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【連載2】 第1期生の卒業生が語るOISTのこと: 入学準備について (2022/08/25更新)

改めまして, 2012年に1期生としてOISTに入学し, 2019年にPh.Dを取得した濱田太陽(ひろあき)です. この連載では, OISTについて卒業生の立場から語っていきたいと思います. 

画像は, 私が最初にOISTに来た時に撮った写真です. まだ, 真ん中の寮しかなく, まだまだ何もなかったOISTを思い出します.

連載第1回目の最初に語るのは, 入試の準備のことです.

入試準備にはいくつかありますが, 事前準備試験対策になると思います.

OISTの2019年度の最終的な倍率は, 19倍程度になっており, 競争率が高くなっているという話もあります (2020年度は, 合格者数は公表なし. 志願者数1131, 入学者数62). しかし, 基本的なことを徹底し, マッチングが合えば誰にでもチャンスがあると思っています. 

悲しいことですが, 自身の学校歴を気にするあまり, 努力を躊躇している人に何人か出会いました. 気にせず, 積極的になるべきです. また, 入学者の出身大学を見ても多様なバックグランドがあることがわかります (下の画像をクリックしてください).

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事前準備で必要なのは, 自分とのマッチングを知るために, ラボの実情を知ること, 生活環境について知ることでしょうか.

東京大学の稲見昌彦先生も書いていらっしゃるのですが, 想像以上に教授や環境との相性は大切です. OISTではない環境の方が自分に合っているとという人もいますし, 5年間博士課程で過ごすというのは過酷に感じる人はいます. 進捗がなくとも行きたくなるようなラボに行くことをオススメします. 自分にあっているかどうかを考えて欲しいと思います.

私の場合は,

1. 英語が苦手なので, 科学者になるために英語は必須のところを選びたい

2. お金があるわけではないからお金が出る場所を選びたい

3. 自分の興味を持っている分野で, 日本で最先端の教授のもとで学びたい. 将来的には海外で研究したい

4. 将来的に注目されそうな場所を選びたい

という4つをもとに, OISTを選びました. 研究は何とかなると思っていました.

まぁ何とかなったと思っていますが, 色々反省点もあります. また, Ph.Dが終わってから, 考えも変わりました.

さて, 自分とOISTや研究室の相性を調べるための方法としては, 

- そもそも大学院とはどのようなものか調べる.

- SNSで知る.

- OISTの研究者に学会で知る.

- 実際に研究室を訪問する.

- OISTが主催するイベントに参加する.

- 短期インターンに参加する.

などでしょうか. 私は全て試しました. 2010年から2011年のことです. 一方で全てやる必要はないでしょう.  それは, 後述する在校生のブログなどをチェックしてください.1つ1つ詳述していきます.

試験対策は, 志望動機書 (英語400語以内), 推薦状, 英語(TOEFLスコア等), 面接でしょうか. 

書類審査として, 志望動機書推薦状, 英語のスコアが必要になります.

その審査に無事合格できれば, OISTに呼ばれ, 数日がかりの面接を受けることができます. 4人以上の教授と英語で30分程度面談することになります.

これらも記しておきます.

0. そもそも大学院とはどのようなものか知る.

私がOISTの開学を知ったのは, 2010年のことでした. twitterで知ったと思います. そして, 2011年に英語のエッセイコンテストに参加しました. これは, Science Challengeの前身となるものでした.

そのころは, 徹底的にOISTや他の大学院(NAIST, 東工大, 東大等)のウェブサイトを調べました.

https://amzn.to/3f7tbwd

他にも, 大学院について知るための書籍はたくさんありますので, そちらを読むのは良いと思います.

また, エッセイコンテスで一緒に参加した松浦さんは, アメリカでPh.Dを取得され, 現在アメリカで就職されています. Youtubeで, 大学院について情報を発信してくださっています. 

OISTの公式YOUTUBEアカウント

1. SNSやブログで知る.

SNSには, 本当にたくさんの情報があります. 入学生やインターン生のブログはすぐアクセスできます.

