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今週のモバイルアプリ関連ニュースまとめ Vol.3(2/14週) | Weekly Mobile Update

今週の注目ニュース

Google 広告識別子”ADID”廃止の方向性を表明

Googleは広告識別子”ADID”の廃止の方向性を表明し、代替スキームである「Privacy Sandbox」のAndroidへの導入を発表した。

昨年の6月にAndroidでのLAT(Limited Ad Tracking)の適用予告・スケジュールがひっそりと掲載されていたが、予想よりも早く実現に向けた具体的なスキームとして「Privacy Sandbox」が発表された。

「Privacy Sandbox」は元々ウェブ側でのCookie廃止の代替技術として提唱されたものであり、モバイルアプリ側にも導入されることで、サードパーティアプリにユーザー情報をシェアせず、ユーザーを識別することなく効果計測を行うスキームになっている。

既存のADIDによる計測手法の使用は新スキーム置き換わりまでの最低"2年間"は可能になっており、AppleのATT(App Tracking Transparency)の猶予が1年であったのと比較すると緩いが、アプリマーケターは注視が必要なトピックだ。

Tinder vs Bumble マッチングアプリ市場を制すのは

SensorTowerのレポートによると、Tinder・Bumble・Hingeの2022年1月の月間アクティブユーザーは、2019年1月と比較して17%増加した。

MAUの構成比で見ると、依然Tinderが圧倒的なシェアを誇っているものの、その差はBumble・Hingeによりじわじわと縮められている。

個別のMAU成長率で見ても、Tinderは2019年1月比較で-1%成長、特にこの1年間は常にマイナス成長であるのに対して、Bumbleは一定母数がいながらも+96成長と2倍近く数値を伸ばしてきている状態。

Bumbleはちょうど先週、IPO以来同社初となる買収として、フランスを中心にZ世代から特に人気を集めるマッチングアプリである「Fruitz」を自社に引き込んでいる。

一方のTinderは、近年のマッチングアプリ市場の大きなトレンドである「マッチングアプリ疲れ」への対応として「Blind Date」機能のリリースを発表している。

依然大きな市場シェアを持ちながらも徐々に勢いを失いつつあるTinder、今後のマッチングアプリ市場を誰がどの程度のスパンで取るのかは注目だ。

本ニュースをより詳細に考察したポッドキャストエピソードはこちらから。

Super Bowlの広告キャンペーンにより仮想通貨アプリのDL数が急増

NFTの祭典である”Super Bowl”は毎年全米視聴率が40%をも超えることもあり、毎年多くの企業の広告キャンペーンが注目される。(Quibiの広告キャンペーンは別の意味で注目が集まったが…)

今年は、仮想通貨アプリである「Coinbase」の1分間の間QRコードのみを表示し続ける斬新なキャンペーンが大きな話題を呼んだが、その影響もありCoinbaseを含む仮想通貨アプリのDL数が急増をした。

SensorTowerのデータによると、Super Bowl期間に広告を出したブランドのアプリDL数成長率上位5つのアプリのうち、上位3つは仮想通貨アプリであった。

この影響もあり、Coinbaseのアプリは、AppStoreの全体ランキングで186位から2位に躍り出た。
一方で、Oculusは25%のDL数成長があったものの、全体ランキングでは102位から100位に上昇と実際のDL数獲得には繋げることができなかった。

Coinbaseの突出したDL数増加は、QRコードを読み込んだ先での登録完了により手に入る15ドルプレゼントのインセンティブが効いたと考えられ、実際アクセス集中によりWebサイトはクラッシュに至った。

Coinbaseは1分間の本CMに1400万ドルを費やしたとされており、果たして今回のクラッシュが本当に想定外だったのか、それとも損益分岐点を考慮した先着順に設計していたのかは個人的に非常に気になる部分ではある。

Microsoft 真に開かれたユニバーサルなアプリストアの構築意思を表明

先日、ゲーム業界過去最大の687億ドルで”Activision Blizard”の買収を発表したMicrosoftが、今後のアプリストアの構想として、真に開かれたユニバーサルなアプリストアの構築意思として「OpenApp Store Principles」表明した。

現在”Activision Blizard”の買収は規制当局により審議中であり、今回の「OpenApp Store Principles」表明の主な目的は、上記買収を進めるための交渉武器であると考えられる。

実際Apple・Googleでも議論にあがる、サードパーティ決済手段の容認可否に関しては、現状は不可としており、「いつか」はMicrosoftアプリストア内でも容認をする予定と述べており、今回の方針はリップサービス的である感は否めない。

Microsoftは今回の”Activision Blizard”買収も含めクロスプラットフォームのゲーム体験・アプリ体験の提供を進めており、2月16日にはWindows11上でAndroidアプリを実行可能にするテストを開始した。
この実行可能にしたのはAmazonとの提携であり、アプリはAmazon App Store経由でダウンロードが可能になっている。

かつてWindowsPhone・FirePhoneの惨敗により辛酸を舐めたMicrosoft・Amazonがタッグを組んで、ネットワーク効果が物を言うプラットフォーム・OS領域でどこまでApple・Googleの牙城を崩せるかは注目だ。

