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絶対に挫折しない! 医療者のためのプログラミング連載講座 Part. 6


こんにちは!
BeatFit エンジニアの飯塚です。

総論編は、ついに、ラストを迎えました。
これまでを振り返りますと


第1回で、
複利思考が大事!



第2回で、
プログラミングはスポーツである!



第3回で、
暗記ではなく、二次記憶を有効活用しよう!
プログラミングの学習は、基礎と応用どちらからでも
大丈夫!



第4回で、
守破離が大事!
初心者は、誰かすごい人の真似をしよう!


第5回
学習のピラミッドを意識しよう!

 
と学びました。
総論編の次は、マインドセット編に移ります。


マインドセット編が終わったら、React Native というフレームワークで、実際に一緒にアプリを作っていきます。楽しみにしててくださいね!


なお、総論編 + マインドセット編 (+ 各論編) の内容を 
一度に全部知りたい方は、こちらをご覧ください!


対象となる読者

・プログラミングをこれから始めよう!と思っている「未経験者」の方。
・プログラミングを始めたけど、勉強につまずいている「初級者」の方。

本連載は、吉岡さん、はよんさんとの共同連載です。


この記事の方針


この記事はあくまで入門記事なので、100%正しい複雑な解説よりも、そこそこ正確でわかりやすい表現 を重視します。

難解なIT 用語はなるべく使わず (医学用語はバンバン出します 笑)
具体例を出しながら、イメージできることを最優先事項とします。挫折することなく、楽しく、効率的に最速で習得できる手順をお伝えします。


この記事で学ぶこと

・ダニング・クルーガー効果を理解して、来たる衝撃に備えよう!

では、始めます!



とある日の出来事・・・

 Twitter を眺めていると
突然、こんなタイムラインが、流れてきました。
 


確かに、最近 noteで、こういうの販売している人いるな〜
違法薬物で最近捕まった、高額オンラインサロン株トレーダーもいたな〜
騙されちゃいけないよな〜
素人の発言を、鵜呑みにしちゃ危険だな。


あのプルシェンコも
ワタシ、スケートチョットダケデキル」 
とか言ってたし


しかも、謎に、このTシャツ売られてるし


IT業界では、Linux を生み出した、リーナス・トーバルズさんも、こんなのきてるし
 


最近では
とあるブロガーが Twitter で

Firebase  (Googleが提供する、アプリやWebをすごく簡単に開発することができるやつ)  があれば、サーバーサイドエンジニアは不要だ!


と言って、世間を騒がせてるし



もう、何が何だかよくわからないですね・・・
ふと思いました、この現象って、何ていうんだろう?
色々調べていくうちに、
エンジニア界での、不思議な言い回しを見つけました。




〇〇、完全に理解した

は、まだ何もわかっていないのと同じになるみたいです。


できる人は、全くわからんと自信なさげに発言し、
全くできない人は、逆に、 完全に理解した!と自信満々に発言するという
真逆の現象が起きているようです。



この現象を、哲学と科学の方面から、考察していきたいと思います。
(もはやプログラミングの話じゃNe...)
  


無知の知とは?

古代ギリシャの哲学者、アリストテレスが言った有名な格言があります。


私は、ただ一つのことを知っている。
それは、私が何も知らないということだ。

真の知への探求は、
まず、自分が無知であることを知ることから始まる。

 

深いですね。


自分はなんでも知っているよ!っていうマインドセットになると、貪欲に知識を吸収する活力が消え、知的に怠惰になります。

自分が知らない知識に出くわすと、その知識はおかしい!知らない自分は間違っていない!と正当化し、全く耳を貸さなくるんですよね。


こちらの本によると、 



人は、達人になるまでに、以下の4つのステージを経験するそうです。

① 知らないことを知らない

② 知らないことを知っている

③ 知っていることを知っている

④ 知っていることを知らない


①は、「知らない」ということすら「知らない」訳で、このステージでは、学びへの欲求や必要性は生まれてきません。多くの「知者」と言われる人は、「知ったかぶり」をしているだけで、本当は、「知らないことを知らない」状態にある、ということになります。
(医療者で自分をIT有識者だと思ってる方。私たちと一緒に、真剣にITと向き合い、プログラミングの勉強を始めてみませんか?)


