dinii (ダイニー) はコンパウンドスタートアップです
dinii でテックリードをしている谷藤です。
今回は dinii が取り組んでいるコンパウンドスタートアップ戦略について、主にプロダクト面から解説をしたいと思います。
余談ですが、dinii の入社エントリを書いてから 2 年以上経過しましたが、dinii で働く毎日は非常に刺激的で楽しくて本当に入社して良かったとずっと思っています、dinii サイコーです!!
この記事を書くに至った背景
直近はテックリードとして採用活動や広報活動をメインで取り組んでいるのですが、それらの中で dinii を知っている社外の方から dinii の印象を伺うと、「モバイルオーダーや POS を提供している会社」とほぼ 100% 言っていただきます。
これについては間違ってはないのですが、弊社 dinii が実現したいこと、取り組んでいることはさらにもっと壮大で、モバイルオーダーや POS というのはその一部に過ぎません。
また、大変ありがたいことに、モバイルオーダーや POS を提供している会社として見えている dinii の事業やプロダクトは「かなり出来上がっている」と言っていただけることも増えました。
上でも書きましたが、モバイルオーダーや POS というのは dinii が実現したいビジョンのほんの一部に過ぎず、ビジョンの達成度合いでいうと 3% くらいなわけなので、とても出来上がっているとは言えない状況です (3% という数字に根拠はないです)。
そういった dinii が取り組んでいることと、外部からの見え方に乖離がある状況を少しでもなくしていきたい思いで、今回記事を書くことにしました。
コンパウンドスタートアップとは
「コンパウンドスタートアップ」というワードは、ここ数年でスタートアップ界隈のバズワードとして聞いたことがある人が多いと思いますが、いまいち掴みづらい概念なため、改めて解説します。
ざっくり、ポイントをまとめると以下のような概念になっています。
従来のスタートアップが提供する SaaS は 1 つの業務ペインを 1 プロダクト (= ポイントソリューション) で解決するのが主流だった
例えば、勤怠管理 SaaS や経費精算 SaaS のようなイメージ
それに対し、(立ち上げ期か後付け的かは置いておいて) 戦略的に基盤となるデータやミドルウェアに投資し、その基盤データやミドルウェアを使って、お互いがインテグレーションされた複数プロダクトを提供して、よりメタ的な抽象度の高い課題を解決しようとする戦略
この概念を提唱した Parker Conrad さんが CEO の Rippling という会社では、従業員データを基盤として、従業員にまつわる全ての管理課題を解決するというコンセプトで、HR プロダクトだけでなく IT 関連や Finance 関連のプロダクトも提供している
それにより、すべてのプロダクトを利用している場合、タレマネや給与計算、貸与デバイスや利用アプリの管理、経費申請やコーポレートカードの管理が同じ従業員データの上で一気通貫の管理ができるようになっている
つまり、複数プロダクトを提供することで顧客への提供価値がコンパウンド (複利) 的に積み上がっていったり、事業的な優位性 (事業成長や営業効率、開発効率) がコンパウンドに積み上がっていくのが、コンパウンドスタートアップという戦略
会社としてのリスクヘッジ的に、単に複数事業やマルチプロダクトを展開する戦略とは表面的にはやっていることは一緒だがコンセプトやビジョンが全く別物
例えば、Amazon が EC の Amazon と AWS をやっていてもお互いの顧客への提供価値はコンパウンドに積み上がることはない (これが悪いということではなく、あくまで戦略の違いです)
ただ、メリットだけではなく、全体を統括する経営力、複数プロダクトのマネジメント力や営業力などのケイパビリティが必要であり、それぞれに 1 点集中しているスタートアップとの勝負で勝つ必要がある
当たり前だが、会社としてのリソースを分散させることになるので経営人材や戦略的な目線を持った開発メンバーが数多く必要になる
筆者も参考にさせていただいたのですが、さらにコンパウンドスタートアップについて詳しく知りたい方は以下の記事を読んだり、音声を聴いたりしてみることをおすすめします。
dinii はコンパウンドスタートアップなのか
タイトルにも書いている通り、dinii は外食産業のコンパウンドスタートアップであり、それはバズワードとして流行ったから後付け的に言っているのではなく、プロダクトの立ち上げ期からこの戦略でやっています。
dinii は「すべての人の飲食のインフラになる」というビジョンを持っており、外食産業や消費者が抱えるありとあらゆる課題をテクノロジーを使って解決していくことを目的にしている会社で、現時点ではモバイルオーダー、POS、CRM (= オンラインでの販促活動) 機能、アンケート機能、決済機能、従業員管理プロダクトを提供しています。
