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<エッセイ> Distance

運送会社のN社に勤めている友人が居るのだが、時々面白い話を聞く。

その友人が勤めているN社の支店は、帯広市にある。そこは全国から送られてくる北海道東部及び北部(道東と道北)向けの荷物を集約するとても大きなターミナルだ。 そこで事務をやっている彼から聞いたところによると、本州各地の支店から来る電話に対応していると、本州の人々と、北海道の人々の距離感の差を感じるという。

誤配の荷物、例えば仙台へ行くはずだった荷物がこちらまで来てしまい、それを送り戻す手配の際に、向こうの係の方が「陸送でお願いします」と言う。よく話を聞くと、その担当の人は青函トンネルを通って青森~盛岡~仙台が最短のルートだと思っているらしい。「青函トンネルは車では走り抜けることが出来ない」という事を知らないようなのだという。ターミナルのある帯広から仙台まで、最短で荷物を送るには空輸しかないという事を知らないのだ。

あるいは向こうの不手際で函館へ行く荷物が帯広に届いてしまい、それを函館へ転送して欲しいという連絡が入る。

「○○時までに届けて欲しいんですが」

と言われて時計を見ると、もう2~3時間しか無かったりするという。十勝の帯広から函館まで車で7~8時間はかかるということを理解できないらしい。


北海道は本州の人々が思っている以上にでかい。

ちなみに僕の住んでいる十勝地方は北から南に縦断するのに車で4時間、横断するのに2時間はかかる。この行政区だけで、本州の中小のサイズの県が二つくらい入ってしまうほどの面積を持っている。もし函館でフェリーを降り、東端の根室半島まで車で行くとすれば、12時間はかかってしまうだろう。

広大な北海道に住んでいる我々は、車で片道2時間や3時間の距離は日帰り圏内でもある。帯広から札幌に車で行くには2.5時間はかかるのだが、早朝に出発し夜遅く帰ってくる旅程なら、十分ショッピングを楽しんでくることもできる。例えば目的地まで30キロ、50キロというのは、自分の庭の様な感覚だ。すぐに行って帰って来られるイメージがある。そんな話を本州の友人に話すと、皆驚く。

人間の距離感というのは面白い。
住んでいる場所で、その感覚は大いに変わる。
交通に要する時間の感覚までも土地柄が出る。

先日ひょんな事から、オーストラリアのパースから来た青年と話すことができた。

「シドニーからパースまで飛行機でどの位かかるの?」と聞いた。

彼の答えを聞いてぶったまげた。
「6時間半」だそうである。

考えてみれば大陸のオーストラリアの西と東を結ぶのだから当然かもしれないが、国内線で「6時間半」という感覚には、特に僕たち日本人は疎い。せいぜい2-3時間かと思っていたのだが。

驚いている僕を彼は怪訝な顔で眺め「Why?」と聞いてきた。

「日本で6時間半も飛行すれば、ハワイまで行っちまうからだよ」

と僕は答えた。

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