②は、「知らないことを知っている」という状態であり、ここで初めて、学びへの欲求や必要性が生まれ、動きはじめます。
(医療者でプログラミングを始められた方、頑張りましょうね!)


③は、「知っていることを知っている」という状態です。学習や経験を重ねることで、自分が知っているということに、意識的になっているという状態です。
(多分、プログラミングを始めて半年 - 1年くらい経つと、この領域に辿りつきます。デジハリの医療者の皆さん、一緒に頑張りましょうね!)


そして、最後、④になります。「知っていることを知らない(忘れている)」という、達人になると、いちいち意識をしなくても、勝手に自分の体が反応してしまう状態になります。
(エンジニアの皆さん、プログラミングの達人を目指して、頑張っていきましょうね!)
  

さすが、哲学者。
大変わかりやすい解説を有難うございます。
今度はこの現象を、科学の面から検証したいと思います。



ダニング=クルーガー効果  


1999年、Justin Kruger, David Dunningは、Journal of Personality and Social Psychology へ、論文を発表しました。


45 人のCornel 大学の心理学を受講している学生を対象に、課外授業として
「これから論理的思考力をみるテストをするよ!」と伝えました。


生徒は、20項目からなるLSAT (米国法科大学院適性試験) と言われる、アメリカの法科大学院に出願するために必要となる試験を受け、試験終了後、彼らに 以下の3つの質問をしました。

1.  他の生徒と比べて、自分の能力は高いか?低いか?
2.  自分のテストの点数は、他の生徒の点数と比べて、どうか?
3.  自分は、何問正解したか?


いきなりですが、結果をご覧ください。
下の図の一番左 (点数が、下位4分の1の集団) に注目してみましょう。


黒丸が、実際のテストの点数で
黒四角と黒三角が、自分の実力とテストの点数をどう自己評価しているか
になります。ご覧の通り、一番点数が低かった生徒たちは、他のどの集団よりも、最も自分の実力を過大評価していたことがわかりました。

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次に、中くらいの成績の集団を見ていきましょう。

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折れ線グラフは、一回、下にへっこみます。
黒丸と、黒四角三角がほぼ同じ位置にいることから、この集団では
テストの点数と自己評価が適切に判断されていることがわかります。

一番成績が悪い集団よりも、縦軸の自己評価が低くなっていることは、注目すべきポイントでしょう。


では、最も成績が高い集団はどうでしょうか?

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テストの点数と、自己評価が逆転していることがわかります。
既出の表現を使えば
④の 「知っていることを知らない」
科学的に検証されたことになるかもしれません。


大変興味深い 1999年の論文であり、この現象はその後、ダニング=クルーガー効果と呼ばれるようになります。


ではこの効果を、プログラミングに応用してみましょう。

ああ2


何かを新しく始めるときに、私達は、Progate のようなサービスや、公式チュートリアルから勉強をはじめます。今のご時世、たくさんの素晴らしい教材が揃っており、初心者にとって、何をどう勉強したらよいかを、これらが手取り足取り教えてくれます。チュートリアル通りちゃんと勉強を進めれば、つまずく確率は小さくなるわけです。


そして、頑張って、チュートリアルを完走すると、その達成感や自分の成長度合に満足し、やがて根拠のない自信が生まれてきます。


やばい、俺、〇〇 完全に理解した・・・


 Twitrer  で 私のように、こうつぶやく アホも出てくることでしょう。
しかし残念ながら、その自己評価は完全に間違ってます。まだまだ実力も経験も、圧倒的に不足しています。


しかし、あたかも自信満々に発信するこの初心者を見て、
「なんかこの人、すごい!説得力あるわ!」
「この人だったら、一生ついていくぜ!

