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若手研究者の生き延び:この混沌の時代に

この文章は『若手研究者よ、どう生きるか season 3』に登壇した際に, 考えていたことを残したものです. 

また, この文章はアカリクさんにも取り上げていただきました. 若手のキャリアプラニングについて自分が考えていること書いています.

運営の幾谷さん(NAIST D3)に呼ばれて, 加藤さん(東大 D3)と中園さん(福島県立医科大学 助教)と座談会に参加しました.

運営の方も時間のない中, とても上手く運営してくださいました. ありがとうございました.

いくつか議題があったのですが, 私の意見をこちらにまとめておきます. また, 11月26日にウェブサイトの情報などの追記を行いました.

会の質問自体は, どうやって生き残っていけば良いのかという内容が多かったような気がしますし, 実際にキャリアに悩んでいる方もいらっしゃいました。若手の強い危機感を感じました. とはいえいつの時代も若手は不安に感じることが多いのだろうと思います.

私自身研究者として続けられるかは何もわかりません. 年長者が自分の言うことに確信があるように発言してしまうと, 害悪の方が大きいのかなと反省しました. 特に私の生き方は生存バイアスがひどい可能性があるので, そこは差っ引いて欲しいです. とはいえ, ある一定以上の年齢を越えると多くの人がユニークさをそれぞれ売りにしていくので, 生存バイアスが高まる傾向は仕方のないことのように思っています.

私自身研究者として続けられるかはわからないという前置きをして, 事前にいただいた質問に対して, ここに記しておきます.

テーマ1: キャリア選択について

(1) 大学院卒業後の進路希望(アカデミアに残るか? 企業就職するか?)は、いつ頃定まっていたのでしょうか?

心的には, 卒業2年前には決めていました. 日本の現状を見て, 正直頑張る気が起こらなくなりました. そこで、既存のアカデミア職には残らない覚悟をしました. やるなら新しいことをしたかったという思いもありましたし,今までの道をやっても納得できなかったでしょう.

会社の内定自体は, 卒業して三ヶ月後でした.

(2) 海外留学するのであれば, 期間とタイミングはどう構想すればよいのでしょうか?

結論, 今は海外の方がマーケットが広いので, 機会があれば先にいけるのであれば行っておいた方が良いと思います.

修士以上だと英語と業績か研究テーマとのセットでアピールポイントというか, ある程度勝算を持っていないと難しいと思っています. 小さくても良いので成果を出すことでしょうか. 行きたいラボには, 勝算が見えてきた時点でコンタクトをとってみても良いと思います. 直前で,「今はポストがない」と言われるのは悲惨な状況を避ける工夫が必要です.

コロナ以前だと博士以上だと今後は国内に残る際に強い理由が必要だと思っていました. この論理だと, 今後全体としては不安定な状況がやってくるとわかっている以上, すでに安定的なポジションを得られるだとか, 残るに足るだけの業績を残せそうだとか, 業績を出すまで時間がかかりそうなので卒業後に少し日本に残っているなどです. 少なくともそういう準備や戦略は必要に思っていました.

ただ, コロナになってしまって海外での枠も減っているという話を聞く以上「何もわかりません」.

コロナに対応して, 今後はオンライン留学だとか就労も増えるかなと思っています. つまり, 日本にいながら海外のラボに所属する, もしくはその逆が起きうるのではないかと思います. 結局, 英語ができなければチャンスがどんどん離れていくと思っています. 

ただ海外のラボとのマッチングは気をつける必要があるように思います.

(3) この先自分が研究を続けることが正しいのかどうかを, どうやって判断すべきでしょうか?

正しさは最終的には事後的にはしかわからないので, 私はそもそも正しさでは考えないようにしています.

2つの判断基準があります. 1つは達成目標と, もう1つは諦めどき(=撤退基準)です.

達成目標という意味では, 自分のやりたいことと価値観の対話を一番大事にしています.

一時期うまくいっても最終的にうまくいかないこともあります. 知っている限りでも, PIレベルになって辞めざるを得ない・辞めることになる人もいますし, NatureやScienceの主著を数本持っている方でも企業に行こうか悩んでいました (彼の場合もともと23歳でPh.Dを修了しているのでかなり特殊ですが, 逆に言えばそのレベルでも悩むのです). 永遠に続く問題と考える方が良いと思っています. 一方で, そういうもんだと, 悩む時間は持たない工夫は必要でしょう. とはいえ私自身その難しさをいつも感じています.

