厚労大臣が誤情報!?「死亡増加の要因は高齢化によるもの」
こんにちは、医師&医療経済ジャーナリストの森田です。
先日、武見太郎厚生労働大臣が公式の記者会見で非常に重要な発言をされたのをご存知でしょうか?
曰く、
とのこと。
(詳細は以下、藤江さんのツイート&YouTube動画を御覧ください。)
これ、本当に「高齢化」が大きな要因なのでしょうか?
高齢化が要因ではない
では、統計を見てみましょう。
こちらが過去約50年の日本人の死亡数の推移。
これを見ると、確かに日本人の死亡総数は右肩上がりに増えていますね。
これは、日本の高齢人口が爆発的に増加、それに伴って死亡者数が増えたものです。
ということで、武見大臣の「高齢化の影響」という発言が正しいように思われるかもしれません。
ただ、一番右の2022年、2023年の増加幅がちょっと他の増え幅より大きくも見えないでしょうか?
ここを拡大するとこうなります。
通常であれば高齢化による自然増(水色の帯の範囲)は毎年およそ「2万人」程度。
一方、2022年は前年比で約13万人も死亡が増加しています。23年は更にそれ以上。
これは明らかに異常値です。
2011年の東日本大震災の時の死亡増加が約6万人増だったので、その倍以上の死亡増加。
まさに「日本人の謎の大量死」と言っていい状況です。
このグラフを見るだけでも、武見大臣が言われた「日本人の謎の大量死は高齢化の影響」という発言が大いに的外れで、誤情報と言われても仕方ないことが分かると思います。
というより、そもそも「超過死亡」とは、高齢化などの自然増の影響を計算したうえで、それ以上に増えている分を言うものです。ですので、超過死亡が発生している時に、その要因を高齢化で説明するのはそもそも根本的に全くの間違いなんですけどね。
団塊の世代のせいでもない
日本人の死亡増加について、よく聞かれる言説が、
「爆発的な出生があった団塊の世代が後期高齢者になったのだから当然」
というようなものです。
では、統計を見てみましょう。
こちらが日本人の出生数の推移です。
昭和20年前後の数年が空白になっているのは、戦争による混乱で統計が取れなかったからです。
これを見ると、たしかに終戦直後の昭和22~24年の3年間だけ突出して出生数が増加していることが分かります。
(戦争に行かれていた男性陣が終戦で故郷に帰りそこで子作りが一気に進んだから、と言われています)。
それまで年間220万人くらいだった年間出生数が、突然50万くらい増えて270万に。それが3年間ですので、合計150万人くらい出生数が、この3年間だけで増えています。
これが第1次ベビーブーム、このときに生まれた方々は「団塊の世代」と言われます。
「団塊の世代」の方々は今ちょうど77〜80歳くらいで平均寿命に近づいています。出生数が150万人も一気に増えた世代が平均寿命に近づいたのですから、(みんなが平均寿命で亡くなる訳では無いにしても)突然10万人くらい死亡数が増えてもおかしくないだろう。
と考えても不思議はありません。
ただ、グラフをよく見るとこの考え方も明らかにおかしいのです。
なぜなら、その少し前の昭和11〜12年に、出生数がドーンと減少している時期があるからです。
(戦時中の空白の時期も普通に考えれば出生数は激減していそうですが、そこは予想なので割愛します)
この時期の減少幅は、先程の団塊の世代の増え幅と大差ありません。
仮に今、団塊の世代の出生増で死亡数が増加するのであれば、その数年前に死亡数が激減する時期があって然るべきです。
ではそうなっているのか?
いえ、なっていません。死亡数は徐々に増えているだけです。
(再掲)
つまり、出生数にかなり凸凹があっても、その人達が80歳でみんな亡くなるわけではなく、亡くなる歳はかなり分散する。結果としてそれらの出生のばらつきは死亡数にはほぼ反映されず、死亡数のグラフはなだらかな曲線を描く様になる。ということです。
つまり、「団塊の世代が後期高齢者になったのだから当然」という説は、以上の理由により「理屈が通らない」ことが明白だと言っていいでしょう。
これ以上解明する必要はない?
今回の発言の問題点は、もう一つあります。
それは武見大臣がこの問題について、
「これ以上詳細に解明する必要はない」
と記者会見で明言したことです。
・日本人が大量に死んでいる…
・原因が分からない…
・これ以上詳細に解明する必要はない?
これは国民の健康を預かる厚生労働大臣の発言として明らかに不適切です。
責任問題に発展しても良いくらいの問題発言でしょう。
小林製薬の「紅麹」が5人の死亡事例(疑い)を出した時は「徹底的に原因を究明する」と息巻いていたのに、10万人以上の謎の死亡が発生しても「これ以上詳細に解明する必要はない」と…。
明らかにダブルスタンダードで、不誠実な対応です。
こんな発言を、国民の前で堂々と出来るのでしょうか?
メディアの無反応
国民の命を預かる立場の厚生労働大臣が、
・明らかな誤情報を発信し
・しかもこれ以上解明しない、という不誠実な態度。
これほどの問題発言なのに、大手メディアも全く報道しません…。
彼らなぜこの問題発言を報道しないのでしょう?
コロナの時は
「命を守るために!」
「外出制限!行動自粛を!」
と大声で毎日叫んでいた彼らが、いざ10万人以上の日本人の死亡増加を見ても、大臣がそれについて誤情報を発信しても、これに全く興味を示さない…?
これこそ、典型的なダブルスタンダード。まさしく不誠実です。
せめて
「日本人が謎に大量死している」
という重大事実だけでも、少しでもいいので報道していただけないものでしょうか?
個人がお願いするようなことでもないのですが、本当に重要なことなので、ぜひぜひ、なんとかお願いしたところです。
以上、厚労大臣が誤情報発言!?「死亡増加の大きな要因は高齢化によるもの」でした。
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医療は誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」、
という信念なので医療情報は基本的に無償で提供いたします。
でも投げ銭は大歓迎!
いつも皆様の投げ銭から大いなる勇気を頂いております。
ありがとうございますm(_ _)m
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■内容■
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コロナ禍の時代にこそ考えたい、「理想の死」の見つけ方
「万一、何かあったら心配」
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「好きなものを食べたい」
「自由に外出したい」
「死ぬ前にもう一度、自宅に帰りたい」
そんな人間として当たり前の希望を、願っても仕方ないと口に出すこともできない。私はそうした高齢者の方々をたくさん見てきた。
どんなに安全を求めても、安心を願っても、人間は必ず死ぬ。
いま本当に求められているのは中途半端な“安全・安心"ではなく、その“安全・安心"の呪縛から高齢者の生活を解放することなのだ。
「うらやましい孤独死」は、そのもっともわかりやすい例だろう。
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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)