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【流儀】「それってCoolだよね!」という感覚を大切にしたい

感性への理解が浅いことで生まれる弊害

日々の仕事で無料の写真やイラスト素材を提供しているウェブサイトを利用する方は少なくないと思われますが、社外の方に見せる物において、私は無料のものは一切使いません。なぜなら、無料のものだとチープさが出てしまい、それが結果的に説得力の欠如やブランドの毀損へとつながってしまうからです。

基本的には現場の様子がわかるリアルで質の良い写真をはじめに用意しますが、それがむずかしい場合には有料の写真やイラストを購入し、クリエイティブのクオリティ維持・向上を図ります。過去の経験から、どんなに良い商品・サービスでも伝え方が悪いとターゲットにまったく響かないことを肌で感じているので、最低限としてそこまでやります。

感性とは、様々なものを見たり聞いたりしたときに感じる心の動きや働きのことですが、地方の事業者ほど商品やサービスだけに限らず職場環境などにおいても、感性に対する理解がおざなりになっているように感じます。そのような会社では、お客様や求職者からは選ばれず、従業員もどこか上の空で働いているように思えます。

自らコモディティ化してしまう人々

自社の強みを打ち出し、他社と差別化を図ることが企業を生存させることだと多くの経営者は頭ではわかっていますが、経費削減なのか価値に気づいていないのか、それでもなおクリエイティブにお金をかけようとせず、無料素材を使っている介護事業者のウェブサイトをよく見かけます。

とても不思議なのですが、同業者との“違い”を出そうとせず、みんなが使う素材を使ってなぜか同化しようと考えてしまうのです。事業戦略からするとこれは真逆の発想で非常に危険だと思うのですが、このような考えの背景には、「みんなと一緒じゃなきゃダメ」という学校教育の影響が強く残っているのではと個人的に感じています。

さらに、そのような事業者ほどリクルートメントの際に「若い人に来てほしい」と言うのですが、いつの時代のものかと言いたくなるようなウェブサイトやありきたりなパンフレットでは若者に見向きもされないのは言うまでもありません。若者が仕事を探すときにどのような行動を取るかなんて想像に難くないはずなのにです。

小手先だけのデザインはNG

そうかといって、写真やイラストを無料のものから有料のものへとただ入れ替えれば良いという話ではありません。場当たり的な小手先のデザインでは意図も簡単に見る側に見抜かれてしまいます。ビジョンやコンセプトなど企業としての根本的な考えがないものには違和感を感じてしまい、そこからクオリティの高いものは生まれないからです。

どのようなビジョンを掲げていてどんなコンセプトを有し、そこではどんな働き方をするのかなど、企業としての価値観をしっかりと持っているからこそ、そこからようやくクオリティの高いアウトプットにつながるのです。加えて最近では、環境への取り組みや考えも示さなければ若者には刺さりません。

ですから、まずは経営者の熟考を重ねた考えがしっかりとあって、それをデザイナーなどがヒアリングし上手く汲み取って、言語化やデザインなどにしていくことが望ましいと考えます(もちろん、自らできる経営者の方もいると思います)。そして、この次の作業として従業員にしっかりと考えを浸透させていきます。

浸透させる作業はとても時間がかかるかもしれませんが、内部で統一されていないまま外部に出してしまうと、社内が混乱して整理がつかなくなってしまいますので、情報の開示には十分に気をつけなければなりません。

クリエイティブにもお金をかける

一見すると、デザインは誰にでもできるように見えます。事実、ソフトウェアの操作さえ知っていればできてしまいますので、コストをかけたくないという気持ちから社内の人材でやろうと考えてしまいがちです。その場合、そこで生まれるのはクオリティの低いものばかりでどうにもならず、最終的には中途半端な形で諦めることになります。

ですから、スキルやセンスのある人材が社内におらず内製化できないなら、まずは“餅は餅屋”としてプロのデザイナーに任せるべきなのです。変にお金をケチらないで、クリエイティブにきちんとお金をかけると想像以上の物が仕上がってきます。クオリティが高いと色んなところでその効果を実感できるはずです。

経営者自身が感性の大切さをきちんとわかっていることが重要であって、むしろ、客観的に見れる人の方がより人に伝わるようアウトプットできます。最も恐ろしいのは、経営者が自分のセンスの無さに気づかず、細かなことまで干渉してくることです。一度、任せたならその人に任せきることも非常に大事なのです。

ちなみに、デザイナーにも素人に毛が生えた程度から商業レベルで確実に良いものを生み出せる人まで幅広くいます。私の感覚では、実力のあるデザイナーほど忙しく、紹介がなくては出会うことすらむずかしい気がします。ですから、デザイナーに依頼するときは一人目に安易に頼まず、何人かと会ってその人たちの過去の実績を見て、自分のイメージに近づけるかどうかを見極める必要があります。

日常にある違和感を意識する

感性は何か一生懸命に努力して磨かれるものではなく、遊びによって、感性は磨かれるものだと思っています。行ったことがない場所に行ったり、何か創作してみたり、本物や一流と呼ばれるモノやサービスに触れてみたりすることで、誰でも磨くことができます。好奇心が感性を磨き、想像力を育てるのだと考えています。

また、感性を磨くためには日常にある“違和感”をしっかりと意識することも大事です。「なんか嫌だな」「ちょっと微妙だな」「変に疲れるな」と普段の生活からそう感じることは誰にでもあります。私の場合だと、「長テーブルとパイプ椅子があるだけの会議室」や「地味で何の主張もないユニフォーム」、「続けることが目的になっている朝礼」などに昔は違和感を感じていました。

ですから、今の私たちの事務所には「木のぬくもりが感じられ癒されるテーブルと椅子」がありますし、「デザイン性の高い企業ロゴのオリジナルTシャツ」を作るなどして仕事に取り組む際の気分を上げています。朝礼なんて一度もやったことがありません(笑)。楽しさやおもしろさ、美しさ、格好良さを意識して日常に取り入れているのです。

たったこれだけのことでもモチベーションは上がりますし、スタッフが日々を楽しく働くことができれば、それを見た利用者さんや入社希望者は徐々に集まってくるはずです。単純なことですが楽しい場所に人は集まってきます。どうやったら楽しく過ごせるか、どんな振る舞いが美しく感じるか、どう魅せたらかっこいいと感じてもらえるのかなど、企業のビジョンやコンセプトなどを踏まえて従業員と考えていくことが、とても“Cool”なことだと思っています。


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