“グアム島”と“広島”
僕は家内とよく一緒に旅行をするのですが、その時発音を区別するのが非常に難しかった地名があります。一つは新婚旅行で行ったグアム島、もう一つは国内旅行で行った広島です。グアム島は中国語では“關島”と書き羅馬拼音では“guandao”となり四声は一声と三声です。広島はそのままの漢字で“guangdao”四声は三声と三声です。日本語で表現すると両方ともほとんど“クァンタオ”になり、この二つの地名をなかなか言い分けられませんでした。今でも注意を怠ると曖昧になってしまいます。この発音について考えたことを書きます。
"an"と"ang"
日本語では"アン"と表記する発音に中国語では"an"と"ang"があります。注音符號では"ㄢ"と"ㄤ"です。これは鼻母音と呼ばれています。"an"が舌を上あごにつけて発音するのに対して、"ang"は口を開けっ放しにして発音するとこう説明されています。
しかし初めの頃は結局のところ"ン"の発音でしか理解できず、この二つを正確に話したり聞き取ることはできませんでした。そんな中、家内に旅行の話をしたときに、それはグアムの話なのそれとも広島かと正され、矯正されたという次第です。
「臺日大辭典」を見ての発見
ある時、図書館で台湾総督府の「臺日大辭典」をパラパラとめくっていたときに、ある事に気がつきました。この辞典では台湾語の発音の表記はカタカナになっています。今でも台湾語の表記は正式なものがなく、さまざまな方式が試されていますが、日本統治時代はカタカナを用いていたんですね。
気がついたのは、発音の最後に"ヌ"と書いてあるものが少なからずあることです。これは、"an"と"ang"の発音を仕分けるのに参考にできるのではと閃きました。舌を上アゴにつけるのと"ヌ"と発音するのは、結局のところ同じことを示していると思いますが、話すときにこれを意識するとさらに効果的になるように思います。
例えば"緊張"と中国語で発音するときに"jinzhang"と書くわけですが、これを"チヌチャン"と緊は"ヌ"を意識して口を閉じ、張は口を開いて発音するわけです。グアム島は"クァヌタオ"と言った意識で発音します。広島は"クァンタオ"で口を閉じずに発音します。
この違いをはっきりさせた上で、四声を間違えなければ、グアム島と広島をきちんと言い分けることができるようになりました。
日本語にもある二つの"アン”の発音
なお、この"an"と"ang"の発音の違いは、日本語の中でも自然にされていると考えています。それはンの後に続く言葉によって変化しているんですね。
例えば"案内"という言葉。これはンの後にナがきてきます。ナという発音は舌が閉じられるところから始まるので、ンはその準備のために舌が閉じられます。これが"案外"となるとンの後はガが来ています。ガは舌が閉じていませんので、ンの音も閉じる必要はなく開いたままです。
日本語の発音におけるこの違いを自覚することも、"an"と"ang"の発音を仕分けるには有効だと思います。