メロディ

忙しい仕事、長いトンネル。ダークサイドに落ち込みそうな精神の葛藤。本当に苦しい一ヶ月半くらいの日々だった。こんな事は珍しい。いつだってノー天気に笑い飛ばせた。今回はダメだった。まともに人生の意味まで疑うくらいの重たい自問自答の暗闇の中から抜けだせないまま、もがいた。人の言葉を聞く余裕もないほどに疲れてそして眠る事さえ辛いと感じた。孤独。猜疑。虚脱。もう、打つ手はない様な気がした。何もする気にならず、つけっぱなしのテレビをぼおっと観ていた。画面を観ているようで、おそらく何も観ていなかった。音を聴いているようで、何も聴こえてこなかった。昨晩も同じように、いつかのwowowの録画を垂れ流し、思考回路は停止し、死にかけたナマケモノのようにソファの上に存在していた。

ある瞬間、モノクロームだった視界に色が生まれ、何も聴こえなかった音が聴こえてきた。

土砂降りの雨の中で、桑田佳祐が歌っている。昔よく聴いた「メロディ」。少し自分を想い出す。音楽だ。大好きな。そのコンサートは降りしきる雨の中で行われていた。観客が泣いているように見える。事実泣いている人もいた。

桑田佳祐はメンタルな部分で繊細な人だと思う。アーティストはそうだ。巨大過ぎる何かを引き受けてしまった人の精神はいつも誰にも理解されず彷徨っている。雨の中で歌いつづける彼の姿に唐突に郷愁を感じ、いつの時代も傍らにあった、彼の創った音楽を感じた。不意に涙が頬を伝い、心に何かが満たされるのを感じる。ようやく眠りにつけるような気がする。

自分自信が行方不明になりそうな時に、深い深い霧の中にいる時に、商業主義にまみれた音楽ではあっても確かに胸に響いた。エルトン・ジョンがどんなにお金を稼いでも「ユアソング」が名曲である事にはかわりはない。

迷う事もある。でも道はあるさ。どちらかに歩け。

いつか雨も降りあきるだろう。いつか風も止むだろう。

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