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サン・セバスチャン視察記vol.1〜美食の街とイノベーション

美食の街、サンセバスチャンってどこ?


サン・セバスチャン世界を魅了する、美食(ガストロノミー)の街として知られている。ミシュランガイドの星付きレストランの宝庫でもある。サッカー選手の久保建英選手が所属するレアル・ソシエダのホームタウンでもある。一気に親近感が湧くのは、僕だけだろうか。

そんなサン・セバスチャンはスペインのどの辺にあるかというと、これがまた、割と不便な場所にある。スペイン北東部のバスク州ギプスコア県にある。といっても、なかなか分かりにくい。

ビルバオ空港とサン・セバスチャンを結ぶ高速バス

スペインの首都・マドリードの北に480km、車で約5時間バルセロナの北西に570km、車で約5時間半に位置する。東京から大阪までの距離とほぼ同じだ。

サン・セバスチャンは人口が約18万人、面積が60平方キロメートル、人口密度は、約3000人/km2で、人口密度で言えば、神戸市、千葉市、高槻市、我孫子市といったところだ。同じ人口密度の都市で比較すると、サン・セバスチャンも大きな都市に見えるかもしれないが、市域は狭く、人口も少ない、コンパクトシティだ。そして、何より政治や経済の中心地からは「遠い」

どれくらい「遠い」、かを表現すると、日本を出発してサン・セバスチャンに到着するのに24時間を要する。羽田を出て、フランクフルトを経由して、スペインのビルバオ空港に降り立ち、そこから、さらに高速バスで1時間だ。なんとなく、イメージが湧くだろうか。

そんな街に世界中から何百万人という観光客が訪れることから、ここ10年ほどだろうか、日本でもメディアに登場する機会が増えているのがサン・セバスチャンだ。

そして今、このサン・セバスチャンが大きく生まれ変わろうとしている。生まれ変わるというよりは、アップデート、進化しようとしている。それは地方創生とイノベーションという視点から、非常に興味深い動きがこの地で始まろうとしているのだ。

サン・セバスチャンといえば、ピンチョス!


サン・セバスチャン、その前に


さて、そんなサン・セバスチャンに一体、何をしに行ったのか、それをつらつらと書いてみるのが、この視察記だ。といっても、正味3日半の短い滞在だったので、そんなに連載できないと思うが、まぁ、書いてみよう。

あれは、2022年6月のことだった。かねてから親しくさせてもらっている、産業能率大学の藤岡慎二教授とお酒を飲んでいた際に、「リバース・イノベーションってご存知ですか?」と話題を振られた。

リバース・イノベーションとは、新興国や発展途上国でイノベーションを起こした、優れた商品、サービスを先進国へ「逆」輸入することで、世界の潮流になりつつある、らしい。僕はさっそく、ダイヤモンド社から出版されている「リノバース・イノベーション」を読んでみた。

地方創生をリバース・イノベーションとして捉える

この時、話題になったのが、地方と都市の関係だ。経済学の世界では、新興国や発展途上国から先進国へ、という流れのことを「リバース・イノベーション」と読んでいるが、新興国、発展途上国を地方、先進国を都市と置き換えても、同じことが言えるのではないか、ということだった。藤岡氏は、とある具体的な自治体をイメージして語っていたのが印象的だった。

なるほど、と思った。僕が今、逆プロポというサービスを通じてやろうとしているのは、まさに「地域課題」「社会課題」をビジネスの力で解決すること

ビジネスの力で解決する=マーケットが存在する


ということだ。

それは畢竟、ローカルの問題だと思われていることの、その本質を探り当てることで、大きなマーケットにも刺さるサービス、プロダクトを生み出していこうとする、そんな思いで逆プロポというサービスを展開している。

このことは、拙著「ソーシャルX」でも書いてある通りで、かつて東大の小宮山総長が「課題先進国・日本」の中で、”将来、日本は社会課題を世界に輸出する時代がやってくる”と喝破しているのだけど、僕たちはそこにいこうとしている。逆プロポで生まれたサービスが、いずれ、世界の社会課題の解決にも役立つサービスとしてマーケットを形成していく。「そんな夢見たいなこと」と思われるだろうし、妄想に聞こえるかもしれないけど、そういう野望を持っている。

ま、それはさておき、だ。ひょんなことから、僕はリバース・イノベーションという言葉を知り、自分たちが展開しているサービスが、リバース・イノベーションの孵卵器になる可能性を秘めていることに気づいた。と、同時にこの分野に、僕の10数年来の知人である、藤岡氏が強い関心を持っていることも知った。

藤岡氏からの一本のメッセージ

2022年、弊社ソーシャル・エックスは激動の一年だった。経済産業省の事業を受託したり、虎ノ門ヒルズのインキュベーション拠点「ARCH」に入居したりしながら、逆プロポ・コンシェルジュ、同ラボ、同ツアーと新しいサービスを次々と送り出した。そして水面化では大手のクライアントとビッグプロジェクトも動いている。

こういう忙しさにかまけていると、大切なことをどうしても忘れてしまいがちだ。せっかく、「リバース・イノベーション」という面白いキーワードを教えてもらったのに、深く考えることもしないままに、時間だけが過ぎていた。いつしか、その言葉は僕の頭から消えかかったいたほどだ。

そんなある日、藤岡氏からメッセージが届いた。2022年11月のことだ。「伊藤さん、サン・セバスチャン、行きません?」。何度か、やり取りしつつも、こちらも年末進行で多忙だったこともあって、あっという間に日が流れた。そして、同年12月、藤岡氏から「作戦会議しましょう!」と催促(?)のメッセージが入った。

経済産業省の事業で支援している海のIoT(写真は本文とは関係ありません)

そこで僕の頭の中で、サン・セバスチャンとリバース・イノベーションが繋がることになる。そのお話は、また次回。続きます。



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