私自身の暫定的な最終目標は, 既存ではないアカデミックキャリアの創出をすることと, 個人のエンパワーメントです. 今のアカデミックキャリアに不満がある以上何かする必要があると思っていますし, やれることはたくさんあると思っています. もう1つは, 個人のエンパワーメントです. 私自身がちゃんとやりたいことをやれているか楽しんでいるか, 他人のためになるようなことをやれているかということが私の人生にとって重要です.

やりたいことをやって, ダメだったら納得できます. 運なども含めて, 自分の実力がなかったということです.

まだまだ納得できていないところがありますが, 私がいまだに研究者として必要な能力は次のものだと思っています.

1つは英語力です. 加藤さんと中園さんもおっしゃっていましたが, ライティングが最初のボトルネックだと思います. その上で, 英語での発表やファシリテーションが必要になると思います. ただ, ファシリテーションについてはポスドク以上の問題だと思います.

さらに, 人脈も大きなポイントです. 大学院生だと, 同じ研究者で協力的な人たちと仲間になることなのでしょう. 多くの噂や情報はこういったコミュニティから出てくるので, いてくれると助かります. そのほかにも, 国外の共同研究者がいると, 国外の人脈を持つことは自分の研究の幅が広がると思います.

自分の立ち位置=ポジショニングもとても大事だと思います. ポジショニングというのは, 資源が豊富なところにいるとか, 一流の研究者たちからアドバイスをもらえる立場にいるのか, 国際色が豊かなのかとか, 将来的に自分の可能性を高めそうな場所にいるかということです. またそのような関係を作れる能力も含みます. もし自分の可能性が低くなりそうであれば, 手に入れられるものと失うものを天秤にかけないといけません.

もう1つは諦めどきです. 私自身は, 時期で区切って、損切りのレベルを考えるべきと思っています. より細かく言うと目標, 研究を続ける時の戦略, 考えられうるリスクとリスクヘッジ, 損切り時期を考えるべきということです.

私自身の今の損切りのポイントは, 35歳までに以下の最低限条件をクリアできなかったら研究者やめるというものです. これは分野によるので参考にしないでください.


1. 全く論文が出せない(主著共著含めて年1本以下のsubmit): 何か新しいものを出すのは研究者としてプロとして大事なことです. これがなくなればやっていく価値はないので、潔く辞めたいと思っています. 幸運にも2020年は1本主著のアクセプト, 3本共著のアクセプト&出版となっています.  来年についても既に何本か準備中なので, とりあえず全く論文が出ないという状況は避けられそうです. 会社としては主著2本, 共著3本の合計5本を達成目標にしています. 来年は達成したいです.
2. 差別化がなくなったら:他人との違いを言語化できないのならやっている意味はないと思います. 自分自身の研究テーマの独自性を出せなくなったらやめようと思っています. 自分なりに世界でも戦える独自性を出せるテーマをいくつかもって生きています.
3. 後ろ盾(お金を出して雇用してくれる人)がなくなったら:差別化もできず, 後ろ盾がいないのならばやっていくのは難しいですよね. 今のところアラヤが雇用してくれている限りでは続けられますが, なくなってしまえば続けられません.

そうならないための戦略として, 次のことを就活の時期は意識しました。

1つは, 将来的に大学以外の場所で教育的な活動をするということです. 現在Consciousness Club Tokyoというイベントを英語で運営していますが, この企画自体は偶然とはいえ自分で形にしたかったものの1つです. いくつか考えているアイディアも今後公開していきます.

もう1つは, プロとしての積極的な差別化です. startup企業にいながら研究しているという人が日本でも徐々に増えてきましたが, 海外に比べるとまだまだ少ないというのが印象です. そこの枠を積極的に狙いに行きました. startup社員 x リサーチャーは, 企業のダイナミクスを学びつつ研究者として残るという道は成功すれば目指す人も出てくるでしょう. またそこで得られたノウハウも積極的に共有したいと思っています.

最後は, たくさん論文が出せそうな場所に行くということです. 分野にもよりますが, 論文を沢山出すにはそれを支える文化や仕組みが存在しているように思います. そういった仕組みが今後共有される必要があるように感じます.

