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アドリブのイメージ

ジャズのアドリブはその日その時、共演するミュージシャン、演奏する会場、ミュージシャン当人の心持ちなどで、毎回演奏が異なると言われます。このことについて考えることがあるので、僕の今のアドリブに対するメタ・イメージを書いてみます。

ターゲットノート

ジャズを学び始めた頃、ジャズピアノの先生に言われたことがあります。それは「アドリブは途中でどんな音を弾いても構わないんだ。最後に辻褄が合っていればよい。」ということです。

アドリブを学び始めた頃にこんな風に言われ、その後試行錯誤して音使いを研究しています。聞いた当初はそんな無茶苦茶な、と考えていましたが、最近はそれに近い心境になってきています。というのは、音階やコードノートだけに沿って演奏していると、だんだんと紡ぎ出すフレーズが単調になってきて、そこから逸脱したくなります。そのために半音を使ったり、アウトしたトライアドを使ったりし始めます。Dominant 7thに対してAlterd Scaleなどというアイデアは、ルート以外全てアウトしていると言っても過言ではありません。そんな風に考えれば、アドリブの中で、どんな音を出しても、それなりに解釈できる音使いになりそうです。
そして、途中でどんな音を使ってもよいが、どこに着地するかはキチンと押さえておかないといけない。それがキモなのだろうと考えています。そのイメージが、僕には山登りをしている様子に感じられるのです。

ある地点にたどり着いてから次の地点に行くのには、その場所に立ってみないと分からない。その場所から四方八方見回して、次はここに行こうという計画を立てる。ルートの分からない山に入って、コースをその都度判断してハイキングを楽しむ。ジャズのアドリブはこの状態に似ているような気がします。

アドリブフレーズをどの音から始めるか、それも一つの考察になるので、その議論はあとにしますが、ファーストノートからどのように展開していくかは、その時の気分と判断次第というところがあります。上に行こうか、下に行こうか、連打音にしようか、コードノートでアルペジオにしようか、その音形はどうしようか等、行くべき方向は無数にあり、それはその時々の演奏者の状態で、あるいは共演者とのコミュニケーションで定まってきます。

アプローチノート

例えば4小節のアドリブフレーズを考えて、最後にどこに着地するかは、僕の場合4小節めの2拍目くらいにならないと分かりません。そこまできてようやく、具体的にどの音に着地させるか分かる。最後の3ないし4音をどのように組み立てて、ターゲットノートに辿り着くかという判断をします。
その最後の部分の音使いアプローチノートは、いくつかパターンを持っていて、それに当てはまることが多いです。大体において半音音程によるフレーズを使うと上手くいきます。クロマチックによるアプローチですね。

フレーズ

最終的なゴールをターゲットノートとして定めますが、その途中にいくつものサブターゲットを持っておくと、フレーズの作り方にフィット感が得られます。コードにマッチしているフレーズに聞こえてきます。
しかし、コードノートだけでアドリブをしていると、それはアルペジオとその変形くらいにしか聞こえず、フレーズっぽくなりませんね。そこを脱皮するのが難しいことの様に思います。

ですので、僕の場合、アドリブフレーズを考える時には、大きな流れと途中に組み込むコードノート、そして最後のターゲットノート。これくらいを定めて、途中の部分は余り深く考えず、気分次第で弾いています。

ファーストノート

最後にアドリブフレーズをどこから始めるかを書いておきます。

これは、スタンダードの曲をたくさん分析し、コードに対してメロディーのメインの音がどこから始まっているかを、自分なりに分析すると良いと思います。
例えば、"枯葉"だったら3度、"イパネマの娘"だったら9度など。多くの楽曲がメロディーを、3度、5度、9度などを主要な音として使っていると思います。それをとりあえずのスタートにするか、或いは敢えて、♯11thを使ってみるとか、♭9thを使ってみるとかですね。逆にルート音から始めるという場合もないことはありません。
曲調と、長調か短調かなどによって選択肢は限られてくると思いますが、定番の音、定番外しの音などをその時々で使っています。

合歡山

因みに、カバーに使っているのは、台湾の合歡山の山頂辺りから見た風景です。標高3,400m内外の尾根が連なっています。
台湾ではこんな山登りをよくしているので、アドリブに対してこんなイメージが湧いたということですね。

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