新曲レポート「カノカ」
7/11に投稿したボカロ音楽新曲、「カノカ」の制作レポートです。
曲制作の概要
6月に頒布を開始したGUMI & ついなちゃんアルバム「初花」の収録曲としては、一番最後に書き下ろした作品となりました。
「ついなちゃんの明るく澄んだ声に、似合う曲はなんだろう」と考えたときに、「ガールズロック」というキーワードがありました。この曲は、まさに王道ガールズロックに極振りした、ポジティブな曲を作ろうと制作したものです。
課題としていたこと
「カノカ」という言葉はマルチミーニングな造語です(なお、イントネーションは「カ↑ノ↓カ↑」です)。色々な想いをこの言葉に込めています。心の中に描いた澄んだ景色を、そのまま書き出して届けたかったのです。
シンプルなギターロックです。そのシンプルさの中で印象に残るよう、歌いやすい隙間の多いメロディと、さらっと聴き流せる曲時間、目に見えるような景色としての曲のアレンジを心がけました。ふわふわとした音を混ぜる一方で勢いを感じさせるリズムアレンジを心がけたりと、気を使った点は多いです。
イントロ・アウトロなしの構成も工夫した点です。そのため、1番と2番の間奏で初めてインスト部分が出現します。ここも印象的な部分ですので、綺麗なコーラスワークを添えました。曲の終わりはアウトロなしなので、大サビの余韻を残しつつ曲頭のメロディを持ってきて終止させています。
歌詞(下記リンク参照)もテーマとした澄んだ景色を描けるように、言葉のチョイスに気を使いました。相手に語りかけるような、優しい言葉遣いが今回の注目点です。「ぐるぐる」とか「くしゃくしゃ」とか、感覚的ですが心模様を描くのにうってつけな言葉は、もっともっと使いこなせるようになりたいところです。
自己評価
王道の体現
王道は書いていて聴いていて、とても気持ちいいものですね。
爽快なボカロックは、僕がボカロを聴き始めた頃に、それほど有名でなかったボカロPさん達のGUMIさん歌唱作品達でたくさん聴き込みました。あの頃に心に残った知る人ぞ知る曲達は、未だ僕の憧れだったりします。
そうした憧れと、今の時代に提示できるロックを組み合わせてアウトプットすることができたと感じています。
「YouTube」での「数字」
ニコニコの長期メンテナンス中ということもあり、YouTubeとbilibiliへの投稿でした。YouTubeでの再生数は投稿1週間で100。これを少ないと見做すかどうかですが、全曲巡回勢のいないYouTubeにおいては、この100というのが最初の関門となるラインだと思っており、その数字に到達できたわけです。
また6月から頒布を開始したアルバム「初花」が2回の即売会で既に数十枚売れていることもあり、実際に「カノカ」を耳にした方はもっと多いのではないかと思っています。
それと先日見かけたのですが、著名なボカロリスナーである御丹宮くるみさんのツイートで、「30再生と1200再生の差が『AIのおすすめにたまたま引っかかったかどうか』しか見出せなくて」と書いてありました。
ツイートの趣旨とは異なりますが、「1000前後まではたまたまの誤差の範疇」であるならば、(普段の再生数もその範囲に収まっていることもあり)100という数字をわざわざネガティブに捉える必要はないだろうと感じています。「高評価」は普段レベルの数字がついていますしね。
(もちろん、いつかはこの「誤差」から脱出して、5000再生や1万再生を目指す時も来るとは思っています)
ついなちゃんの声を生かす
今年、この曲を含めて3曲をついなちゃんの歌唱で書きました。
僕のライブラリにはいないタイプの高い澄んだ声で、瑞々しさの表現にはうってつけだと感じています。近いタイプの声を持っているのは初音ミクだと思いますが、ミクにはない柔らかさも魅力の1つです。
「そうした声の魅力を生かせる曲を」と作った、爽やか王道ロックや声質の異なるGUMIさんとのデュエット、自身初となる和ロックへの挑戦などは非常に面白かったです。
この3曲でついなちゃんを初めて知り、「とてもかわいい歌声を持ったキャラクターですね」と感想を寄せてくれた方も何人もいらっしゃいました。「その合成音声キャラを知るきっかけになった」というのは、ボカロP冥利に尽きるとここ数年強く感じています。
今の本業はflowerのメタルですが、このような寄り道もまた自分の可能性を広げてくれる機会として今後も大事にしていきたいと思います。
執筆者プロフィール
メタル&ロック系ボカロ曲制作者。人の内なる成長や希望を、メタルやロックをベースとした音楽で表現することを目指しています。
2013年活動開始、年10回前後の合成音声系即売会へ参加、11枚のアルバムをリリース。
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