残像論断章(四)──〈書〉の残像 二
❖残像を感じさせるのは、平安の仮名古筆ばかりではない。室町時代から江戸時代に多く書かれた禅僧による墨蹟は、時として一字あるいは数字を大書するものが多いが、「不立文字」を思想として掲げていながら書かれるその書は、覚醒を促す短く垂直的な言葉が、余白の中で孤立するように書かれることで、残像が増幅され──残像はまばたきのように中断によって増幅される──、堂宇の中で弟子を大音声で叱り飛ばすように、また文字の意味を越えようとするかのように余白の中で響く。
そこには漢字が表意文字であること