という、不健全な現象があちこちでまき起こってます。


これが、プログラミングに限定しているのであればまだいいですが、冒頭で出てきた株の話だったり、お金の話だったり、医療の話だったり(反ワクチンとか特にそうですね)だったり、色んな分野で起きてます。騙されないように、しっかり勉強して1次情報に当たって、ソースを確認して、インフルエンサーの発言や自信満々な人の発言ではなく、しっかり自分の頭で判断できるようになってくると良いですよね。


話は戻ります。
プログラミング勉強者が、この勘違い時期を脱すると、どうなるか。
もう一度グラフを見てみましょう。
  

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この時期になると、そのみなぎあふれる自信は、完全に打ち砕かれます。
そして、己の圧倒的未熟さを痛感することになります。
具体的には、チュートリアルで勉強した技術が、全く役に立たないとわかり、焦るのです。いざ、自分のアプリやサービスの開発をしようとすると、そのあまりのできなさに、精神はボロボロになります。

この事実を、この記事で、お伝えしたかったんです。


プログラミングを挫折するのって、この時期が一番多いんです。
いざ、チュートリアルを離れると、何をしたらよいのか、全くわからなくなります。最初はビート板で先生と一緒に、プールで安全に泳ぐ練習をしていたのですが、ある日突然、広い海の真ん中にポツンと投げ出され、とりあえず泳げと言われたかのように感じることでしょう。独学で勉強をしていると、その孤独さと自分の能力の低さへの自覚の芽生えから、すっかり自信を無くしてしまい、精神的にも非常に辛い時期を迎えてしまうかもしれません。



ですが、安心してください。


あなたの、実力や知識、経験は、以前より確実に増えています。
確かに、自分に自信が持てず、能力が低い自分を、悔しい、情けないと思うかもしれません。


でも、大丈夫です。精神的に落ち込むのは、あなたがちゃんと勉強をして、「知らないことを知っている」状況になった証拠です。
辛いのは、誰もが一度は必ず通る道なんです。



複利を意識して、守破離を守って、学習のピラミッドを意識して
暗記ではなく、2次記憶を有効活用して、プログラミングを暗記ではなく、手で覚えて。



ちゃんと毎日基本を繰り返すことで、必ずプログラミングは身につきます。


医療現場の課題を解決するのは、他でもない、あなたです。
一緒に頑張っていきましょうね。


精神的に辛い時期を乗り越え、中級者になりますと


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・コードを見て、何が間違っているか
・どんなコードが美しいか


がわかってくるようになります。
(ただ、独学の方はプロダクトが動くようになる、で十分だと思います。)
実際の開発現場で、すごいエンジニアさんのコードを見て、コードレビューを受けて、実際にコードを修正して、書いてを繰り返して、だんだん自分が、「知っていることを、知っている」という状態になります。


そして、さらに鍛練を重ねると、いつの日にか
 

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達人の領域に近づいていきます。
あの時、実力もないのに、なんであんなに自信満々だったんだろ?
自分はまだまだだな、もっと頑張らなくては。
〇〇はチョットデキル、けど、一生勉強が必要だ。


という
「知っていることを、知らない」 という次元に、到達するでしょう。 



まとめ 


・初学者ほど、自分の実力を過大評価する

・自信満々に発信している人を、一回疑う気持ちを持とう。

・プログラミングの学習を続けると、必ず一度は、とてつもない自信の喪失がくる。精神的に参ってしまうかもしれない。

でもこれは、ちゃんとあなたが、上達している証。

・毎日勉強を続けていれば、いつしか、チョットできるようになる。

・謙虚な気持ちを忘れず、目の前の課題に集中して

・プログラミングで医療現場を変えよう。


ここまで、お読みくださいまして、誠に有難うございました。
総論編はこれでおしまいです。
プログラミング、完全に理解しましたでしょうか?



( ゚д゚)



どの分野もそうですが、一生勉強が必要ですね。
では、次回から、プログラミングに必要なマインドセットのお話をします。
それでは、また〜

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