レストランテックのカオスマップにもある通り、外食産業にはそれぞれの業務ペインを解決するプロダクトはすでに乱立している状態です。
この状態で単純にモバイルオーダーや POS などの単一プロダクトだけを提供しているだけでは、外食産業に大きなインパクトを出すことはかなり難しいです (どれも本当に素晴らしいプロダクトばかりですが)。
上記でコンパウンドスタートアップという戦略では、基盤となるデータが大事である、という話をしましたが、dinii が扱っている基盤データは外食産業自体の基盤データでもあり、以下のデータです。
POS データ
飲食店のメニューデータや売上データ、注文データ
消費者データ
飲食店に来店してモバイルオーダーを使った一般消費者の ID データ、来店記録データ、喫食データ
従業員データ
飲食店で働く店長や社員、アルバイトに関するデータ
dinii ではこれらの基盤データを得るために、茨の道でもあるモバイルオーダーや POS をフルスクラッチで開発している (データがいらないなら他社プロダクトと連携するという選択肢もある) わけですが、モバイルオーダーや POS は飲食店の基幹システムなので、可用性やパフォーマンスなどが桁違いに求められ、開発や運用が非常に大変です (エンジニアとしては楽しい部分でもありますが)。
一方で、dinii はこれらの基盤データを用いて複数プロダクトを積み上げていくことで、それぞれの単一プロダクトでは実現できない圧倒的な提供価値や、そもそもプロダクトが存在しない全く新しい課題に対する価値提供を実現できています。
もう少し具体的な dinii の価値を説明する前に、dinii を導入していない飲食店ではどういった運用をしているか説明します。
飲食店では以下ような業務用プロダクトをそれぞれ別会社のものを利用しているケースがほとんどです。
モバイルオーダー
そもそも消費者データを収集できないことがほとんど
POS
dinii が提供しているクラウド型だけでなく古くからあるオンプレ型がある
CRM
オンラインでの消費者に対する販促活動のことで、LINE のメッセージ配信やクーポン配信など
大企業になると自社のモバイルアプリを提供しているケースもあり
消費者アンケート
来店客から飲食店の評価をヒアリングするためのアンケート機能で、飲食店の QSC を知る目的で利用される
※ QSC とは Quality(料理)、Service(接客)、Cleanliness(清潔感) のことで、それぞれの満足度を上げることが外食経営で非常に重要
覆面調査サービスを契約し、そのサービスに登録している覆面調査員に客観的にアンケートを回答してもらうケースがほとんど
決済
クレジットカードなどの決済端末
そうなると、消費者データが存在しないことに加え、もちろんプロダクト間の連携はされておらず、例えば、以下のような体験になってしまっています (別観点として、全く別の UI/UX のプロダクトを複数触る必要があること自体、運用的に大変です)。
新規客とリピーターの売上比率やそれぞれの客単価がわからない
CRM をやるためにまずは LINE 公式アカウントや自社モバイルアプリを使って消費者の会員化を進めるが、インセンティブがあっても中々集まらない
コストを払って来店したすべての消費者にビール 1 杯無料クーポンをオンラインで配信したが、再来店に繋がったのかわからず、費用対効果が測れない
消費者アンケートについては、自然来店のリアルな消費者のフィードバックではない (覆面調査員による回答なので) のと、フィードバックを受けてお店の QSC 改善を行ったが、成果 (リピーターの増加など) がわからない
お客様のお会計時に POS と決済端末の二重操作が必要かつ、月末に POS の会計情報と決済端末の決済情報を経理担当者が突合する必要がある
…
これに対し、dinii は、以下のような体験を提供しています。
新規客とリピーターだけでなく、N 回目来店客の売上分析が可能
例えば、新規客を増やすより N 回目以上の来店客を増やす方がコスパが良さそうだ、という経営判断ができる
消費者がモバイルオーダーを使うだけで、裏側で LINE の ID 連携がされて自動で会員化が進むため、コストをかけずに素早く会員を集めることができ、その後の CRM に活用できる
ビールを注文したことがある消費者だけに対してビール 1 杯無料クーポンを配信し、それが N 日後に再来店に繋がったのか、繋がった場合はいくら売り上げたのか把握することができ、販促活動の費用対効果が測れる
自然来店した消費者に自動でアンケートを送付し、よりリアルなフィードバックを得ることができる。また、フィードバックを受けてお店の QSC 改善を行い、それが再来店率の向上や売上増加に寄与したのかを分析することができる
