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アメリカ・オーケストラ漫遊 Toledo, Ohio 

 9月中旬になるとアメリカ国内の各オーケストラが2023/2024シーズンの開幕を迎える。シーズン最初の演奏会ということで、今回行ったのはオハイオ州トリード。私が住むミシガン州の街から車で1時間少々。カジュアルに行くことができる距離だ。

ラーメン加藤 Kato Ramen

演奏会前の食事で向かったのは、出発前にGoorle mapで見つけた「ラーメン加藤」。それなりのレビュー数がついていて4.9とは絶対に美味しいに違いない、その上ランチ営業しかしていないということで、今行くしかないと思い立ち出発した。

https://katoramen.com

 アメリカに住んでいると、日本みたいなラーメンになかなか出会えず、失敗を繰り返しながら美味しそうな店があると試してみたくなる。
 トリードはオハイオ州の北、ミシガン州との境にある都市で五大湖の一つエリー湖の一番奥に位置している。ダウンタウンはそれほど大きくなく、Fifth Third Fieldという球場を中心に飲食店が近くに広がっている形で、少し離れれば無料で路上駐車が可能。
 「ラーメン加藤」はそんなダウンタウンの一角にある。2:00頃に店に入ったが、待つことなく席に座り醤油ラーメンを注文。
 うまい!!!麺の固さ、スープの味、スープの温度、申し分なし。チャーシューと味玉子1個が乗っているのがありがたい。これまでアメリカで食べた中で一番を争うラーメンを食べられて大満足だった。

トリード美術館 Toledo Museum of Art

 今回の演奏会と合わせて行こうと思っていたのがこの美術館。
実は今回の演奏会は美術館の一角を占めているホールで開催される。トレド美術館というのは何か聞いたことがあるような気がしていたが、トレドというとスペインの都市の方が観光地としては有名で、私の知っているトレド美術館はスペインなのか?とも思ったが、美術館としてはこちらのようだ。
 コレクションはガラスアートが有名で、その展示のために別棟があるほどだ。本館には、古代エジプト、メソポタミア、ギリシャ、ローマの彫刻、陶芸から、中世以降の西洋絵画のコレクションが豊富だった。純粋な宗教画よりも、風景画、風俗画のような、当時の風景、人々の暮らしをとらえた作品が多かったように感じた。絵を見て当時の人々の暮らしを想像するのは私の絵の楽しみ方の一つだ。印象派の絵画も大きな部屋に固まっており、誰でも楽しめるのではないだろうか。

2023年9月16日 トリード交響楽団

9/16/2023, Sat, 8:00 pm, @ The Peristyle, Toledo
Toledo Symphony Orchestra
Alain Trudel, conductor / Branford Marsalis, Saxophone


  • The Star-Spangled Banner

  • Four Sacred Places / EVAN CHAMBERS

  • Saxophone Concerto / GABRIEL PROKOFIEV

  • Pictures at an Exhibition / MODEST MUSSORGSKY (Arr. RAVEL)

正面入口

 先に触れた通り、このホールは美術館に併設されており、入口も美術館から直接入ることができる。正面入口に行くためには駐車場から美術館を反対側に抜けて回り道をしないといけない。この美術館全体が古代ギリシャを思わせるような柱が並んだデザインになっており、特徴的。そういうわけで、わざわざ正面からホールに向かう人は少ないように思った。8pmの開演直前まで美術館も開いており、早めに着いてもとても文化的な仕方で時間を潰すことができる。

自席から会場後方
自席から舞台

 ホール内部に入るとまたギリシャの神殿を思わせるような柱に囲まれており、平面のフロアとそれを取り囲むように傾斜のある座席がU字に配置されている珍しいレイアウトで天井はあまり高くない。舞台の反響板にまで柱のデザインが統一されており、何かの舞台セットのよう。舞台袖上部にはディスプレイが配置されており、演奏中もSoloを映すなど視覚的にも楽しめる工夫がされており大変良い。

