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「新型コロナ重症患者の約7割が実は軽症・中等症だった」の衝撃。




こんにちは医師&医療経済ジャーナリストの森田です。


このたび、衝撃のレポートを見てしまいました。


国立感染症研究所が出している


広島県における新型コロナウイルス感染症の重症例・死亡例に関する実地疫学調査、2022年1月

出典:https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/11021-506p01.html


というレポートです。


こちらは、広島県で「重症」と登録された患者さんのカルテを後からチェックしてその内容を吟味し、そこからコロナ新型コロナ感染の全体像を把握しよう、という趣旨なのですが、何が衝撃だったかと言うと、タイトルにもある通り、


「新型コロナ重症患者の約7割が実は軽症・中等症でした」


という部分です。






レポートの当該箇所を簡単にまとめますと、


・広島県で1月に発生した重症例は全27例。
・そのうちオミクロン株25例のみを対象とし、そのうち24例のカルテを調べたら、うち15例は実は軽症・中等症の患者だった。
・本来重症でないのに「重症」と計上されていた理由は、
  ○基礎疾患やリスク因子により重症化の懸念があったので重症病床に入っていたから
  ○透析対応の可能な病床が重症病床しかなかったから
  ○重症例に付き添った軽症例だった


というところです。

重症例に付き添った軽症例?ちょっと驚きですね。まあ、たしかに子どもや認知症高齢者などで「付き添い」が必要なこともあるでしょうけど。

ただ、少なくとも、その軽症の人を「重症」にカウントするのは市民が想定している重症病床のイメージとはかけ離れていると言わざるを得ないです。もっと言えば、もし重症病床の診療報酬をとっているのならそれは、診療報酬の不正請求に当たるか可能性すらあります。


そもそもの話、これまで国民は

「感染者・重傷者が増えると医療逼迫・医療崩壊がおこって、助かる患者も助からなくなってしまう!」

こんな恐怖のメッセージをテレビなどのメディアを通じて受け続けてきました。だからこそ緊急事態宣言や営業自粛などの痛みを受け入れてきたわけだし、だからこそTVなどのマスコミは「医療逼迫を防ぐ」ことを看板に掲げて大騒ぎしてきたわけです。しかし、実際の現場の実態は全然違うかもしれないということをこのデータは示しているのです。

…でもなぜこんな単純なことが今までわからなかったのでしょうか?

それは、日本の病院の経営方針や意思決定が「病院の自由」で運営されており、国の管理の行き届きにくいからです。病院は基本的に全てのデータを国に出すわけではありません。それを良いことに(現場の実態は国にはバレるわけないので)とにかく報酬の高い「重症」ということにしておこう、重症病床もとりあえず埋めておこう、という経営重視の姿勢がまかり通っているのでしょう(緊急整備されたコロナ報酬では特に)。
これは日本の病院の8割を占める民間病院で特にひどいのですが、今は公的病院ですら「経営」に追われ、収益の最大化(簡単に言えば満床を目指す)を求められています。となれば、公的病院のICUだって空いてる病床は「埋める」という発想になるのは至極当然のことです。

(実は多くの先進国では医療機関が国による公的運営のため満床は目指しません。また、病院内でどんな治療が行われているかは国に報告され一元管理されているのでそもそもごまかしが効きません。アメリカだけは民間病院が多くちょっと違うのですが、そのアメリカではの保険会社が医師の診療内容の一つ一つを細かくチェックして支払いの可否を決めるのでそれはそれで厳しいです。ちなみに日本の健康保険は医師の診療内容についてほとんど口を出しません。形式的に「病名」さえついていれば、殆どの診療報酬がほぼ無審査で支払われます。)


ということで、本件を簡単にまとめますと、

そもそも日本の重症病床・ICUでどんな治療が行われているかはブラックボックスで国にさえよくわからないシステムだった。
だけど、まあさすがにそんなデタラメなことにはなっていないだろうと多くの医療関係者は思っていた。
だけど、今回のレポートで「重症のうち7割は重症じゃなかった」という、衝撃のデータが暴露されてしまった

というところです。

実は僕が経験した夕張市の医療崩壊も同様でした。
「市内に一つだけの総合病院171床が19床の診療所になっちゃっても市民の死亡率や健康指標は変わらなかった(医療費は減った)」
という事実の裏には、おそらくそれまでの総合病院が無理に満床を維持していたという事実があるのです。(僕はその時代の病院にいたわけではないので想像ですが、多分そうです。夕張市の詳細については拙著に詳細が載っています)
↓↓


まあ、たしかに、重傷者が最も多かった第5波(昨年8〜9月)では、病床使用率が90%を超える地域もでていました。医療機関に入院できず自宅で亡くなってしまう人が出たり、本当に悲惨な事態となっていたのは報道のとおりです。ですので、その時点・その地区では今回のレポートの実態とは違って医療崩壊も起こっていたのかもしれません。


出典:厚労省 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000872220.pdf

 しかし、その時点・その地区においても、その地区の重症病床でどんな治療が行われていたのかは、結局の所不明なのです。「医療逼迫していただろう」というのは予想に過ぎないのです。

そんな曖昧なデータで我々の行動が制限されていたのですね。

更に衝撃なのは、こんなにすごいサンプルデータが出てきたのだから、早速全国調査をやるべき!と思って当然のところなのですが、

「おそらく今後、誰もそこを調べようとしない」


という事実です。

たしかにこうしたデータを得るためにはカルテを一つ一つチェックしていく必要があるので、かなりの労力になるでしょう。でも、それなりのお金をかけて本気で調べれば全ての実態が明らかに出来ます。コロナ予算に計上した77兆円のうち、1兆円も当てればお釣りが来るでしょう(多分そんなにかかりません)。

やればできるはずなのに…
国民は本質的にはそういうデータを求めているはずなのに…
そんな調査は一切行われる気配すらありません。

なぜ行われないのか僕には本当のところはわかりません。お金の問題かもしれません。もしかしたら裏には既得権益を損ねたくない医療業界の意向があるのかもしれません。

でも、「医療崩壊」を盾に緊急事態宣言や営業自粛など国民に大きな犠牲を要求するのなら、少なくともその医療崩壊の背景データをしっかりと精査すべきなのは当然ですよね。…


果たして我々医療業界は、誰のために医療を行っているのでしょう?

国民の健康のためなのでしょうか?

病院の経営のためなのでしょうか?

国のメンツを保つためなのでしょうか?

国中を巻き込んだ緊急事態宣言や営業自粛・行動制限の根拠の一つだった「医療逼迫」がウソだったなら、こんなひどい話はありません。でも国に任せていたら未来永劫本当のデータなど出てこないでしょう。

そこをしっかり監視し、追求するべきと声があげていくのは、やはり国民一人ひとりの意識の問題になってくるでしょう。それが大きなうねりになっていく…そこにしか希望はないのではないでしょうか。

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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)