OISTの公式アカウント

OISTの大学院のアカウント

河野ラボ(OIST膜生物学ユニット)の日常アカウント

Embodied Cognitive Scienceユニット(PI, Tom Froese)ラボのアカウント

記憶研究ユニットの田中 和正先生のアカウント

他にも在学生やインターン生のブログがあります. これらの情報がどうやって得られたのかを考えるのも大事と思います.


最後に, twitter経由ビジネス用のSNSであるLinkedinで検索をかけるということができます. 一度オランダの学生から相談を乗って欲しいと言われて, skypeでアドバイスをしたことがあります. 必ずしも皆返答してくれるわけではないですが, バイタリティのある学生を見ると私は応援したくなるので, できるだけ相談するようにしています.

2. OISTの研究者に学会で会う.

言葉の通りです. 自分が所属するもしくは, 近い分野の学会に参加し, 抄録に掲載されているOISTの人を探し出すことです. 学部生は多くの場合, 安い金額で参加することができます.

私の場合は, 日本神経科学学会やOISTの教員が参加するイベントに参加しました. twitterでイベントに参加されるのをチェックしていたからです. イベントが終わった際に, 声が震えながら話かけたのを覚えています.

3. 実際に研究室を訪問する.

興味があれば, 直接研究室にコンタクトして訪問するのも1つの方法だと思います.

事前に興味がある研究室にメールで連絡をして, お会いできるかチェックするのです. 大抵の場合所属する学生やポスドクさんとあって話すことができるので, ある程度時間の余裕を持って訪問することをオススメします.

また, 意外なのですが,  訪問する研究室の論文を読まずに訪問する人がいます. もちろんですが, 興味のある研究室の論文を読み, 質問やアイディアがあった方が, 議論が弾み, 深い情報を得ることができます.

google scholarや研究室のWebページに業績の欄があるので, チェックすることを強くオススメします.

OISTの教授と会う日程が決まり次第, 研究科の学外エンゲージメントセクションに連絡取ることもおすすめです. OISTに確認したところ, 入試ガイダンスや, 大学生活の質問に対する対応などを担当している部署で, 以下のリンクからアポイントメントが取れます(日・英対応可).

4. OISTが主催するイベントに参加する.

OISTは入学希望者に向けてイベントを開催しています. 大都市だと, OIST Cafeと呼ばれるイベントを開催しています. 在校生や卒業生をよんで, OISTの大学の説明をしてくれます. 私も卒業生として一度参加しました. 

他にも, Science ChallengeやSkill Pills+と呼ばれるイベントもあります.  実際にOISTに学生を呼んで, OISTの生活を体験してもらうためのイベントも開催しています.

また2011年の頃は, 大学院の説明会を新宿の河合塾で受けました. 私を入れて3人ぐらいだった気がします. 今とは比べ物にならないくらい注目度の低さでした.

5. 短期インターンに参加する.

OISTには6ヶ月間以内のインターン制度があります. 私は,  学部4年生の時に参加しました. 住居費や渡航費, 少額の給料(日給2400円程度)を頂き, 希望の研究室でインターンすることができます. 

しかし, 研究室によっては, 教員がサバティカルを取っていたり, 受け入れ人数の限度を超えていたりして, インターンできないこともあります. 以下のリンクから確認して, 早めにOISTに連絡することをオススメします.

また, Ph.D学生の受け入れとインターンシップの学生の受け入れは微妙に異なるみたいなので, 自分が入学する年に受け入れがあるのかを確認していた方が良いと思います.

また, インターン経由で入学選考に入ることができる制度もあるらしく, 徹底的に利用すべきでしょう. ただし, この場合には, インターンの受け入れと, Ph.D学生の受け入れについて, 自分が希望する教員が両方で受け入れ可能か, 確認する必要があるようです.

海外の学生は, 他の大学で何度もインターンしていることが多く,  日本ではその点でも機会損失があると思います. 一度会ったことのあるアメリカの学生は, 学部4年生で3回目のインターンだったと聞きました. 他にも有名海外大学(オックスフォードだったような気がします)でインターンをしていたみたいです.