POS と決済端末が連動しているので、会計時に POS と決済端末の二重操作は不要かつ、データ的にも紐づいているので経理担当による月末の突合作業は不要
…
要するに、dinii はモバイルオーダーや POS などの飲食店の基盤プロダクトを提供しているので、あらゆる飲食店でのオペレーションをインテグレーションされた滑らかな体験で提供することが可能なのと、消費者データや売上データなどの基盤データを収集していることで、そのオペレーションが飲食店のトップラインである消費者の再来店や売上にどれくらい寄与したのかを分析することが可能です。
さらに現状プロダクトが存在しない外食業界特化型の FinTech 領域も決済機能を皮切りに、基盤データを持っている dinii だからこそ解決できる金融上の課題や圧倒的な体験を提供するべく進めています。
これはまさに複数プロダクトを提供することで顧客への提供価値がコンパウンド (複利) 的に積み上がっている・積み上げることができると言える所以です。
コンパウンドスタートアップ戦略を実現するプロダクト組織体制
コンパウンドスタートアップ戦略を実現する現時点でのプロダクトチームの組織体制は以下の図のようになっています。
Data Team
コンパウンドスタートアップ戦略でもっとも重要になるデータ基盤を整備しているチーム
基盤データはプロダクトだけでなく、カスタマーサクセス活動や広報活動においても利用されるため、アクセシビリティとデータの信頼性の担保がミッションになっているチーム
Platform Team
コンパウンドスタートアップ戦略ではプロダクト開発をするチームが如何に開発生産性高く開発できるかが重要であるため、そのために技術基盤を整えるチーム
単なる技術基盤を提供するだけでなく、プロダクト開発チームへの enabling なども行う
Feature Team
PMF 後の GTM やグロースフェーズの全プロダクトを開発・運用しているチーム
もちろん安定性も大事だが、幅広いプロダクトを開発・運用しているのでとにかくスピードが重要で、飲食ドメインの幅広い知識が求められる
Discovery Team
コンパウンドスタートアップ戦略では新規事業を継続して立ち上げる必要があるため、そのための新規事業立ち上げ専門チーム
とくかく少ない人数で爆速な仮説検証を回し、PMF を目指す。PFM 後は Feature Team にプロダクト自体を移譲するフロー
各チームの細かい話は長くなってしまうので、個別の記事で書きたいと思います。
また、コンパウンドスタートアップ戦略では複数プロダクトを売っていくためのケイパビリティを持った Sales 組織も非常に重要になってきますが、dinii では CTO が Sales 組織の設計をやっていたりと、面白い取り組みがあるので、そちらについても別の記事で解説したいと思います。
まとめ
dinii が実現したいビジョンとそのためのコンパウンドスタートアップ戦略について解説してきました。
記事を書くに至った背景で書いた社外からの見え方に対して、改めてコメントするなら以下のようになります。
dinii はモバイルオーダー・POS だけ作っている会社ではなく、外食産業のあらゆる課題をテクノロジーで解決して、外食産業全体のインフラになることをビジョンにしている会社
コンパウンドスタートアップとして、モバイルオーダーや POS などの基盤プロダクトで収集した基盤データを用いて複数プロダクトを積み上がることで、顧客への提供価値や事業の成長をコンパウンドで増やしていく戦略を描いている
すでにいくつかプロダクトや機能を積み上げて一部の領域に対しては価値提供できているが、ビジョンから考えると実現できていないことが多すぎて、お世辞でも「出来上がっている会社」とは言えない
dinii は外食産業のコンパウンドスタートアップとして外食産業に非常に大きなインパクトを残せる会社であり、内部の人間からすると刺激的でワクワクする毎日を過ごせていますが、まだまだ課題が山積みです。
dinii では特定のフェーズだけでなく、以下のように幅広いフェーズや領域に志向性がある方がマッチする環境になっています。
0 → 1 フェーズで新規事業の立ち上げをやりたい方
1 → 10 フェーズで PMF 後のプロダクトを作っていきたい方
10 → 100 フェーズのスケールに向けたプロダクト拡大をやりたい方
難易度の高いプロダクト間の連携や、いろんなプロダクトに横断的に関わりたい方
複数プロダクト、事業を支える共通技術基盤を作っていきたい方
事業の根幹を支えている基盤データを整備していきたい
少しでも興味を持っていただいたら、カジュアルにお話ししましょう!
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