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ストリートファイター。

 母子家庭&下流家庭で育てられた幼少期の思い出といえば、祖母が運転するママチャリの後ろのカゴに乗っていた記憶ばかりです。行き先は決まって近所のスーパーで、到着するや否や速攻で小さなゲームコーナーまで強制連行されました。そして、100円玉を2枚渡され「買い物してくるから遊んで待っとってね」と言われていました。

 これは幼少期の自分が祖母の買い物に同行した場合、尋常ではない駄々をこねて500円以上のお菓子を買うことになってしまうので、『如何に出費を抑えるか』を考えに考えた結果、編み出されたおばあちゃんの知恵袋……というか貧乏家の苦肉の策だったと思います。

 しかし、そんな小さな男の子(しかも天使のように可愛い)がひとりで遊んでいたら、中学生からしたらいいカモでしかありません。協力プレイのできるアクションゲームをひとりで遊び始めると、「一緒にやったるわ」と中学生に参加され、すぐにその友人に「ここはむずいで代わったるわ」と無理やり席を奪われ、中学生2人によるプレイをただ見ているだけという状況にされることが多々ありました。

 また、対戦ゲームの場合では速攻で乱入されて負け、ゲームコーナー到着後5分もしないうちに祖母が迎えに来るまで他人がプレイしているのをひたすら後ろから見ているだけという日々が続きました。

 いつ頃からだったでしょうか?羽根を持たない小さな天使は自然にこう考えるようになりました。「ゲームはやりたいけど、2回負けたら終わり。負けなければずっと遊べる。つまり勝ち続ければいい」と。近所のスーパーの廃れたゲームコーナーでしたが、そんな環境の中で幼いながら弱肉強食の世界を知ることができました。

 早い段階で「どれか1つのゲームをうまくなったほうがいい」と悟り、当時、稼働したばかりだった『ストリートファイター2』をひたすらやっていました。見た目の印象で「なんか一番強そう」とガイルばかり使っていたのを記憶しています。ソニックブームもサマーソルトキックも出せないうえに、USAというのがアメリカ合衆国のことだと理解すらしないまま、少しずつ上達していきました。

 中高生は少しでも長い時間ゲームをしたいので、わざと負けたりするのです。こちらからするとそこが狙い目でした。最初は下手くそなフリをして、1勝したら一気にたたみかけていたのです。我ながら性根の腐ったガキでした。あっぱれ。

 近所のスーパーでは店員さんの監視の目もあって暴力を受けることはなかったのですが、遠出したときのゲーセンでは何度か中高生に「まぐれで勝ったぐらいで調子に乗るなよ!」と腹や背中を殴られて大泣きしたのを覚えています。リアルストリートファイターはダメ、絶対。

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