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【音楽を図版で分析する】3度と5度で作るトライアングル

コードは3度音程の累積と言われていますが、それと同様に、あるいはそれ以上に5度音程の関係が大切だと考えています。
5度音程が大切だということは、ビッグバンドの編曲を見ていて思いついた事です。管楽器の声部の譜面をよく見ると、3度ではなく5度あるいは4度の音の積み重ねとなっているケースがよく見受けられました。これは、この音程が完全音程なので、ハーモニーが力強いからなのでしょう。

それまでピアノでコードを演奏する際に左手でベース、右手に3度堆積としていたことが多かったのですが、管楽器の声部のアレンジは完全音程となるようにされているというのが発見でした。そしてそのアイデアを敷衍して考えてみました。

ここではCM7のコードに対して9th、♯11th、13thを加えたCリディアンスケールを元に考えてみます。

なお、演奏上はルートを使ったグループは左手を、3度や7度を使ったグループは右手を使って高音部で演奏することも想定しています。

1) 基本的なトライアド:C

正三角形の底辺にルート1度と5度を設定し、上部に3度を配置します。そして下段に5度音程を拡張します右には9度と 13度を、左には♯11度を配置します。
上段には3度を中心に右に7度と♯11度を、左には 13度を配置します。このような図形を描くと、横方向には5度音程を、縦方向には3度音程を表現することができます。
この正三角形が並んだ図を元に、CM7コードをテンションを含めてどのような音の組み合わせが考えられるのかを検討していきます。

基本的なトライアドは1度、5度と3度からなりますので、下図のような正三角形で表現できます。

C

2) 4音による基本コード:CM7

Cカードの3度から右に7度の音を加えます。この菱形の4音の形は基本的なコードの構成になります。菱形の形の上下の関係は3度に、横の関係は5度になっています。

CM7

3) 実戦で習う形のCM7

下図はジャズで習う実践的な形のCM7コードの弾き方です。ルートを弾きますが、5度を省略し、3度と7度をコードの主要構成音として弾きます。
ベースがある場合、ルート音はベースに任せてピアノは3度と7度のみを弾くこともあります。

CM7

4) CM7 Drop 2&4

この図は上のパターンに5thを加えています。そしてルートと5度を組にして低音部、3度と7度を組にして高音部とする弾き方を想定しています。こういう形にすると、結果的にDrop 2&4を弾くことになります。
1/3/5/7という3度堆積のうち上から2番目の5度の音をオクターブ下げるというのが、Drop 2という手法で、これは5/1/3/7という形になります。特徴として5度が最低音になること、5度とルートの完全音程、3度と7度の完全音程が切り分けられることがあげられます。
これがさらにDrop 2&4となると、1/5/3/7の形になり低音部でルート音が最低音になります。
ですので、このDrop 2やDrop 2&4のハーモニーというのは、ルートと5度と、3度と7度を低音部と高音部に分離し、それぞれに完全音程を持たせるという手法であると理解しています。

CM7 Drop 2&4

5) CM7 9

これはCM7に、テンションの9度を加えた形です。左手のみで右側の3音を、あるいは左でルート音を右手で右側の3音を弾いたりします。

CM7 9

6) C add 9

たまに7度を用いずにCメジャーの形に9thのみを加えたコードを見かけます。この形はメジャーコードに、テンションとしての9thを加えただけのシンプルなハーモニーを作りたい時に用いられます。
よく見られるのは9度と3度とを隣り合わせる弾き方ですね。1/5/9/3とか、1/9/3/5という押さえ方です。この図版ではこの様な表現はできないので、下図のようにしてあります。

C add 9


7) CM7 9 或いは Em7 on C

これは前記のCM7 9の右側のグループに、5度も加えた形です。ルートを除いた4音で安定した菱形の音形を作っています。

CM7 9 或いは Em7 on C

8) CM7 9 ♯11 或いは GM7 on C

ここには9度と増11度。2つのテンションノートが使われています。菱形を作る音形です。

CM7 9 ♯11 或いは GM7 on C

9) CM7 9 ♯11 13 或いは Bm7 on C

これは9度、増11度、 13度を持ったテンションコードになります。

CM7 9 ♯11 13 或いは Bm7 on  C

10) CM7 ♯11

ここからは三角形や菱形ではなく、横一列に3つ並んだ音形も考えてみます。

この形は実戦的なCM7に増11度の音を加えています。この右手の音形は、5度堆積になっています。そして、これをひっくり返すと4度堆積、つまり4th Buildの形になります。左でルート音を弾き、右手で4th Buildを作ることができます。
5度堆積も4度堆積も完全音程の組み合わせなので、クリアなハーモニーとなりどちらも使うことができます。

CM7 ♯11

11) CM7 13

これは実戦的なCM7に13度が加わった形です。そして、ここにも右手のフォームで5度堆積の形ができています。ひっくり返すと4th Buildになります。

CM7 13

12) D on C (1)

これは右手で9度、増11度、13度のトライアドを弾いて、左手はルート音のみという組み合わせです。この音型はトップノートを増11度とする形でよく使っています。

D on C (1)

13) D on C (2)

これは、左手の低音部でトライアドを鳴らす形の、アッパーストラクチャートライアドです。ルートに対する9度、3度に対する増11度、5度に対する13時がそれぞれナチュラルテンションになっており、緊張感のあるサウンドが得られます。

D on C (2)

14) CM7 9 13

これは左手でルートからの5度堆積、左手でも同じ様な5度堆積、或いは4度堆積を作る形です。右手も左手も音の組み合わせが完全音程でクリアになっており、6つの音を使っているのでとてもクオリティーのある音使いができます。

CM7 9 13


15) CM7 9 ♯11

これは上と同じアイデアを9度と♯11度を使って演奏する組み合わせです。やはり、左右それぞれの手で完全音程の組み合わせを使うので、クオリティーの高い音使いになります。

CM7 9 ♯11


図形から理解するテンションハーモニーの使い方

上記に説明したのは全てCM7のコードの押さえ方のヒントです。演奏する際のハーモニーの考え方を表現しています。三角形や菱形で組み合わさっている場合はClosed Harmonyを、2つの部分に分かれている場合はOpen Harmonyを想定しています。
また、上記の15種はあくまでも基本で、例えば3度と7度を低音部に配置するハーモニーや、6音ではなく、5音で作る場合など、まだまだバリエーションもあります。

この3度と5度で作る三角形を拡張し、さまざまなハーモニーの可能性を探るというのは、ピアノで伴奏する場合には有効な手法と考えているので、参考に提示してみました。
ただし、実戦でやるとあまり音数が多いとヴォーカルのバッキングなどではうるさいですね。少しシンプルな方が相応しいように思います。インストのバンドでブロックコードではガンガンやりたい時には、図で示した6音によるハーモニーなどは実践的です。

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