと決めていたならもうちょっと下調べすべきでしたね。
ちなみに555のVシネをやるという話はだいぶ前から把握していて、絶対見に行くぞと決めていました。何せ子供の頃に初めて見た仮面ライダーが555ですので、はっきり大人になってから見たジオウやゼロワン、ギーツとは違って思い入れが深い。東映の公式Youtubeで公開されるたびに見てしまう、不思議な魅力がある作品です。内容は「こんなの大人でも分かんねえだろ」と言いたくなるような重たいドラマだし、オルフェノクが人を襲うシーンがやたら生々しいしで、「子供向け……? ほんまか……?」と思っているのですが、本作はその頃子供だった人も大人になって見に来てるよね、という前提があるのか、かなり容赦がなかったです。

○全年齢向けじゃないじゃん
まず驚いたのは、初手でめちゃくちゃ生々しい司法解剖のシーンが出てきたこと。私は「血を見るのがダメ」という理由で医療ドラマを一切見ない、他の人が見ていても目を伏せてしまうくらい苦手なのですが、しっかりドバドバ流血してて「えぇ……」となりました(笑)。しかも臓器がやたらリアルだし。これが肝臓だの心臓だのとか言ってるし。ここで「あれ? もしかしてこれ全年齢じゃない?」と思っていたのですが、終わってから調べてみたらR-12でした。調べてから行けよという感じですが、どうやら仮面ライダーのVシネでは初のレーティング作品だそうで。ここで早くも容赦のなさを痛感させられました。といっても、アマゾンズよりは幾分マシだと思いますが。

○北崎「望」
事前にキャストの方々の対談動画(YouTubeで公開されています)を見ていたので、北崎の下の名前が明かされることは知っていました。個人的にはテレビシリーズ本編のあの活躍から、今回のスマートブレイン社長として振る舞う姿まで、「のぞむ」という名前はピッタリかつ今風だなと感じて好きでした。琢磨くんなんかまさか琢磨が苗字で名前は逸郎とは思わんし……。
実はファイズの敵役の中では北崎さんがかなり好きで、幼さ全開、気分屋全開で接してくるかと思ったら、急にドス声で迫ってくるあのギャップが唯一無二なんですよね。オルフェノク態のモチーフも唯一の幻想種「ドラゴン」、人間態でも触れたものを灰にするとかいう厨二全開な設定が盛り込まれているうえ、しばらくデルタの変身者として暴れ回っていたのが本編でした。今回の映画で大人として出てきたこともあって、落ち着いた言動・行動ばかりでしたが、ところどころで当時の狂気が見え隠れしていたのがよかったです。特に北崎すげえなあと思ったのは二つ、後半の凄まじいアクションシーンと、初登場の仮面ライダーミューズに変身する時でした。普通ならギアを装着してスマホを挿し込むところ、肩に引っ掛けた状態でスマホを挿し込んで変身操作を完了させてから、ギアを腰に巻くあの動きが、いかにも北崎がやりそうでよかったです。本編で怖い顔から急に柔らかい笑顔になって「……変身」って言っていたのを思い出しました。

○違和感
ところが今回の映画、必ずしも手放しで褒められる内容ではなかったと思います。すでにTwitterなんかを見ているとちらほらそういった意見も見かけますが、本編から作中時間で幾年か経って、キャラクター性に変化が生じているといっても、微妙に納得できないというか。本編から地続きで来たならこうはならないんじゃないか、という展開をちらほら見ました。
まずは胡桃玲菜(くるみれな)が仮面ライダーミューズに変身するシーン。変身をやたら恥ずかしがるのに対して敵オルフェノクが人間の影をわざわざ出して「まさか……脱ぐのか……?」と言ってのけたのはちょっと「いやいや……」と思いました。もう一回脱ぐのかシーンが出てくるのですが、こんなこと本編でしてきてたかなあと後から思いましたね。ただ、玲菜がそういうキャラ付けなのであれば、まあこういうこともあるだろうと納得はできます。その後玲菜がとんでもねえヤバい奴なのが明らかになりますけど……。

