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「やってる感」「やらされ感」という毒 日経新聞を辞めて1年で変わったこと

2023年6月末に28年勤めた日本経済新聞社を辞め、フリーになって1年経った(正確には、丸1年まであと数時間ありますが)。
辞めるちょっと前に書いたnoteがこちら。

色々と人生が変わり、自分でもよく分からなくなるほど色々やっている。
毎日忙しいけど、毎日楽しい。
節目なので現状と今の心境を書き残しておきます。
ちなみにサムネはChat GPT経由で頼んでDALL.E君に描いてもらった。イマイチだけど、5分くらいのやり取りで数枚目にはコレが出てきた。愉快。

「やってる感」「やらされ感」という毒

辞めてみて、一番大きい変化は「時間が自分のものになった」ですね。
すべての時間を自分でコントロールできるようになった。
辞める前に想像していた以上に、この変化の心理的インパクトは大きい。
日経時代より、今の方が働いている。フルの休みは月に1日、あるかないか。昼間少しサボっても、夜は仕事している。
でも、全然、辛くはないのである。
なぜなら、すべての仕事が自分が選んだものだから。

前提として、呑気なことが言えるのは食えない状態じゃないからだろう。
どんぶり勘定で、日経時代より収入は実質ちょいアップしている。はず。と思う。じゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。
ご依頼をたくさんいただき、今や「面白そうだし、やりたい」も一部お断りせざるを得ない状態。ありがとうございます&ごめんなさい。
経理的な処理とか、メンドクサイことも山ほどある。弊社は6月期決算なので、今現在、リアルにけっこう死んでます。
それでも毎日、楽しい。

なぜサラリーマン記者時代とそんなに心境が違うのか。
暫定的な答えは、これだ。

「やってる感」演出の仕事がゼロ
「やらされ感」満載の仕事がゼロ

「上司」がいなくなったので、当たり前といえば当たり前だ。

組織で働いていれば、誰かを説得したり、誰かに説得されたり、「ちょっと違うよな」と思いつつ仕事したり、いろいろある。それは仕方ない。チームの方針が決まれば、やることをやる。そういうものだ。

でも、そんな「いろいろ」ではなくて、組織で働いていると、「これはお客(読者)に有益なものを提供するのと全然関係ない仕事だな」と虚しさを感じる事態が、まま発生する。
たとえば、惰性で続いているコンテンツを作るローテーション。
たとえば、紙面を埋めるためだけの原稿(埋め草、と言います)。
たとえば、「会議のための会議」を乗り切るための資料作り。
たとえば、上司の思い付きで現場は「全然ダメ」と分かっている企画。
たとえば、「やりたくない」と明言しても強制されるイマイチな役回り。

「仕事なんだから、やることやれ」という話ではない。
「これ無駄だよな」と思ってやらなきゃいけないのが、辛いのだ。
作業自体が苦痛なだけでなく、そちらに「やりたいこと・やるべきこと」に割くべきリソースが持っていかれるのが、辛い。

その点、今は「やりたいこと」と「やるべきこと」しか、ほぼやっていない。というか、それで手一杯だ。
「やりたいこと」を選ぶ責任と苦労はある。ただ「やりたい」だけでは、食えないから。ニーズがないと、お金にはならない。無報酬でもやる仕事もあるけど、それでは食べていけない。

「それが組織ってものだ。ガタガタ言ってないで、やれ」という声が聞こえてくるようだ。
それも一理あるのかもしれない。
日経時代は自分もそんなことをこなしていたし、部下に「税金みたいなモンだ」とそんな作業を頼みもした。
でも、無くなってみると、そんな納税義務みたいなものによって、いかに時間とモチベーションが損なわれていたか、よく分かる。

先日、インスタライブで「社員のエンゲージメントを高めるためにはどうしたら良いですか」という質問を受けた。
とっさに出てきた答えが、「やらされ感」と「やってる感」をできるだけ減らすこと、だった。
ある程度の規模の組織なら、ゼロにはできないだろう。
でも「ちょっとくらい」の積み重ねは、恐ろしい。
微量の毒を、すこしずつ、みんなで摂取しているようなものだ。
私はそれが理由で辞めたワケではないが、この「毒」が蓄積していくと、組織の空気は恐ろしく淀む。それは、働いている人の目に表れる。
「エンゲージメントが高い職場」とは、「みんな元気いっぱい明るい職場」ではなくて、この「『淀んだ目』がない職場」ではないか。

健康を取り戻した

心身の変化についても少し。
ストレスは劇的に減った。
新聞記者はキツい仕事なので、そりゃそうだろう、とも思える。
でも、それ以上に「自分ですべてを決める」というステータスから来る解放感がとても大きい。
やりたい仕事しか受けていないけど、それでも仕事だから楽ではない。
クオリティを出すのは大変だし、調整やら詰めやら妥協やら義理人情やら、実は会社員時代と「作業」としては変わっていない気もする。
でも、「自分が選んだ仕事」というだけで、ストレスが全然違う。