今のポジションでのメリットはなんでしょうか

私自身は, 研究者はユニークさをアピールできるところがあると思っています. 個人での裁量が大きい分, アピールできるところも強いです. また, startup企業での研究者というポジションは, 研究者だけでなく企業の方との繋がりも増えるのでコネクションが増えました. さらに, startup企業の株資本のダイナミクスを学べることも大きなメリットです

逆にリスクはなんでしょうか

研究者を続けるリスクですが, キャリア転換の時期が遅れることで, 生涯賃金がかなり下がり, 家族が苦労しそうなのと, 他の趣味に時間を割くことができないことでしょうか. また, 遅れれば遅れるほど転換が厳しくなります

このリスクへの対応策は, パラレルキャリア, 情報科学寄りのテーマをやる, 企業の人とのコネクションを持っておく, エクイティなどについて知っておくなどでしょうか. いつでもキャリア転換を持てるように, 研究者以外の繋がりを適度に持っておくのは大事に思いますし, お金のことをきちんと学ぶのも生き方を仕事のポジションに左右されないようにするために大事なことです.

基本的には企業のイベントに出席したり, 気になる研究者にオンライン上で声をかけて話をさせてもらうことも大事に思います.

また, 今後は情報科学のリテラシーは前提だと考えているので, ある程度情報科学寄りのテーマを持っていることも大事に思います.

テーマ2: 学生時代の生活について

(1) アカデミアに進む場合, 学部生, 修士, 博士など, 各時点でやっておいた方が良いことは何ですか?

学部生:多分自分が経験してみたいバイトや, インターンなりサークル活動なり色々やってみるのが良いと思っています. みんながしないことをしても良いかもしれません. いろんな人に出会ってほしいと思います. 最終的には, 英語を学ぶのは大事と思います. 自分がもともと苦手な科目だったので最初苦労しました.

修士:博士五年一貫教育だったので, ちょっとわからないです.

博士:博士になると起こるのが, より孤独になることだと思います. また研究のプロジェクトに頭が一杯になって, 運動の習慣がなくなってしまうのも問題になると思います. またちょうど研究者ではない世界に進んだ人たちは少しずつ給料が高くなってきて, 自分と比べがちになってしまうのは精神衛生的に悪いです. 運動の習慣は, 少しだけこの問題を解決してくれます.

また, 行ったことが場所や人, 趣味をやってみるなど, 新しいことをやり続けるのはやっても良いかもしれません. 精神的に問題がなくとも, 定期的にカウンセリングに行っていたのも自分にとってはよかったです.

他には, ランニングやサルサダンスをはじめました.

(2) 企業(研究系)はどのような人材・スキルを求めていて, またそのような人材になる・スキルを得るには何をしたら良いですか?

研究をきちんとしていれば, 企業でも使える基本的なスキルは得られるというのが私の結論です.

企業でも, 割と自由にさせてくれるところと, かなりガチガチに目的を決めているところもあります. アラヤだと少しゆるいのと, 自己資金があれば外部との共同研究も自由にやらせてもらえます. 企業の目的によって必要なスキルは異なるのでその違いを知っておくことが大事ですが, ほとんどの大事なスキルは転換可能だと思っています. しかし大企業のダイナミクスはわかっていないので, そこはアドバイスできません.

スキル以上に重要なポイントとして, 自分が何を大事にするのか, 企業がどういう目的で動いているのかは事前に知っておくのが大事だと思います. 想像以上にマッチングが重要になります.

研究が論文をアウトプットして動いているのと対照的に, 企業ではプロダクトやサービスを提供して利益を上げることを目的としているので, そもそもダイナミクスが違うわけです. その違いはチームメンバーときちんと話し合う時間を持つことで埋めるのが大事だと思います. 大抵, みなさん忙しいですから, 本で予習したり自分なりに仮説を持って, チームメンバーに時間を割いてもらっているのを自覚しながら質問するというのが, 博士を持つ学びのプロとしての態度だと思っています.

ですから, 企業に入る前にできることといえば, 色々話してくれる企業の友達を見つけることでしょうか. お互いに情報交換できる健全なコネクションが大事だと思っています. 

また, 企業では同僚として見られているので, 一緒に仕事しやすいかどうかは見られていると思っています. そこで, 謙虚なリーダーシップが大事だと思っています. 世の中には, わたしが知らないことを知っている方々がたくさんいて, ビジネスをより理解している人たちがいるわけです. 謙虚にそういう方々と向き合う覚悟は必要でしょう. 一方で, 遠慮して他人に指示できないのも問題だと思っています. 自分が担当しているプロジェクトを自律的にリーディングする覚悟も必要です. そのためにはまず行動してやる気を見せるというのも大事だと思います. 

そうした謙虚なリーダーシップを身に着けるためには簡単にできることとして, BBQなり趣味などで知らない人を含めて何か企画してみるのは大事だと思っています. 大抵, 連絡しない人もいますし, 計画通り行かないです. 人がどういう行動をとるのかは知っておく必要があります.