一方で, どこの大学生であっても特別扱いされることはなく, 自分自身で助けを求めることが必要と思います. ハーバード大学の学生が, 当時ローテーションで参加していたラボで, ほとんと放置されて何もできていなかったこともありました.

6. Applicant's Statement (志望動機書)

志望動機書とは, 大学院出願の目的などを書いた文章のことで, 通常Statement of Purposeと呼ばれます. OISTでもアメリカの大学院と同様に提出が義務付けられています.

出願の欄には, 以下の二つについて400文字で書けとあります.

1. 出願者の科学的興味・関心
2. OISTの博士課程で修得したいこと

しかしながら, 単純にこれらだけ書いたのだとしたら不十分だと思います. 

少なくとも私から見て, 効果的なSoPは以下のようなものです.

1. OISTでどんな研究がしたいのか? どうやって貢献するつもりなのか? どの研究室からそれらを学べそうなのか?

2. やりたい研究が, 今までやってきたインターンや研究とどういう関係があるのか?

3. どうしてOISTでなければならないのか?

これらの情報をOISTの研究室や環境とセット共で, パラグラフごとに書くと印象が良いと思います.

また, 個人的な意見ですが, 必ずしも提案した研究を入学後にすべきとは思いません. 入学後には,  ラボローテーションなどを通じて, 教授とのマッチングの中で, 具体的に可能な実験や研究に落とし込む過程があります. あくまでも意味がありそうな研究について論理立てて提案できるスキルが見られていると考えています.

志望動機書ついてですが, もちろん英語のレベルもありますが, 文章の構成能力が必要になります.

何人か添削のお手伝いをしましたが, 文章の構成は, 添削の回数に大きく依存するので, 何度も書き直して他人に見てもらうことをオススメします. 私の知る限り, 東大生だろうと,  そうでなかろうと大きく構成能力に違いはありませんでした. 添削の回数が, 多ければ多いほど, 文章の完成度は高いと思います.

私の場合は, 大学の英語のライティングのネイティブの先生にお願いして, 添削をしていただきました. 何度も書き直して, 提出したのを覚えています.

7. 推薦状

次は推薦状です.

指導教官等から出願者の学業・研究に関する推薦状を2通から5通(ただし3通以上が望ましい)提出ください。

 3通以上が望ましいとあります.

いくつか方法がありますが, インターン先の研究室の教員に書いてもらったり, 学部時代や修士課程の時の研究室の教員に書いてもらうこともできます. また大学の授業で大変お世話になった教員に書いてもらうという方法もあります. 知り合いの方は, 共同研究者の方に, 推薦状を書いていただいたと聞きました.

私の場合は, 学部時代の教員, よく質問に行った統計学の教員, プログラミングのアルバイト先の教員に推薦状を書いていただきました.

また, OISTのインターン先の教員から推薦状をもらうという方法もあります. ただし, この方法を用いると, 入試の面接の際には,  インターン先の教員とは面接できないと思います. これは公平に志願者を判定するためです.

また, 知り合いの教員の方が推薦状を学生に書いてあげるかどうかは義務ではありませんので, 全ての教員が推薦状を書いてくれるとは限りません. 志願者との関係が悪ければ, 断られることもあります.

推薦状の提出は義務ですので, 書いてもらえそうな人間関係をきちんと作るのは重要なことだと思います.

8. 英語 (TOEFLもしくはIELTSスコア)

英語の対策については, 定期的にTOEFLやIELTSなどを受験することしかないと思います.

特別なことはありません. 粛々と準備をして受験することが必要と思います.

スコアは参考として提出が求められるのみで, このスコアが低いからといってネガティブに評価されるということは少ないと思います.

ただし, 面接においてスピーキングの能力が必要になるので, 大学の授業等で話す練習はする必要はあると思います. 

私の場合も, スピーキングの授業に大学1年生から4年生まで参加しました. 英語が一番苦手だったので, 一番苦労しました.  私の頃はTOEICのスコアの提出でも許されていました. その際には, 805点だったと思います. 自分の英語の能力の低さを憎みましたが, 全然ダメで入学後に頑張りました.

