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AIの特許を書く意味

大学や前職はハードウェアや物理的な物事を扱うからわかりやすかったが
現職のソフトウェア、特にAI関係では、特許が本来の存在意義で用いられないような気がしている

まず、発明者と企業側のメリット・デメリットを見ていく

発明者のメリット

  • 売上に対して特許使用料がつき、小銭稼ぎになる※ある程度社員のいる技術系の会社は、特許権の利用料はいくら、という風に社内規程で定めている場合がある

会社のメリット

  • その技術を他社が使うことの抑止力になる

  • 技術の利用料を他社に請求でき、利益になる


発明者のデメリット

  • 特許の執筆に労力がかかる

会社のデメリット

  • 特許の明細書作成や手続きコスト(人件費、委託費)

  • 更新コスト

  • 技術が公開される

  • 特許侵害のチェックが面倒

  • 侵害の訴訟が面倒

見てわかる通り特許出願は結構面倒なことが多い
それでも企業が特許を書こうとするのは、他社の抑止力になるというメリットが時には非常に大きくなるからである

もしくは、自組織のアイデアを共同研究などで他組織とシェアするときに、技術を一方的にパクられて製品化されるのを防ぎたいというモチベーションがある
具体的には、大学などのうち社会実装意識の高いグループは、先に特許を書いてから企業に話を持っていき、製品化して売れたら特許使用料としてロイヤリティが入るように交渉する

自組織が自らのアイデアを製品化する立場の場合は、抑止力メリット頼みとなるわけだが
ソフトウェアの特許の場合は以下の理由で抑止力が利かないことがよくある

新規性が低い場合がある

特許執筆時に新しい思った技術も、技術革新が早い業界では
特許が公開される頃には陳腐化している可能性がある
陳腐化した技術について特許侵害を訴えても、「容易な発明である」として主張は否決されるだろう
AIの領域は特にこのパターンに陥りやすい

監視性が低い場合が多い

特許侵害を訴えるときには、相手が自組織の特許と同じ手法を使用したことを証明できなければならない
しかし、他社のソフトウェアのプログラムの中身を確認できる機会は少ない
特に学習モデルの構造を覗ける機会は非常に少ない
特に、クラウドサービスとして提供される場合は、ローカルのコンピュータにソフトがインストールされないのでなおさら解析が困難になる
また業界構造上、医療ソフトウェアは、他社の製品を簡単に触ることができない
以上のことから、正当に特許侵害を主張することはかなり困難であり
となれば他組織はその特許を模倣し放題となる

こうなると、一部の例外を除けば企業側でAIソフトウェアの特許を出すのは非常にナンセンスなことだが

一方で発明者個人にとっては、会社からお小遣いをもらえる可能性があるので、やる気になっちゃう場合がある
これは完全に、個別最適に走って全体最適に意識が向いてない行為と言える

うまく全体最適に持っていくとすれば

「特許書かないであげるから、給料上げて
「もらえるはずの特許使用料分だけ給料上げるから、特許書かないで」
と発明者もしくは会社側から申し出ることである

これだけで、お互いの手間とコストが激減する
※会社で特許を保有するには年間平均100万円近くかかるそうです

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