もちろん共同研究ができれば, 一番良いです. うまくいく共同研究, うまくいかない共同研究も存在します. 大抵責任をとる人がいないプロジェクトは進みませんし消えてなくなります.

(3) 学部・修士・博士の各時点で, 研究と勉強の比率はどの程度が望ましいですか?

研究という観点から言うと, 自分みたいなアウトプットを意識しないとインプットできない人間だと, 研究がボトルネックで、そのために勉強するのでプロジェクトの状況によって研究と勉強の比率は変化すると思っています。

例えば, 研究アイディア全く出ない場合には基礎勉強が足りないでしょう. また, 研究のアイディアがうまくいくかわからないので検証が必要な場合には, 研究の比率が高くなるでしょう. またある程度研究がうまく行っていて色々やるだけなら, 次のプロジェクトのために投資するための勉強が必要でしょう.

私自身は, 色々試した印象として, 研究7, 勉強3が多いですが, 一定ではないです. 学部生なら, まず研究して結果が出そうなプロジェクトをやってみるとインプットとアウトプットの比率がわかってくると思っています.

テーマ3: コロナ禍での研究生活について

(1) コロナ禍で不便になったこと, 便利になったこと, コロナ禍だからこそ気づいた大事なことは何か?

コロナで変わってしまったこととして, 運動習慣が壊れてしまったというのがあります. 定期的な通勤による歩きが減ったり, 外でランニングすることが少なくなったのも困りものです.

また, 雑談が極端に減ってしまったのも困りました. 特に若手が触れられる最新情報が流れづらくなってしまった一方で, twitterに情報が溜まっているのではないかと思っています.

twitterにも流れない・流せない情報もあって, そういう情報を広げられないのも, 雑談が持っていたパワーを活かせないことは残念なことです.

私自身が疲れているのだとイベント終了後に気づきました. たくさん情報がありすぎて食傷気味になっているだと思います. twitterから離れて運動すべきなのは私自身でしょうね. 

(2) これからのWithコロナ時代において, 学部生・院生が始めてみたら良いことは何か?

先ほどもあげましたが運動の習慣や, 新しい趣味だったり, 自分が興味があるけれども調べられていない分野の本を読むなどでしょうか. 自己との対話を通して何を今後大切にするのか考えたり行動する自分投資の時期だと思っています.

本当は, 自分の業界とは違う友達を作ってみることを推奨したいのですが, 大学という場所を生きている人たちにどうやって情報を届けたらいいのかは考えないといけません.

(3) 議題1, 2での議論も含めて, 学生のためにどんなオンラインイベントがあったら良いだろうか?

ポスドクや学生に来て欲しい企業や研究室がピッチする場所を作るのはあってもいいかなと思っています.

学生ではなく, 研究室や企業がピッチするような場所を増やし, 交流の場所を増やすのは今後の課題だと思います.

参加者からの自由質問タイム

(1) Google Brain や Deep Mindなど神経科学関連の研究に取り組む企業を目にする機会が多くなりました. 今後, 大学以外で神経科学関連の研究をする場は拡がるのでしょか? 企業における研究の特色(大学・アカデミアとの違い)とは何でしょうか?

ヘルスケアを軸に広がっていくというのが私の見立てで、現にアメリカやヨーロッパでも関連したベンチャー企業が出てくるようになりました。神経科学を専攻していた人たちが, 起業を始めているということです。今の所心理学系の応用アプリなどが多いように思います. 神経科学がメインの企業なのか, 他のメインのプロダクトがあって神経科学が利用されるというようなタイプの企業になるのかは, 今後, 淘汰がある程度進まなければわからないと思います.

Google BrainとDeep MindはAlphabetの関連企業なので, 大枠には同じ系列です. 私が友人や知り合いに聞いている範囲だと, 多分研究環境については, Google BrainやDeep Mindなどは普通の研究所と変わらず, 情報科学系に関して言えば個人の裁量が大きく研究できていると聞いています. 一方で, 神経科学をやりたいからDeep Mindではなく大学で研究員をしている人もいます. お金の問題も当分はしなくて良いのはかなり魅力的です.

重要なポイントとして, その企業の研究グループが, 一流の研究コミュニティに入っているかも大事しないといけません. もちろん先にあげた企業は繋がりがしっかりしているという印象です. 日本の研究者もこういったグループと連携を取れるように動いたり, 自ら作る必要があると思います.

