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【台湾の面白い建物】屏東縣立圖書館總館

最近、台湾ではたくさんの興味深いデザインの公共建築が建設されています。その中でも図書館の変化はとても顕著で、しかも非常に好ましいものだと思っています。かつての単なる車庫の延長である様な空間が、居住性にとても配慮したスペースに変貌してきています。

今回紹介する「屏東縣立圖書館」は、その中でも特別な例です。僕はこの建物を見てしばらくその秘密には気が付きませんでした。文章による紹介を読んで、ようやくそのことに思い至ったということです。さて、皆さんは以下に紹介する写真を見て、そのことに気が付くでしょうか?

公園の中の図書館

屏東駅から歩くと30分くらい、街の中央からは東に寄った千禧公園の一角にこの図書館はあります。大きな庇に覆われたガラスの箱が、いかにもエントランスという出立で人々を迎え入れます。
一階のフロアは公園のレベルより1mほど高くなっています。これは洪水対策なのかもしれませんね。しかし、その高さをうまくデザインしていて、正面からはブリッジでアプローチ、側面からはスロープでこの高さを消化する様になっています。

側面からのアプローチ。大きな庇が特徴です。
ランダムに設けられた、三角形のトップライト。
地面から高いところに設けられたテラス状空間として、アプローチが計画されています。
正面からはこの様に見えます。ガラス面に樹木が映り込み、公園と一体化して見えます。

エントランスロビー

正面からは、ガラスの面を見せるエントランス空間は、中に入ると逆L型の断面にガラスを嵌め込んだ形になっています。構造的には三角形のトラスを用いた橋の様になっており、インテリアデザインとして、この三角形をうまく使った形で処理しています。
ここには、カフェやショップがあったり、イベントが行われるスペースもあります。木の質感を生かした壁面とガラス面がちょうどよいコントラストをなして、モダンかつ居心地の良い空間になっています。

エントランス空間の逆L型断面。
高さのある広い空間ですが、居心地がよいのは暖色系の色使いのためでしょうね。
奥の方は店舗になっています。
手前はカフェの座席、三角フレームの中にカフェの店舗が納まっています。
床が高く設定されているので、この様な掘り込まれたスペースもあります。
ガラスカーテンウォール面には、床吹き出しの空調が仕込まれています。
エントランススペースの屋上に登ることができます。

閲覧室

閲覧室も非常に高い天井になっていて、ここも木質系の内装で仕上げています。ガラス面の向こう側は公園なので、視界には緑が拡がりとても居心地の良い空間です。

三層吹き抜けの閲覧コーナー。
ガラス越しに公園の緑が目に入ってきます。

書庫エリア

書庫エリアのデザインは、色が白くなり、ポイントとして天井の計画に特徴を持たせていますね。このエリアは比較的質素な取り扱いになっています。

ライン照明の天井。
ここはルーバー天井にしていますね。
見せ本の書架は、足元が浮いていました。

階段教室

この様な階段教室は、台湾の美術館でもよく見られます。この図書館ではクッションが敷いてあり、とても居心地がよさそうです。

家族連れで来館している人が多いのも特徴ですね。
台湾の図書館では学生さんがたくさん勉強しています。この階段教室でもそのようですね。
三層の吹き抜けをつなぐ、オブジェの様な階段。
手すりはとても厚く20cmはあったでしょうか。手すりの部分も構造的な要素になっているのかもしれません。

さて、この外観の秘密は?

書架棟のとてもシンプルな外観。

この図書館を始めて訪ねたとき、エントランスホールのとてもオシャレな佇まいに対し、書架棟のこの質素さに、これはポイントをエントランスホールにし、その他の部分ではできるだけコストを抑えるように設計したのだろうと思いました。しかし、それは間違いでした。

改めてこの建物のことを調べて分かったことがあります。なんと、この建物はリノベーションされた建物だったのです。既存の図書館部分を残して、一部を減築し階段教室等を作り、建物のエントランス部分は全く新しくデザインして増築したのですね。リノベーションでこれだけ新しい図書館に生まれ変わらせたというのは、なかなか画期的なことだと感心しました。こういう柔軟な考え方も必要な場合があるのですね。何も新しい建物を建てることにこだわることはありません。

屏東縣立圖書館總館のHP

https://www.cultural.pthg.gov.tw/library/Default.aspx

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