俳句とエッセー③『 海 山 村 Ⅱ - みな違う』 津田緋沙子
み な 違 ふ
ひ ま わ り や 自 転 車 旅 の 子 の 未 来
鞄 よ り 猫 の 顔 出 す 夏 休 み
入 院 の 鞄 重 た し 今 朝 の 秋
初 潮 の 鼓 動 や 葦 の 目 覚 め た る
塾 の 灯 の い よ よ 明 る し 初 嵐
水 澄 む や 野 を 渡 り ゆ く は ぐ れ 雲
水 澄 む や 山 羊 の 鈴 音 の み な 違 ふ
風 の 道
今年の夏は豪雨や猛暑だけでなく風も強かった。台風かと思う
程の強風の日が何度もあり、私はびくびくしながら車庫の屋根を
見張る羽目になった。わが家の車庫の屋根のスレートは十年前の
台風で田んぼへ飛んだ前科がある。
家を建てる時の大工さんの言葉は「ここは風の道のあるけんね」。
それを私は素敵なことと聞いていた。渡り鳥たちがその道を飛ん
でゆく姿などを思い浮かべて。
ところがじきに、わが家にはそよ風など数少ないと解ってきた。
窓を開けるとカーテンは翻り新聞が飛ぶ。花の鉢がひっくり返る
のはよくある事で、油断するとバケツや箒、 コンテナが転がり回
る。最近は遠くに小さな竜巻が見えて緊張した。
十年前と違い周囲に家が増えた今は、車庫の屋根は飛ぶように
できていると澄ましてはいられない。台風期を前に遂に補強して
もらったが、今度は屋根屋さんの言葉が怖い。 「次飛ぶ時は柱ご
とですたい」。
強風も異常気象の一環なのだろうか。世の中も風向きがおかし
いし強風が吹き荒れている。 こちらに補強の手はあるのか。
踏ん張らねば。
下記をクリックすれば『海山村Ⅱー風の道④』に続きます。
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