日本で限定していえば, 科研費を取るためには, 日本の研究機関認定がなければ申請できないというプラクティカルな問題もあります. 全ての企業がこの対応ができているわけではないです.

さて, 今の所こういった外資系大企業の神経科学部門に目立ったデメリットはないと思っています. しかし, ポジションが生涯あるわけではない可能性と,研究内容の方向づけがすでに決まっている場合もあり, 長期的に独自性を出せるかは気にする必要があると考えています.

現状では, こういった有名企業の研究チームは良い結果を出しているので, statup企業や大学の方が特色を出すための戦略を考える必要があると思います.

(2) 博士課程に進むことで, 修士課程卒業すぐの企業就職と大きく違うなと感じたことは何ですか?

これについては私はわかりません. 一般就職ではなく一本釣り型の就職しかできないというのはデメリットかもしれません. 就活のパターンがかなり異なります.

(3) 神経科学業界の闇について. 真面目で利他的な学生がドロップアウトしてしまう現状の改善手段は何かあるのでしょうか?

この回答には前置きが必要だと思っています. なぜなら、この問題は, 神経科学だけではなく大なり小なりどこの分野でもあることだからです. 必ずしも業界の問題だけではないと思っています. 

なぜなら、新たしい課題やるという難しさや適性もあるので, 必ずしもドロップアウトすることが悪いわけではないからです.

ただ, 以下の問題が日本の業界として存在しているのは間違いないと思っています.

1. 現状のあまりフレンドリーではない環境, 興味がある人間を無碍に扱う構造的な問題が存在する.
2. 給料は少ないが, 競争倍率が上がってそれぞれが必死になっている状態
3. 科学の運営に関する科学があまり共有されていない. どんなチーム・仕組みを導入すると上手くいくのかが共有されていない.
4. 一方で, ラボのPIも身体的・心理的に疲労している可能性がある. あれもこれもは対応できない状態.

これらの解決策として, お金の余裕がやはりボトルネックですが, 工夫できる点については変えていくべきだと思っています.

以下にすぐできる対策ですが, 自分なりの案をまとめておきます. とはいえ運営者が考えるべきことだと思います.

1. ラボの環境を整える

ー 失敗フレンドリーな心理的安全性を確保
  ー 精神的に疲れて来れなくなることもあるので、仲の良いメンバーに声をかけあう
  ー 雑談できるように時間帯を決めてティータイムを作ってみる
ー ラボノートやどんな作図をすべきかのフォーマットの標準系の共有
  ー ラボの方針について事前に話しておく習慣
  ー ボスマネジメントという観点もラボメンバーの中で養っておく 

2. リスクヘッジとしてのマネジメント
ー トレーニング(2nd author以下)のプロジェクトに組み込む。
  ー 一通り研究の過程を経験させる. ただし誰が教育係になるのかは結構重要な問題。
  ー 自己分析しながらどこが足りないかどこが足りているのかの客観的なフィードバックを定期的に行う
  ー 一通り経験できたら、途中から色々自主的に提案してもらう。

こんなところでしょうか.

改めて, 正直将来私自身もわからないです. 1つのアイディアぐらいに思ってください.

さらに, 今後の取り組みとして, オンラインメンターのシステムを提案しています. オンラインメンターとは, オンライン会話ツールを通じてコメントやアドバイスをもらうシステムです. 多くはボランティアになるのですが, 現状でもこのような取り組みがあるので, それをもっと導入したらどうかという提案になります.

私自身オンラインメンターを, 大学機関によらない教育方法の探索として捉えていて, 自分自身のためにやっています。また, 「一部の恵まれている人たちが共有している情報を効果的に公開する方法は何だろうか?」という疑問に答えたいという気持ちがあります. これらにより, 国内外のコミュニティを自然に手に入れられる手段を模索したいのです.

聞いてもらいたい話がある人は, hamada_h at araya.org まで連絡ください.

リスクとしては, メンターから嫌がらせのような行為をされてしまうときの対処だと思います. 一つは逃げるというのが第一ですが, システム上の欠陥もあるので, そのリスクを加味して現状は参加するのがポイントかもしれません. もちろん私自身がそのような人間であるかもしれませんのが常に気をつけなければなりません.

現在, Skuldという国際コンソーシアムレベルの連携も私が担当しているので, そこで得た気づきや経験も共有したいと思っています.

アカリクでもご紹介していただきました. ありがとうございます.

追伸:

このようなブログも書いています。

こんな論文を見つけましたので添付しておきます. 今後まとめる必要があるかもしれないです.


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