運動と睡眠についてはこの投稿に書いた。少し要約・引用します。

昨夏にフリーになってから、多い時は週5回、少ない時で週3回というペースプールに通った。楽々超絶腹筋マッシーン「エルビオ」を週1回やっている。プールも「エルビオ」もやらない日は、朝30分、夜30分ほどストレッチをみっちりとやる。
1年ほど続けている「イス軸法」も革命的に心身の健康に良い。しかも超簡単。そのうち詳しくご紹介します。気になる人はググってください。
最近では神田や大手町あたり、片道30分程度なら自転車で行くようにしている。夏や真冬は無理だろうけど、これも続けたい。
という具合になんだかんだやって、この1年で体力は30代半ば以降で最高水準になった自覚がある。胸板は人生で一番厚い。下半身の筋肉も30代のころと変わらないレベルに戻った。

体力を再建する過程で痛感したことがある。
会社員時代は慢性的な寝不足だったのだ。
今の私は短くて7時間、長いと8~9時間、寝ている。
寝覚めはバッチリ、頭も冴え冴え、身体もキビキビだ。

今、体重は71~72キロ前後。辞める前は68~69キロだった。
単純計算で3キロ、おそらく4キロくらいは筋肉量が増えた。
年相応にちょっとお腹が出てきたのが気になるが、「ああ、俺ってこんなんだったよな」という体を取り戻した。
プール通いのおかげで階段のぼっても息切れしない。夜もぐっすり寝られるようになった。7時間寝ればばっちり回復している感覚がある。

50歳前半で健康を再構築できたことは、一生モノの収穫だと実感している。

読書量が増えた

読書については一度noteにまとめている。

昔から同時並行で何冊も読む人でして、今読んでいるのはこのあたり。

『万物の黎明』(デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェンブロウ)
『サイコロジー・オブ・マネー』(モーガン・ハウセル、再読)
『ゴリラの森、言葉の海」(山極寿一、小川洋子)
『にがにが日記』(岸正彦)
『常設展へ行こう!』(奥野武範)
『子どもに伝えたいお金の話』(塚本俊太郎)
『パパラギ』(訳・岡崎輝男、再読)

あと3~4冊、同時に読んでいる。マンガは別枠。
全部通読するわけではない。放置して、また読むときがくる本もあれば、そのまま、という場合もある。
好きなものを、好きな時に、好きなように読んでいる。
「読むかも」は片っ端から買ってしまうので、積読があふれかえっている。
読書も仕事のうちにカウントしているので、精神衛生上も大変よろしい。

今後のこと

というわけで、フリー1年目はわりと順調に来ている。
この延長線上で行けば良さそうなものだが、実は、そうではない道を選択する可能性が高まっている。もったいぶるわけではないのだが、詳細はまだお話できない。すいません。近いうちにお知らせします。

「そうではない道」に進むと、働き方、時間の管理も今とは変わりそうだ。それでも、この1年で経験した「人生のギアチェンジ」の感覚は財産だ。
「こういう道もある」と知っているか、知らないかの差は大きい。
やってみないと分からないものですね、何事も。

以上、フリーになって1年間の振り返りでした。
以下、今やっているお仕事を羅列します。

高井宏章の活動状況

◎コンテンツ関係
YouTube「高井宏章のおカネの教室」

 自分のチャンネル。もうすぐ登録3万。なかなか手が回らない
企業のYouTubeチャンネルの出演・企画・助言
 東京海上アセットマネジメントの客員YouTuberに。他にも何社か
「ほぼ日の學校」
 動画コンテンツの企画・編集ディレクションなど
ラジオ・Podcast番組のパーソナリティ
 「高井宏章と横川楓のお金のハナシ」を隔週で。聞いてね!
ネット媒体・雑誌のコラム連載
 ダイヤモンド・オンラインの「インベスターZで学ぶ経済教室」など
書籍の執筆
 
文庫化・マンガ化が終わって、現在進行中の企画が3~4冊
noteで発信
 有料マガジンで連載中。7月半ばからサブスクも開始予定

◎教育関連
一般社団法人日本金融教育推進協会理事
 
お友達の横川楓さんが作った非営利団体のお手伝い
東大生教育ベンチャー企業カルぺ・ディエム相談役
 
お友達の西岡壱成さんのお手伝い
千葉商科大学付属高校顧問
 
金融リテラシー教育のアドバイザーをやっています

◎その他
資産運用会社への助言
 野村アセットマネジメントのプロダクト・ガバナンス有識者会議メンバー
各種イベント登壇
 いろいろ顔出してます。腰は軽いです。呼んでください

いやー。
そりゃ、休み、ないわ(笑)
健康第一!
では、また。

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