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「本がすき。」書評集

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光文社のサイト「本がすき。」に寄稿した書評を転載しています。ちょっと真面目な文体です(笑)
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#高井浩章

すべての原作ファンが観るべき 映画『ザリガニの鳴くところ』

18日公開の映画『ザリガニの鳴くところ』を観ました。 とても、とても良かった。 エンドロール…

高井宏章
1年前
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死地は地上にあった『デス・ゾーン』

複雑な思いでこの文章を書いている。 本書は、多くの人に読んでもらいたい興味深い1冊だ。 一…

高井宏章
2年前
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ロシアと中国の仕掛ける新たな戦争の形 『破壊戦』

最初に、著者の古川英治氏が私の親しい友人であることを明記しておく。 この文章には身びいき…

高井宏章
3年前
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旅行記というバトン 『0メートルの旅』

旅行記は、良い書き手を得れば、ほぼ確実に良い読み物になる。 見知らぬ風景や人との出会いに…

高井宏章
3年前
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ナメクジに考えさせられる 『考えるナメクジ』

ナメクジほど、「考える」という動詞と縁遠いイメージの生物はなかなかいないだろう。 これし…

高井宏章
3年前
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これで書けなきゃ、お手上げ 『書くのがしんどい』

書名だけみると、ベストセラー『読みたいことを、書けばいい。』の著者、田中泰延さんがこぼす…

高井宏章
3年前
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「勉強のやり方」を知らない子どもたちに 『東大式節約勉強法』

私事で恐縮だが、著者の布施川天馬さんと私は、年は二回り以上離れているものの、境遇が少し似ている。 家庭が貧しく、塾や予備校に通うお金もなく、かといって自宅で学習する習慣もなく、働きながら大学受験に臨み、地理的・金銭的な制約で「地元の国立大学」に入った。 私は現役で名古屋大学、布施川さんは一浪で東大と「着地」は違っているが、似たようなコースだ。 『東大式節約勉強法』扶桑社 布施川天馬/著 タイトルには「東大式」と「節約」とマーケティングワードが並んでいる。実際、参考書を

タペストリーのような大風呂敷 『三体2 黒暗森林』

翻訳モノには、独特のマゾヒズム的な楽しみ方がある。 もう「新刊」は出ている。 でも、読め…

高井宏章
3年前
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「すべての男」が読むべき傑作 『ザリガニの鳴くところ』

「2019年アメリカで一番売れた本」 「全米500万部突破」 そんなパワーワードが踊る帯には強力…

高井宏章
3年前
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教育の「悪平等」への偏見をほぐす 『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』

PISAをご存知だろうか。 OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに行う国際的な学力調査で、Progra…

高井宏章
3年前
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鳥肌モノのエピソードの宝庫 『エリザベス女王』

秀作ぞろいの中公新書の歴史シリーズのなかでも、指折りの傑作だ。 今年で94歳、在位68年を迎…

高井宏章
3年前
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10億年後を心配する、最も“ぶっ飛んだ“AI論 『LIFE 3.0』

まず自分の誤算を白状しておこう。 まさか邦訳が出るとは。しかも、こんなに売れるとは。 『L…

高井宏章
4年前
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アトピっ子だった自分に、タイムマシンで届けたい 『最新医学で一番正しいアトピーの…

2月14日に光文社のサイト「本がすき。」にこの本のレビューを書いた。 『最新医学で一番正し…

高井宏章
4年前
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韓国発「悪童日記」が問う愛と倫理 『アーモンド』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に10月11日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnoteにも転載しています。 先天的な偏桃体=アーモンドの疾患で、怒りや恐怖を感じることができず、他人の感情も理解できない主人公の少年ユンジェを、祖母は「かわいい怪物」と呼ぶ。ある悲劇を機に孤独な生活を送るユンジェの生活に、もう一人の「怪物」ともいうべき、数奇な生い立ちの少年ゴニが足を踏み入れてくる。 社会に溶け込めない異物である二人の「怪物」と周囲の人々の織りなすドラマを描いた「アーモ