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年内聴き納め DSO x チャイコフスキー アメリカ オーケストラ漫遊(13) Detroit, MI

 今回も会員のDSOのコンサート。前回が大当たりのブラームスだったので、今回も期待が大きい。ラフマニノフとチャイコフスキーという鉄板プログラムだ。
 ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」はコンチェルトに分類され、第18変奏の壮大な旋律が印象的だが、他の変奏が捉えきれていなかったというのがそれまでの感覚だ。
 チャイコフスキーの交響曲第6番はチャイコフスキーの最高傑作と言われているのは知っていたが、個人的には第5番の方が好きだと思っていた。今回のコンサートに向けていくつかの音源を聴いてみると、少しずつ曲の魅力、味わい方が見えてきたように感じた。

2023年12月9日 デトロイト交響楽団

12/9/2023, Sat, 8:00 pm, @ Orchestra Hall, Detroit, MI
DETROIT SYMPHONY ORCHESTRA
Jader BIGNAMINI, conductor
Sergei BABAYAN, piano


  • The Montgomery Variations / Margaret Bonds

  • Rhapsody on a Theme of Paganini / Sergei Rachmaninoff

  • Symphony No.6 in B minor, Op. 74, "Pathétique" / Pyotr Ilyich Tchaikovsky

 指揮は音楽監督のヤデル・ビニャミーニ。DSOのいつもの組み合わせだ。最近どこかの日本のオーケストラでも客演していると聞いた。
 1曲目のBondsのThe Monthomery Variationsは初めて聴いたが、吹奏楽ファンとしては馴染みやすい曲だった。1964年に作曲された曲で、全体を通して管楽器の旋律が多いこともあり、吹奏楽の古典的なオリジナル曲と似た印象を感じた。吹奏楽アレンジがあっても良さそうだ。最終楽章の盛り上がる旋律の聴かせ方など、演奏もとても表情豊かで素晴らしかった。初めて聴く一曲目にとても良い印象を持つのは珍しいことなので、とても得した気分だった。
 ラフマニノフの「パガニーニの〜」はプログラムノートによると、3部構成と見ることができるらしい。そう考えると全体のイメージが少し持ちやすい。テンポの速い第1部(冒頭〜第10変奏)、ゆっくりとした第2部(第11〜18変奏)、再び速いテンポに戻る第3部(第19変奏〜終わり)。曲全体は20分弱とコンチェルトとしては短め。Sergei BABAYANはラフマニノフを得意とするピアニストのようで、ソロとオーケストラの息のあったとても良い演奏だった。
 休憩を挟んでのチャイコフスキー「悲愴」は長大な第1楽章の美しいメロディーと激しい曲想の行き来を楽しんで、第3楽章は交響曲第5番第4楽章と似て華やかに終わった後、これ以上何するん?というのが第4楽章だ。そしてその第4楽章が「悲愴」という曲名の所以なのだろう。今回のDSOの演奏は長大な第1楽章を飽きることなく、美しいメロディーと力強い中間部を見事に聴かせてくれた。第3楽章までの演奏も見事で、(曲を始める前にビニャミーニ氏が言った通り)拍手が起こった。そこからの第4楽章もしっかり芯のある演奏を聴かせてくれた。全体を通して満足の演奏会だった。

 前回のブラームスから見事な演奏が続いたことから、ただの偶然ではなくやはり何か変化があったのだと思う。また2024年もDSOのいい演奏を聴けるのが楽しみだ。

参考音源

ラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲
Los Angels Philharmonic
Gustavo Dudamel, cond.
Yuja Wang, piano
ラフマニノフ生誕150年を記念したYuja Wang、Los Angeles Philによるピアノコンチェルト全集。最新の演奏。

チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」
New York Phiharmonic
Leonard Bernstein, Cond.
迫力が違う。

ボンズ モンゴメリー変奏曲
ロイヤルスコティッシュ管弦楽団
Kellen Gray, cond.

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