見出し画像

バイオリンを弾くあの子は、ビニール袋いっぱいの駄菓子を喜んでくれた

昨夜、こんなツイートが流れてきた。

コレをきっかけに記憶が蘇り、連ツイしたものをnoteに転載します。
通勤電車で!コピペ&誤字修正、間に合うか、高井さん!

小学校3年のとき、初めてクラスメートの誕生日のパーティーに呼ばれた。クラスのうち20人弱くらい集まったと思う。

私にとって、誕生日のお祝いに参加するのは初めてで、しかも、その子は当時、ちょっと好きな女の子だった。

このnoteに書いたように、我が家には誕生日を祝う習慣がなかった。

誕生日パーティなんて、マンガでしか見たことなかった。 友達のウチにも呼ばれたことはなかった。
その子の家庭が特別に裕福だったわけではない。むしろアパート暮らしで庶民的だった。
でも、普通の家庭とは少し違っていた。

私の好きだったその子は、バイオリンのコンクールでよく入賞して朝礼やクラスルームで取りあげられていた。
そして、5歳ほど離れたお兄さんは有力高校のエースを張る有名なサッカー選手だった。
名古屋の田舎としては、なかなかスーパーな兄妹だった。

その子の家には、本はたくさんあったが、テレビは押し入れにしまってあった。作文に一度、そのことを書いていた。
当時は今の比ではないほどテレビが重要なメディアで、見ていないと、クラスメートとの話についていけない。
でも、自分はバイオリンと本が好きだから、それでいいのだ、と書いていた。

さて、ちょっと好きな子の誕生日にお呼ばれして嬉しかったが、問題があった。
プレゼント選びだ。
姉も妹もいないし、もう、何もって行ったら良いやら、見当もつかない。万年金欠で、予算もろくにない。

散々迷った挙句、私は駄菓子を買うのをしばらく我慢して、せっせと300円くらい貯めた。
そして当日、ビニール袋いっぱいに、駄菓子を買った。
フーセンガムとか、ラムネとか、チョコとか。
自分が欲しいな、と思うものを買っただけだった。

パーティにいくと、ケーキとハッピーバースデーの歌の後、プレゼントの時間に。
みんな、包装されたプレゼントを持参していた。
キャラ入りのマグカップやペンケース、文房具なんかだ。

そういうものなのか……。

私は台所から持ち出したビニールに詰まった駄菓子を持ってきたのが恥ずかしくて、逃げ出したい気分になった。

でも、仕方ない。
私は「はい」と袋を差し出した。
大きな笑いが起こった。
みんな、駄菓子詰め合わせを「ネタ」だと思ったのだ。
でも、その子は違った。
ちゃんと顔色を見て、私が(失敗した…)と思っているのを感じ取ってくれた。

「ありがとう!すごい嬉しい。私が好きそうなお菓子、選んでくれたんだね!」

その子は輝くような笑顔で、私のしょうもないプレゼントを全肯定してくれた。
まだバカなガキだったので、私は
(え?俺、ナイスじゃん!)
と素直に喜んだ。

その後、お礼のバイオリンの演奏と手作りクッキーが配られた。
私の誕生日パーティデビューは、こうして美しい(?)思い出になった。

ちょっと好きだった、大人びたその女の子は、その後しばらくして転校してしまった。
それから十何年後、新聞の広告で、ある交響楽団でコンマスを務めているのを知った。
転校するとき、お別れの会で弾いてくれたバイオリンが耳に蘇った。

今も現役なのかは、しらない。
この後、ググってみるかな。

ここまでがツイートしたお話。少しだけ推敲した。
ググってみたら、多分あの子かな、という記事が見つかった。今はオケには入らず、室内楽やミニライブの助っ人(?)みたいなことをやってるのかな?

彼女のバイオリン、聞いてみたいな。
あの駄菓子をプレゼントしたアホな男子のことを覚えてくれているかも。

=========
ご愛読ありがとうございます。
投稿はツイッターでお知らせします。フォローはこちらからどうぞ。

異色の経済青春小説「おカネの教室」もよろしくお願いします。


無料投稿へのサポートは右から左に「国境なき医師団」に寄付いたします。著者本人への一番のサポートは「スキ」と「拡散」でございます。著書を読んでいただけたら、もっと嬉しゅうございます。