○真理?
おそらくここが最大のネタバレになると思うのですが、真理がついにオルフェノクとして覚醒してしまいました。してしまったというより、玲菜に捕まり、スマートブレインの手によって因子を活性化させられて(=人間としては○されて)、覚醒「させられた」と言う方が正しいと思いますが。
本編では流星塾生として一度○され、オルフェノクの記号を埋め込まれたものの、体が適応せずオルフェノクとしては覚醒しなかったというオチでしたが、無理やり覚醒させられてしまったことになります。言ってしまえば、20年前の本編の時点で真理が何らかの要因で死亡後、オルフェノクとして覚醒する可能性はあったわけで、今回こうなったのもまああり得なくはない話かな、と思っていました。
ただ、問題はここから。覚醒させられた後、手術を施してきた医者たちを灰にして脱走したと思われるシーンが出てきました。つまりオルフェノクになった真理はちゃっかり人間を襲っているわけで、ここがこれまでの真理からすると信じられなかった。映画を見ている時には「またこんなシーン描いて、なんだかんだ間一髪のところでたっくんが割り込んで助けてくれたんじゃないの?」と思ってたんですが、その後普通にオルフェノクとして暴れているあたり、本当に真理本人が手にかけたっぽいんですよね。まあ、巧が真理を奪還するために襲ったにしても、巧が(オルフェノクとして)人間を手にかけていることになるので、それはそれで問題なんですが。
今回初めてオルフェノクになってしまった真理の描写として、○人衝動が抑えられなくなるという側面が強く描かれていました。「あれ、これホラー映画だっけ?」と思うくらい、○される前にコロセ……みたいに脳内に響く描写があり、オルフェノク側に寄った視点になっているなと感じました。テレビシリーズの方は当然、ヒーローであり人間として生きようとする巧の視点で描かれるので、オルフェノクは人間を襲う悪い連中という前提で、「人間を襲いたくて仕方ねえ」「仲間増やしてHappy」と思っていそうな表現になっていました。そう考えると、今回の映画は真理の葛藤を描くという点で挑戦だったのかもしれません。
と、擁護しようと思ってたらですよ。終盤は案外あっさりオルフェノクであることを受け入れて、自分からオルフェノクに変身して巧と一緒に戦って。ラストでは「あんたたちもオルフェノクになりなよ」とまで言っていました。いや、あんたオルフェノクになるのめちゃくちゃ嫌がってたやん。見た時のことを思い出せば思い出すほど、お前本当に真理か?と疑いたくなるキャラでした。
もちろん、その手前で(後述しますが)巧と愛を確かめ合う(隠語)シーンがありましたし、そこで自らがもう人間でなくなったことを受け入れたと言えばそうなのかもしれませんが。そして覚醒させられ脱走した際に人間を襲った件も、オルフェノクになったばかりで混乱していて、その時のことを覚えていないのでは、と理由をつけることは一応できます。できますが、それにしても人間をあっさり○せる存在になってしまった(かつ実際に○している)ことに対する、恐怖や悲しみといった感情があまりにもなさすぎるなと気になりました。いくら真理が、「オルフェノク絶対滅ぼすマンに変貌したスマートブレインの魔の手からオルフェノクを守る」スタンスのみんなに囲まれていたとはいえ、認識が甘いのでは?と感じざるを得ませんでした。

○これホントにR-12で済んでます?
流血シーンとか内臓お出ししてくるとか、子どもが見たら泣くだろという描写は、Vシネだし大人対象なのだろうと思えば、目をつぶれます。苦手な私も目を逸らせばいいだけです。ただ、ついに巧と真理が愛を確かめ合うシーンまで出てきてしまいました。推定ですが、ここが一番ファイズファンの間で物議を醸したところだと思います。確かに直接的な描写はなかったので、R-15規制はやりすぎな気もしますが、それにしてもオルフェノクの触手が絡み合う描写があるせいで余計にいやらしい。
普段からR-18小説を書いていることもあって、個人的には全年齢作品と非全年齢作品の境界にかなり厳格な方であるという自覚があるのですが、このレベルの描写を仮面ライダー作品でやってよかったのかな、という疑念が残ります。もちろん、描写そのものがR-15にはあたらないというのは再度述べたうえで、これは「仮面ライダーの外伝作品としていかがなものか」という話です。このあたりはどうやらパンフレットでも巧役の半田さんや、真理役の芳賀さんも触れていたようで、映画を見終わった後何も買わず出てきてしまったのを後悔しました。今度どっかでパンフレット買お。
仮面ライダーシリーズというのはご存じの通り、あくまで子ども向けの作品です。そこに大人でもうなるようなドラマを混ぜている、というのがコンセプトだと私は解釈しています。令和ライダーあたりはもしかするとより子どもの方へ対象層を寄せているかもしれませんが、やはり子どもがメインターゲットであるという点は変わりありません。一方、Vシネは大人向け、本編の「その後」も楽しみたい大人に向けての作品だという認識です。ですが、あくまでそれはコンセプトであって、「仮面ライダー」の看板を外していない以上、子どものことも考えてあげないといけないんじゃないの、というのが私の意見です。新しい挑戦をするというのは創作者として大いに歓迎されることでしょうし、むしろ挑戦をしていかなければ時代に適応はできないのですが、守るべきラインというのも同時に存在するのではないでしょうか。