知り合いの学生は, 東南アジアの英語合宿に参加していたり, オンラインの英会話学校などにも参加していたりしたと聞きます.

9. 面接

書類審査を通過すると, 最後は面接です. ワークショップに招待された候補者の旅費はOISTが全て負担します.

面接をするために, OISTで三日間のアドミッションワークショップに呼ばれて, キャンパス設備ツアー, 交流プログラムとして在校生や教員やポスドクと一緒にランチやディナーをする時間も設けられています.

これに参加するだけでも, 楽しい経験でした.

面接では, 事前に面接を予定している教員のリストが渡されます. 多くの場合, 4人以上と面接します. 分野外の人も含まれますので, その際には説明の抽象度をあげて基本的な事柄の背景を説明することが必要になります.

もうすでに覚えていませんが, 以下のことがメイントピックだったような気がします.

1. これまでやってきた研究の内容やそのモチベーション

2. OISTで行いたい研究についての話

3. 最近のサイエンスで気になっている話題

4. どうしてOISTに来たいのか

特に, 1.と2.については, どの面接官も聞いていたと思いますが, 志望動機書ですでに書いている内容だと思うので, 相手が専門外の場合や専門の場合に分けて, スピーチの練習をすると良いと思います.

また, 1.と2.が必ずしも繋がらない場合, つまり分野を変える変える際には, 分野を変えたい理由とこれまでの研究がどのように活かせそうかを研究の視点から述べると良いと思います.

抽象的には, 自分が興味を持っている内容のお互いの関係や理由が述べることで, 相手に論理を理解してもらうことをになるでしょうか.

自分が何を話したのかすら忘れてしまったので, 喉元過ぎれば何とやらで, 他の学生のブログ等をみて欲しいと思います.

リクエストをして, 教員に時間があれば, それ以外の教員とも面接することができます. 面接予定の教員以外で, 話したい人がいればOISTのスタッフの方に相談してみてください. 私の同期では, 7人の方と面接した人がいました.

また, ランチやディナーの時間も, 教員と話す機会があれば積極的に話すことをオススメします. 誰かと競争していると感じるよりも, 異なる文化の人たちと交流できる機会は日本では貴重です.

合格しようがしなかろうが, 将来仲間になるかもしれない人たちとコミュニケーションをとる機会を大事にしてください.

下の在学生のブログの方が最新情報が載っているでしょう.

注意: 現在はコロナウィルスの影響で, 面接を全てオンラインで実施しているようです (2020/06/10現在).

10. 今はなきエッセイ

2012の頃は, 面接だけでなく, エッセイを書く時間がありました. 

3時間程度で, 英語の記事を渡されそれらの内容をもとに, 英語のエッセイを5パラグラフ程度で書いていたと思います. 一番最初の頃は手書きだったので, 学生の間で, 審査員はみんな読めなかったんじゃないかと冗談を言い合いました.

私が書いたのは脳の神話についてだったと思います. 脳の神話とは, 「人間は脳を10%しか使いこなしていない」とか「男脳と女脳の違い」といった類の非科学的な言説です. 私自身は, 「どうして非専門的な人は, こういった脳の神話を信じたがるのか?」というテーマで書きました. 現在にも繋がるテーマだったと思っています.

これは2~3年で廃止されました. 今いる学生のほとんどは経験したことがないと思います.

11. 最後に

最後まで読んでくださった方は, 何をすれば良いか動くきっかけになればと思います.

一番大事なのは, 現在所属する研究室できちんと研究して成果を残したり, 成果が出なくとも徹底的に学ぶことだと思います. 学ぶことは難しく, 長い道のりです. それに比べれば, 今回書いた内容は小さなことですし, 動けばリターンが大きいものです.

実際のインターンや入試の雰囲気などは, 上記の在学生たちのブログにも書いてあるのでそちらを参考にしてください. 

最後に私から声をかけるとするならば, 優しい人であってほしいと思います. 研究者もまた人間なのですから, 仲間を大事に思う行動を忘れないでほしいと思います.

OISTのニュースレターもあるようです.

次回の投稿は, 大学院での生活についてです. 

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そのほか参考ブログ等:



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