Android13 開発者向けの最初のバージョンをリリース

Googleは2月10日に、”Android13”の最初の開発者向けバージョンをリリースした。
今回のアップデートにおいてアプリマーケターが注目するべき機能は、①「Material You」によるモノクロアプリアイコン・②アプリごとの言語設定の2つ。

①の「Material You」機能では、機能を有効にしたユーザー向けにモノクロのアプリアイコンの提供が必要となる。カラーを多用していたり、色がないと意味が分からないようなアイコンを採用している開発者は、今後はモノクロで表示される際に意味が伝わるか、競合アプリと見た目の差別化ができているかを意識する必要が出てくるだろう。
本機能は最初期はPixel端末のみを対象にリリースされるが、今後他のデバイスでも利用できるように拡張されていく予定。

②アプリごとの言語設定では、ユーザーの端末の言語設定とは別に、アプリ独自の言語設定が可能になる。

前バージョンのAndroid12の正式版は2021年10月にリリースされたが、Android13の正式版は2022年7月の安定性検証の後にリリースされる予定。

Uber 2021年売上はデリバリー事業が旅客事業を上回る

Uberの2021年の旅客事業の売上をデリバリー事業のそれが上回った。

具体的には、2020年の旅客事業売上は約60億ドル・デリバリー事業売上は約38億ドルだったのに対して、2021年は旅客事業が75億ドル(YoY150%)・デリバリー事業は83億ドル(YoY218%)と、デリバリー事業が大きく成長した形となった。

背景としては2020年初頭からのパンデミックが大きく影響しており、2021年後半は経済復活と共に旅客事業の復調の兆しが見えたが、それを上回るスピードのデリバリーへのニーズが会社成長を牽引した。
Uberは今後もUber Eatsを中心としたデリバリー事業を成長の主眼に置く戦略で、2022年には北米・ヨーロッパで食料品のデリバリーサービスも展開を開始する予定。

一方の旅客事業は、ドライバーを個人事業主ではなくUberの従業員として扱うことを求める英国最高裁の判決もあり、今後も同様の規制などで事業の成長が阻まれる可能性もある。

参考記事・リソース

成功するショッピングアプリに必要な要素の検討

リテール領域を専門とする記者であるJulia Gray氏による、モバイルコマースが中心になりつつある現代において、ユーザーが自社のショッピングアプリを使い続けるためにはどのような要素が必要かを考察した記事。

アプリ利用ユーザーの方がウェブサイト利用ユーザーよりも、利用時間・購買単価共に高くなることもあり、企業はモバイルアプリにユーザーを誘導したがっているが、使い続けもらうためにはアプリならではのインセンティブを用意する必要がある。
インセンティブは送料無料などの金銭的インセンティブや、コミュニティ機能などの心理的モチベーションを高めるものなど、アプリによって様々なものが考えられるが、大前提にはアプリの機能性が重要であると氏は指摘している。

ただ単純にウェブサイトをアプリに移管しただけでは意味がなく、モバイル端末に最適化した体験を提供できるかが、今後のショッピングアプリ成功の大前提と言えるだろう。

https://www.morningbrew.com/retail/stories/2022/01/05/mobile-apps-must-now-be-more-than-a-checkbox-for-retailers

戦略への適合度を考慮した優先度決定フレームワーク”SICE”

Adobe Mobileのプロダクト改善を務めたJulia Li氏による、ICE・RICEなどの既存の優先度決定フレームワーク改訂版”SICE”の提唱。

ICE・RICEはプロダクトマネジメントにおいて頻繁に利用されるフレームワークですが、氏はスコア算出において主観がメインになってしまい本質的な課題解決のための優先度が策定できていないと指摘しています。

この課題を解決するために、氏は以下の3つの変更点を加えたフレームワーク”SICE”を提唱。

①会社・事業戦略への適合度合いを示す”Strategic Fit”スコアの導入
②Reach・Impactを1つのImpactスコアに統合
③具体的なチェックリストに合致するかでConfidenceスコアを算出

詳細は以下の記事を読み込んでもらいたいですが、個人的にも課題に感じていたRICEの優先度決定方法を上手く解決できるフレームワークだなと思いました。

算出・管理は非常に煩雑になりますが、プロダクトバックログアイテムが大量にある場合や、影響されるユーザー規模が非常に大きい場合などは、優先度の精緻化において使えるんじゃないかと思います。

“Mobile Growth Handbook2022” リリース

“The Mobile User Acquisition Show”による、モバイルアプリグロースのための知見をまとめたレポート。

レポート名の通り、主眼はユーザー獲得領域に置かれているが、モバイルアプリグロースのための組織体制や、戦略設計などに関しても触れられており、気になるセクションだけでも目を通すことをお勧めする。

特に昨年のiOS14.5リリースによるATT(App Tracking Transparency)施行に対して、海外のアプリデベロッパーがどのように対応しているのかが深く語られているため、一見の価値あり。


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