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【台湾建築雑観】軽量鉄骨間仕切り/輕隔間牆

軽量鉄骨間仕切りによる内装壁の工事というのは、日本でも台湾でもありますが、その仕様はかなり異なります。その具体的な内容と、理由を考えてみます。

日本の軽量鉄骨間仕切りの仕様

日本の軽量鉄骨間仕切りの仕様は基本的に石膏ボードになっています。性能によって、強化石膏ボードだとか耐水石膏ボードなどがあり、厚さも様々ですが、ほとんどが石膏ボードのバリエーションです。
下に石膏ボードの代表メーカー"吉野石膏"のリンクを貼っておきますが、このメーカーでは、これらの石膏ボードの組み合わせで、異なった性能の壁種、防火区画対応であるとか、遮音性能などの仕様を定め、市場に提供しています。

台湾の軽量鉄骨間仕切りの仕様

台湾にも軽量鉄骨間仕切りはあります。しかし日本でのこの石膏ボードを基本とした仕様にはなっていませんでした。石膏ボードも用いられるのですが、台湾ではそのほかに、珪酸カルシウム板とセメントボードが用いられます。

住宅の場合
住宅の場合は、住戸の隣の区画との戸境壁はRCで作られます。そして住戸ユニット内の壁には厨房以外防火区画性能が必要ないので、比較的簡易な工法で施行されます。それはLGSのスタッドにセメントボードを貼り、中に軽量発泡コンクリートを流し込むというものです。厨房の場合もこの仕様であれば防火区画性能を満足できるので同じ仕様になります。

ホテルの場合
ホテルの場合、客室館の間仕切りは軽量鉄骨間仕切りとなります。その場合の使用もやはり日本とは異なります。
住宅の場合RCで作るため十分な遮音性能を有しますが、ホテルの場合は軽量鉄骨間仕切りのため、表面のボードは2枚貼り、そしてスタッドの中にはグラスウールあるいはロックウールを充填する仕様になります。そして水回りの場合は下地を石膏ボード、表面材をセメントボードとし、そうでないドライな壁は下地を石膏ボード、表面材は珪酸カルシウム板となります。(これは僕の担当した案件がそうであったということで、他の仕様もあるかもしれません)

商業施設の場合
商業施設の場合は日本と同じ様に石膏ボードを主体として間仕切りの仕様が設定されています。多くが防火区画壁になっているので表面は2枚貼り、水回りは表面材がセメント板になっています。

湿度が悪さをする

まず、住宅などで石膏ボードが用いられない理由ですが、これは台湾の室内の壁が素地の上にペンキ仕上げとなるためだと考えられます。台湾では日本の様にクロス貼りで仕上げることはデベロッパーの工事の段階ではありません。RC面はモルタルでならしてペンキの塗装仕上げ、そして軽量鉄骨間仕切りも同様です。
そして、ペンキを塗ったままだと台湾の湿度の高い環境だと、湿気により段々とふやけてきてしまい、表面材としては経年変化に耐えられません。

台湾の消費者の好み

また、台湾ではボードのみの軽量鉄骨間仕切りは好まれません。住宅の建設市場で採用されているのは間仕切りの中に軽量気泡コンクリートを充填する工法です。これも石膏ボードを用いない理由の一つだと考えられます。石膏ボードの中にセメントを流し込むと湿気で内側から湿っけてしまいます。
台湾人が住宅でこの様な仕様を好むのは、デフォルトとしての伝統住宅では、煉瓦造で間仕切りを作っているからだと思います。煉瓦で作られた間仕切り壁は外壁と同じで、密度が高く非常に硬くできています。住宅の壁はこの様であるべきという考えで開発されたのが、セメントボードに軽量気泡コンクリートを充填するという工法なのでしょう。

ホテルと商業施設の場合

上記の住宅の場合と違って、ホテルと商業施設の場合は、軽量気泡コンクリートを充填ということはしていません。これはディベロッパーのコストへの配慮から、そこまでの必要はなし、必要な性能が発揮できれば良いという判断なのだと思います。
また、多くの場合ホテルと商業施設では、軽量鉄骨間仕切りはあくまで下地材であって、表面にクロスを貼ったり,もう一層仕上げのボードが施工されるからです。そのため下地としての性能ががあれば十分と判断されます。

似て非なる軽量鉄骨間仕切りの工法

上に説明した様に、同じ様な軽量鉄骨間仕切りの工法ですが、台湾と日本では微妙にその仕様が異なっています。その理由はよって立つ伝統住宅の工法が異なることから、壁に求められる性能が異なるからだと考えています。


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