見出し画像

【音楽を図版で分析する】スケール

ジャズを勉強するとたくさんのスケールを覚えなくてはなりません。チャーチモードまでは何とかマスターできたのですが、Harmonic Miner Perfect 5th Belowであるとか、 Lydian 7thであるとか出てくると、記憶力のキャパシティーを超えてしまい、そもそもそんなにたくさん覚えても実際に使えなければ意味はないとあきらめていました。

二胡の練習からの気づき

あるとき、家内の練習している二胡という楽器で基本的な音階を練習していたのですが、ふと気が付いたことがありました。この楽器は弦が二本しかなくて、音程はDとAに五度で調弦されています。そして、メジャー音階をDの弦でD/E/F♯/G、Aの弦でA/B/C♯/Dと弾きます。この前半と後半の指を押さえる位置が同じなのです。これは弦楽器をやる人にとっては自明のことかもしれませんが、ピアノを演奏する自分にとっては目からうろこの発見でした。

このことを敷衍して、様々なスケールを二胡で弾いてみたらもう一つのことに気が付きました。それは音階の1度、4度、5度と8度は、ほぼ常に同じ位置だということです。これはスケールで弾くと1度/4度/5度/8度は、1度に対する完全音程になり、一定の位置にあるということです。

ということは、音階を1度から4度まで、5度から8度までの部分に分けて考えると、大部分のスケールはこの組み合わせで構成できるのではないかと思いつきました。そして工夫してできたのがスケールを組み立てる6つのユニットという考え方です。この6つのユニットを組み合わせることで、大部分のスケールを作り出すことができるということを発見しました。

スケールを作る6つのユニット

上の図ではCをルートとする音階を考えています。音程の選択肢を短2度、長2度、増2度と考えると、代表的なものとして上記の様な組み合わせが考えられます。大きく分けると4度を完全音程としているものとそうでないものです。前者の4つは4度が完全音程になっています。
ユニットの名称は便宜的に僕が名付けたものです。

Ionian Unit:全音/全音/半音の音階です。3度が長3度になっているのが特徴です。

Dorian Unit:全音/半音/全音の音階です。3度が短3度になっているのが特徴です。

Phrygian Unit:半音/全音/全音の音階です。2度が短2度になっているのが特徴です。

Arabic Unit:半音/増2度/半音の音階です。中間に増2度音程があるのが特徴です。

Whole Tone Unit:全音/全音/全音の音階です。4度が増4度になっているのが特徴です。

Diminished Unit:半音/全音/半音の音階です。4度が減4度になっているのが特徴です。

Church Mode Scale(1)

まず、Church Mode のうち前半と後半に同じユニットを使うスケールをあげます。これは4度に完全4度を用いている4つのユニットの組み合わせになります。

Church Mode Scale (1)

Ionian Scale:Ionian Unit + Ionian Unit でできる Scale です。

Dorian Scale:Dorian Unit + Dorian Unit でできる Scale です。

Phrygian Scale:Phrygian Unit + Phrygian Unit でできる Scale です。

Arabic Scale:Arabic Unit + Arabic Unit でできる Scale です。
これは、Church Mode Scale ではありませんが、便宜上ここで紹介します。この音階を使うと中東の民族音楽の様な雰囲気になるので、これを仮にArabic Unitと名付けました。こういう独特な雰囲気になる理由は、二つの半音と中間の増2度の音程の組み合わせにあると思われます。

Church Mode Scale(2)

次にChurch Modeのうち、前半と後半に異なったユニットを使うスケールをあげます。完全音程を外しているScaleが2つあります。

Church Mode Scale (2)

Lydian Scale:Whole Tone Unit + Ionian Unit でできる Scale です。4度が増4度となっているのが特徴です。

Mixo lydian Scale:Ionian Unit + Dorian Unit でできる Scale です。

Aeolian Scale:Dorian Unit + Phrygian Unit でできる Scale です。

Locrean Scale:Phrygian Unit + Whole Tone Unit でできる Scale です。5度が減5度となっているのが特徴です。

3つのMiner Scale

クラシックの音楽理論を学ぶと、短音階 Miner Scale には3種類があると学びます。この3種類もつくることができます。

Miner Scale Variation

Natural Miner Scale (Aeolian Scale):Dorian Unit + Phrygian Unit でできる Scale です。

Harmonic Miner Scale:Dorian Unit + Arabic Unit でできる Scale です。Natural Miner Scaleと比べて、7度が長7度となっているのが特徴です。

Melodic Miner Scale:Dorian Unit + Ionian Unit でできる Scale です。Harmonic Miner Scaleでできた増2度音程がなくなっているのが特徴です。

Harmonic Miner Perfect 5th Below Scale:Arabic Unit + Phrygian Unit でできる Scale です。Miner Scale ではありませんが、Harmonic Miner との比較でここで紹介します。Harmonic Miner では後半に使われているArabic Unit の増2度音程が前半に使われているのが特徴です。またこういう Scale にすることで長3度と短7度間の音程にトライトーンができます。

Dominant 7thで使えるScale

次に属七Dominant 7thで使えるScale をピックアップしてみます。これは4度と5度の完全音程は重要ではなく、長3度と短7度音程、すなわちトライトーンを持つ音階になります。

Available for Dominant 7th 

Whole Tone Scale:Wole Tone Unit + Whole Tone Unit でできる Scale です。全てが全音音程で構成され、完全4度も完全5度も含まれていないのが特徴です。またこの音階にはトライトーンが3つ含まれています。これがこの音階が不思議な浮遊感を持つ理由なのでしょう。

Lydian 7th Scale:Whole Tone Unit + Dorian Unit でできる Scale です。増4度音程を含んでいることが特徴です。

Diminished Scale:Diminished Unit + Diminished Unit でできる Scale です。この音階には4種類のトライトーンが含まれています。

Altered Scale:Diminished Unit + Whole Tone Unit でできる Scale です。完全4度も完全5度も含まれていないのが特徴です。長音階のルート以外の全ての音を半音下げた形になっています。

Harmonic Miner Perfect 5th Below Scale:このScale は前段で説明したものですが、長3度と短7度間のトライトーンを含む音階になっており、Dominant 7th で使うことができます。

6つのUnitの組み合わせ

上記の様に、基本となる6つの音階(Unit)を覚えるだけで、主なScaleを全て組み立てることができます。そして、それぞれの Scale の特徴はそもそもの音階(Unit)に由来していることも分かります。

この6つだけ覚えれば大体の Scale を処理できると考えれば、学習の負担はだいぶ減りますし、演奏の際に気を付けるポイントも絞られます。図版にすることで、それぞれのScaleの持つ特徴も明らかになります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?