日本近代文学と書・文字
1-1 近世的なもの
1-1-1 古文書と書
「書」の価値はさまざまな局面にあるが、その中の一つとして重要なのは、書と歴史の関わりである。書が歴史史料としてこの上なく重要であることは言うまでもない。
さらに書は「文字内容」とともに「書きぶり(書風・書体)」を伴っている。これも歴史を形づくる。個人の手の中で生み出される書きぶりは──時代を脱却しようとする動きをはらみながらも──時代の思潮と強い関係を持ち、不可避的に歴史のさまざまな条件の規定を受けざるを得ない。この書きぶりの堆