The Star-Spangled Banner

 アメリカのオーケストラのシーズン最初はアメリカ国歌"The Star-Spangled Banner"で始まるのが通例のようだ。昨年のデトロイト交響楽団の最初の演奏会でもそうだった。指揮者の入場とともにまずはお客さん含め全員立ち上がって国歌を歌う。私も立ち上がることは特に構わないのだが、歌詞を覚えているわけではないので自然には歌えない。でも会場の皆が歌っているのはまた楽しい。

Four Sacred Places / EVAN CHAMBERS

 作曲のEvan Chambers氏はミシガン大学の教授を務めている作曲家で会場にも来られていた。4つの楽章はそれぞれ季節を表しており、夏に始まり、秋、冬、そして春で終わる。まずはこの順番がアメリカ的、ミシガン的だと思うのは、やはり人々は夏を楽しみに生きていることがわかるからだ。夏を精一杯楽しんで、秋の収穫の季節と冬の準備、頑張って寒い冬を越すと、一気に芽吹いて華やかな春を迎えるという感じが曲全体の流れだったと思う。
 多くの楽器に特殊な使い方をさせて生き物の声を担当させたり、聞いていても非常に変化があって面白い曲だった。特に最終楽章の「春」は非常に生き生きとしていて華やかで、聞いていてとても楽しかった。

Saxophone Concerto / GABRIEL PROKOFIEV

 プロコフィエフと聞いてまずは勘違いしそうになったけれど、その勘違いは半分正しいのかもしれない。作曲者のGabriel Prokofiev氏はクラシックで有名なSelgei Prokofiev氏のひ孫にあたるらしい。それでもこのGabriel Prokofiev氏はクラシックだけではなく、ダンス、エレクトリカル、ヒップホップまで幅広く扱う、大変現代的な作曲家のようだ。
 ソリストのBranford Marsalis氏は昨年聴いたフィラデルフィア管弦楽団のTuba Concertoの作曲者でトランペッターのWynton Marsalis氏の兄で有名なサックス奏者ということだ。この曲はMarsalis氏のために2016年に作曲されたコンチェルトだそうだ。
 曲は現代的で初めて聞く曲だったこともあって、私にとっては少しつかみどころがないように感じてしまったが、独特のリズムと点を線で結んだようなSaxophoneの跳躍のある旋律が印象的で、soloのよく通る音と技術の高さを楽しむことができた。

Pictures at an Exhibition / MODEST MUSSORGSKY (Arr. RAVEL)

 言うまでもなく有名どころの「展覧会の絵」。冒頭のプロムナードの金管の響きから、弦楽器を含めたtuttiまで大変良かった。全体を通して超一流の技術が楽しめるというようなタイプの演奏ではないものの、それぞれのソロはちゃんとしているし、アンサンブルもしっかり作られていて、いい演奏だったと思う。Tuba吹きとしては、BydroのTuba soloをF-TubaでTuba奏者が吹いていたのが印象的だった。少し吹きにくそうではあったが、多くの楽団がするようなEuphoniumをTrombone奏者が演奏するものとは違って、高音のTubaの響きは味わい深いものだった。各管楽器のsoloも良く(特にtrumpet, horn, saxophone)、最後フィナーレのtuttiの響きは素晴らしく、演奏会のを締めるにふさわしい盛り上がりだった。

まとめ

 全体として楽しむことができた演奏だったが、ホールの音響として天井が低いせいあるのかもしれないが、少し演奏が近すぎる、合奏を聴いているような印象を持った。12月にはこの楽団の演奏で大きな教会でヘンデルの「メサイア」を聴ける演奏会があるのでそれが非常に楽しみだ。1時間程度で行けるところでこのような演奏が聴けるのであれば大満足だ。今回特別な$10の割引クーポンが席に置いてあったので、また都合のつくタイミングで聴きに行って、もっとこの楽団の特徴を知りたいと思った。

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