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“これが最善” がん治療の選び方 その5

「がん治療の選び方」、特に進行がんにおいて、抗がん剤治療を勧められた時にどうすればいいのか?について数回にわけて考えてきました。
“その1”では、抗がん剤治療を受けないという選択肢についての考察
“その2”では、抗がん剤治療のメリットだけではなく、デメリットにも目を向けましょう
"その3”では、治療の目的(ゴール)は、ワクワクで設定する
"その4”では、選択しない方がよい選択肢というものがありますよ
ということについてお話ししてきました。
5回目の今回は、「治療を選択したら、それで終わりじゃないですよ」というお話しです。
最後までお読みいただけたら嬉しいのですが、“予後”や“死”に関する話題が含まれていますので無理なさらずにお願いいたします。
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▼後悔しない選択をするために
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A治療は、副作用は少ないが、効果が少し弱い[効果:40、副作用:20]
B治療は、効果は高いが、副作用も強め[効果:60、副作用:40]

のような2つの治療選択肢を提示され、どちらの治療を受ければ良いのか迷っている場合を考えてきていました。
おそらく大抵の人は、その1からその4まででお話ししてきたことはほとんど考えずに、「少しでも効果的な治療を受けたい」という気持ちでB治療を選択する傾向がある印象です。
そして、B治療を選択して後悔してしまう人がそれなりの割合でおります。
これまでお話しした1から4のことを考えずに、『効果』という誘惑に誘われ、副作用という『罠』にかかってしまったがゆえの後悔でしたので、そのような後悔なく、良い選択をしてほしいという考えから、長い時間をかけてお話ししてきました。
つまり、これまでのお話しを踏まえた上で、自分は大丈夫そうだということであれば、B治療を選択して良いと思います。
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▼B治療を選択した後
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ようやく治療を選択することができました。
「あとは担当医に任せてやってもらうだけだ」と考えていると、失敗してしまうかもしれません。
よくある3つの失敗例を挙げます。
①やはり副作用が大変だ
②残念ながら効果がでなかった
③担当医とあわないから、変更してほしい

それぞれもう少し詳しくみていきながら対処方法を考えましょう。
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▼①やはり副作用が大変だ
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ハッキリ言って『あるある』です。
副作用に関しては担当医からも薬剤師さんからも説明はあったが、とはいえ「こんなにひどいとは思わなかった」というものです。
ひどい副作用(いわゆるグレード3や4)の発現率は30%程度です。
同じ抗がん剤治療を受けた10人のうち3人はグレード3-4の副作用を経験するということです。
グレード3とは、入院が必要になるほどの副作用です。
グレード4は、命に関わる可能性があるくらいの副作用です。
受けた側にとっては想定外にひどい副作用だったのですが、担当医からすれば30%程度はある状況ですので、十分『想定内』です。
ですので「こんなにひどいとは思わなかった。もう辞めたい。」と担当医を責めても、
「では、抗がん剤治療は難しそうなので、緩和ケアに紹介しますね」といわれてしまうのがオチかもしれません。
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▼「副作用が大変だ」への対処方法 その1:準備
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一番の原因は『想定外』であったことです。
「これこれ、こういう副作用があります」とは聞いていたけど、実際に体験してみたらとてもつらかったわけです。
とはいえ、事前に体験することはできません。
では、どうすればよいのでしょうか?
答えは『準備』をしておくことです。
物としての準備は、
・副作用が出た時のクスリをもらっておく
・嘔吐に備えて、ビニール袋を身につけておく
・下痢に備えて、おむつを用意する
・食欲がない時でも摂取できる、栄養補助食品を買っておく
・脱毛に備えて、ウィッグ
などなど、副作用の数だけ準備物があります。
実際には、その副作用が出てから準備すれば間に合うものも多いので、必要になったらすぐに用意できるように、どこでどのように入手すれば良いのかくらいは把握しておきましょう。
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▼物以外の準備(こちらの方が重要)
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物を準備する以上に大切なことが2つあります。
『知識』と『覚悟』です。
そもそも自分(もしくは家族)が使用している抗がん剤の名前が言えますでしょうか?
その抗がん剤で出やすい副作用は何?
その副作用は投与後何日目に出やすくて、どのくらい続く?
その副作用に対する対処方法は?
「そんなの知らない」「聞いたかもしれないけど覚えていない」という人がほとんどです。
「自分は患者であり、がんになったのもはじめて、抗がん剤もはじめてなのだから、知っているはずがない」「そういうのは医者の仕事でしょ」というわけです。
本当にそうでしょうか?
僕の大好きなドラマ『踊る大捜査線』の名言に「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」というものがあります。
抗がん剤の副作用も「診察室で起きているんじゃない!家で起きてるんだ!」です。
家で起きることに対して、自分も知らない、家族も知らないでは、対処できるものもできなくなって当然といわざるを得ません。
更に追い打ちをかけますが、多くの『想定外』な副作用が、きちんと対処できていればグレード1-2でおさまる可能性があるのです。
グレード1の時点で対処をはじめる。それでも良くならずグレード2になってしまったら病院に連絡して対処方法を聞いたり、無理せず抗がん剤の内服をいったん休止することで、『想定内』の副作用に抑えることが可能になる場合が多いということです。
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▼そして『覚悟』(一番大切)
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『覚悟』とは、危険なこと、不利なこと、困難なことを予想して、それを受けとめる心構えをすること(コトバンクより引用)だそうです。
私自身、何かに『覚悟』ができているか?と聞かれたら「できていない」と答えてしまいそうではありますが、ここでは一度私のことは棚に上げて書きます。
抗がん剤の副作用に対して文句をいう人は、やはり『覚悟』が足りないのだと思います。
これは決して「副作用をガマンしろ」といっているわけではありません。
私が言っているのは、「これは自分自身の問題だ」というように副作用を受け止める『覚悟』が足りないということです。
抗がん剤治療は、その人の命の時間を延長することを目的とした治療です。
誰の命でもなく自分の命の問題を、担当医などの他者のせいにして、「自分は被害者だ」、「責任はあちらにあるからどうにかするのもあちらだ」ということを言っていて、それであなたはいいのですか?という話です。
「そんなこと言われても、医療のことなんて何も知らないんだから、自分で何とかせよといわれてもできるわけないじゃん」
「全部自分で対応しろ」ということでもありませんが、最初からあきらめて他人任せにしてしまうのではなく、自分で何ができるのかを考え、自分でできることは自分でしましょうということです。
前項の『知識』もしかり。あんなのはインターネットにクスリの名前を入れて検索すればすぐわかります。一度に覚えられなくても、印刷して、事あるごとに眺めていれば自然と頭に入ってくるでしょう。
「インターネットなんて使えません」とかいう人もまだおりますが、インターネットを使うのと自分の命、どっちが大切なの?って話です。
ネットが自分で使えなければ誰か使える人にやってもらったり、図書館に行って調べたり、『知識』を得ようと思えばいくらでも手法はあるのに、それをやらないっていうのは、やはり『覚悟』が足りないと思っちゃうんです。
「B治療を選択したけど、副作用が大変だから、やっぱりA治療を選ぶんだった。後悔・・・」というのも、準備万端で治療に臨み、副作用には自分の知識、担当医の助言など総動員して、ありとあらゆることをやってみたけれどそれでも大変というのであれば、『後悔』しても良いけれど、『覚悟』をもってそこまでやりましたか?
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▼まとめ
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今回は、選択したらそれで終わりというわけではないですよ、というお話しでした。途中ですが今回はこの辺りで終わります。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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