残置物の処理等に関するモデル契約条項
「単身高齢者が入居している物件のオーナー、管理会社のための備え」
残置物の処理等に関するモデル契約条項とは、国交省が公表している契約条項です。単身高齢者などの死亡した際のリスクを回避することができるとされています。
死亡した際のリスクとは、契約終了の困難、残置物処理の困難が挙げられています。
このような死亡した際のリスク、相続人の有無や所在が明らかでない単身者が死亡した際の賃貸借契約の解除や居室内に残された動産(残置物)の処理への不安感から、高齢者の入居の申込みを敬遠することがありました。
このような不安感を払拭し、単身の高齢者の居住の安定確保を図る観点から、単身の高齢者が死亡した際に契約関係及び残置物を円滑に処理できるように、と策定されたのが、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」です。
モデル契約条項の説明
モデル契約条項は、次の3つから構成されています。
ア 解除関係事務委任契約に関するモデル条項
イ 残置物関係事務委託契約に関するモデル条項
ウ 賃貸借契約に設ける上記(準)委任契約に関連する条項
入居者の死後、賃貸借契約の終了や残置物処理の事務を委任/準委任する契約です。
想定される受任者としては以下とされています。
・賃借人の推定相続人
・居住支援法人、管理業者等の第三者(推定相続人を受任者とすることが困難な場合)
なお、賃貸人は賃借人と利益相反の関係にあるため、受任者とすることは避けるべきといわれています。
想定される利用場面としては、単身高齢者(原則として60歳以上)が賃借人である場合が挙げられています。
賃借人の義務を加重する内容となっていることから、消費者契約法上の問題から必要性のないケースで契約締結しても無効とされる余地があると指摘されています。当然、賃借人及び受任者がその内容を十分に理解した上で任意に同意していることが必要です。
単身の高齢者にとっても終活の一環として、相続人など残された人にコストをかけさせないためにも前向きに検討してもらいたいものです。
賃貸人や管理会社としても、賃貸借契約の解除や残置物処理を行えるようにするというもので、死亡した際のリスク回避につながるとても有用なものなので、単身高齢者が入居しているケースには必須といえます。
しかしながら、なんと、これが全然認知されていない。
不動産管理会社が、知らないとか内容がわからないでは済まないと思います。オーナーからすれば、対処のための費用が過大になった場合、管理契約上の善管注意義務に違反するといわれてもおかしくないと思います。
通常の取り扱いとして、賃借人が亡くなった場合、相続人を把握するための戸籍調査をしなければならず、相続人がいないときなどの相続財産管理人選任の申立てをする場合には、裁判所予納金(一般的に100万円程度)など費用を要することと比べると、多少のコストをかけても残置物等の処理に関する委任契約を締結するほうが経済的に合理的です。
相続人がいる場合でも残置物処理にかかる費用を負担しなければならないことを理由に相続放棄をされるケースもありますので、備えておく方がよいと考えられます。
賃貸借契約とは別途の契約ですので、新規契約だけでなく既に入居している単身高齢者との契約も可能です。
残置物の処理等に関するモデル契約条項を参考に、死後事務委任契約が周知徹底されて、単身の高齢者の居住の安定確保が図られることを期待します。
モデル契約条項は、国交省HPに掲載されていますので、参考にしてください。
モデル契約条項に関して、弁護士による解説やセミナー・勉強会をご希望の方は喜多啓公法律事務所までご連絡ください。
以下に弁護士がアレンジして実務的にした契約条項を載せようと思います。アレンジした際に気づいた点も少し挙げておきます。
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