○やっぱアンドロイドだったかー
さて、批判はこの辺にしておいて、またただの仮面ライダーファンの感想に戻りますね。
今回の映画が公開されるにあたって提示された大きな謎の一つが、「死んだはずの草加と北崎がなぜ出てくるのか?」というもの。本編では、草加は終盤で首をへし折られて死んで灰になり、北崎は半覚醒のオルフェノクの王にビームで撃たれボリボリと食べられていました。どう考えても生きてねえだろという死に方だったわけですが、どういうわけか登場。その真相は簡単で、いずれも新生スマートブレインの駒として動く、政府に作られたアンドロイドでした。明かされてみれば「まあそうだよな」という話で、特に北崎の方は昔の狂気性が残ってるなら、ここでオルフェノクになって相手をいたぶるだろうというシーンがいくつかあったのですが、あくまで人間態で圧倒していました。そのあたりでそれとなく察したわけですが、アンドロイドと分かってからの北崎は逆に凄まじいアクションシーンの連続でかっちょええなあ……と一人感動していました。対する草加もすぐにアンドロイドだと明かされたわけですが、首筋に堂々と浮かび上がるスマートブレインの社章、そして手のひらから突き出る銃。ラストはおでこにバーン!とスマートブレインの社章が浮かんだりなんかして、なんだかネタキャラ感の否めない演出でしたね(笑)。
ここで注目したいのは、アンドロイドということにして安易に(?)彼らを復活させた脚本の是非ではありません。プロの脚本、しかも天下の仮面ライダーシリーズでも、「死んだはずの人間が生きてる!→実はアンドロイドでした」という展開が使われた点です。AI全盛のこの時代、この手の設定は割と誰でも思いつきそうなものですが、ちゃんと使ってくるところに感心しました。そもそも世の中に100%完全オリジナルの作品は存在せず、どんな作品にも必ず、どこかに何かしらの作品の要素が取り込まれています。中にはあまりに使い古されたネタや手法なんかもあるわけですが、プロですらちゃんと、堂々とこういうことをしてくるんだなと思ったのです。いわんや素人をや。物書きと名乗っているだけでそれほどお金を稼いでいない我々が、これはオリジナルか否か、とくよくよ悩む必要はないというわけです。もちろん明確なパクリや著作権侵害はご法度ですが、ちょっと参考にしてスパイス程度に使うとか、あの作品のこの展開からこういうネタを思いついた、みたいなのを素人はバンバンやって、いわゆるクリエイター力をどんどんつけるべきだと痛感しました。前からよく言われていることではありますが、改めて自分の目で見て学べましたね。

○まとめ
さて、長々と語ってきましたが、ざっくり映画そのものに対する感想を述べるならこうです。
「良いところもあるが、悪いところもあった」
そんなのどんな作品もそうじゃん、というのはごもっともですが、「仮面ライダーシリーズの外伝として」、新しい挑戦だと感心したところもあれば、逆に「仮面ライダーシリーズの外伝として」、守るべきラインをちょっと超えちゃってるんじゃないのと思ったところもありました。もちろん一ファンの意見ですし、平成ライダーも全部履修してるわけじゃないしで、説得力があるかどうかというところなのですが。今回の映画を見て、こういうふうに思った人間もいる、ということを理解いただければ幸いです。
ちなみにファイズ20周年記念作品だし、ワンチャンISSA主題歌じゃね?と心のどこかで思っていましたが、見事に回収されましたね。挿入歌も本編の主題歌「Justiφ's」だったのは熱い。これだけでファイズファンとしては満足だったかもしれません。
あとはパンフレットをどこかで調達してくればめでたしめでたし。私は小説でも映画でも、同じものを二回以上見るという習性がないので、もう一回この映画を見るかと問われれば微妙ですが、パンフレットを買いにどこかのタイミングで劇場には行こうと思います。
それでは、またいずれかの記事でお会いいたしましょう。


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