見出し画像

アンサンブルのジャズピアノは引き算で

僕のジャズピアノ演奏は、エレクトーンから初めてピアノでもソロで練習していたので、一人で完結する様なスタイルで弾くことが多かったのですが、烏野薫先生のレッスンを受ける様になって、段々と考えが変わってきました。

エレクトーンでのジャズの演奏

高校生の頃にチャレンジしていたジャズの楽譜というのは、リードシートではなくて、両手に脚を加えた3段の楽譜が全て書いてあるものでした。ですので、ジャズのアンサンブルで言うと、ベース、コード楽器、フロントのメロディーの三役を一人で演奏することになります。

これは、今考えても難しいはずです。ベースはウォーキングで音数は多いし、コードには大体においてテンションノートが1つ2つ加わります。その上でメロディーは良しとしても、譜面に書かれた複雑なアドリブがあるわけです。
これが3人に分かれて、それぞれに担当されるのがジャズのアンサンブルであると考えると、1人でこれを全部やるのは大変です。しかし、僕のジャズの演奏のデフォルトはこの形でした。そして、この呪縛から放たれるのに40年かかったようなものです。

ソロピアノでのジャズの演奏

加藤先生に習ってジャズピアノを習い始めた際、まずマスターしたのはストライド形式の奏法でした。左手で一拍目にルートを弾き、その後にコードノートを弾く。これでバッキングを作り、その上にメロディーやアドリブを組み立てる。

この時に弾くコードノートについては、上記のエレクトーンと同じものを使っていました。3度/7度のコードノートに、テンションノートを1つ或いは2つ加えたものです。
この当時から、テンションノートを加えることをほとんど必須の様に考えていました。コードノートだけではサウンドに厚みと面白みに欠けると考えていました。
下記の投稿に書いた様にサウンドを3つのレイヤーに分けて構築する。そしてテンションノートを加えるのが格好良いとずっと考えていました。

コンボバンドでのアンサンブル

しかし、烏野薫先生について、コンボバンドでのレッスンを受け始めると、この様なサウンドの作り方に始終指摘が上がりました。烏野先生は、もっとシンプルなコードノートでアンサンブルの伴奏はすべきだと言うのです。この指摘が腑に落ちて、自分の演奏を矯正するのに一年ほどかかりました。

烏野先生の考え方では、コードノートに付加するテンションノートは、フロントのソリストの演奏するメロディー或いはアドリブと衝突する可能性があるので、細心の注意を払って演奏しなくてはならない。フロントの音と半音でぶつかることは、極力避けなければならないというものです。
これまではテンションノートを入れることが格好良いと考えていたので、手癖の様に無意識に複数のテンションが加わる様な演奏スタイルになっていたので、テンションノートが入るたびに烏野先生の指摘があがりました。

また、フロントと同じ音をバッキングのトップノートにすべきでないとも注意されました。フロントでマイルス・デイビスがメロディーを吹いている時に、その同じ音をトップノートで使うのか?絶対にそんなことをすべきではないという言い方でした。
ですので、バッキングのフォームについても、メロディーの音と重ならないような選択をする様に考慮する様になりました。
ただし、この配慮はアドリブの際はしなくても良いと言われました。それは、アドリブの奏者がどのような音を出すかは分からないからです。

ある時から、それならもうコードノート2音しか弾かないと覚悟を決め、その様に演奏する様にしました。そうすると先生からの指摘は無くなりましたが、サウンド的には薄く感じられ、物足りなくなりました。

それで、今は左手のバッキングでは、3度/7度のコードノートに、ルート或いは5度の音を加えて3音にして弾いています。これであれば、半音の衝突は起こらないであろうし、サウンドにはそこそこに厚みが出ます。烏野先生もこのバッキングサウンドに対しては意見が出なくなったので、レッスン1年目にしてようやく先生の意図をつかめたのかなと思っています。

アンサンブルのピアノは引き算で

今では、コードサウンドにテンションノートを加えるかどうかは、自覚的に選択して行う様にしています。

ソロピアノでやる場合には、テンションノートの選択は自らにあるので、これを加えても音がぶつかるかどうかは自分で判断できます。逆に自分の使うスケールに合わせて、左手のバッキングサウンドも調整するので破綻なく演奏することができます。
アンサンブルで弾く場合には、フロントの奏者が演奏する音を自由に選べる様に、テンションノートは弾かない様にしています。その際にはコードノートにルート或いは5度を加えることで、サウンドに厚みを加える様にします。この様な音の選択であれば、フロントと衝突することは避けられるからです。

ヴォーカルの友人にも、バッキングの際の音の選択について尋ねたことがあります。彼女も、バッキングの音とメロディーが被るとか近いと邪魔であると言っていたので、烏野先生の指摘はやはり妥当なのでしょう。

それに、テンションノートを加えないサウンドは、基本に忠実に弾けばよいので、演奏も比較的に楽です。そのポジションでタイミングよく音を出すことに注力すればよいというのであれば、演奏も簡単になります。わざわざ難しいことをしなくとも、かえってしない方がアンサンブル全体としてはより良いサウンドになるというのが、一年かけて習得したことでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?