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コリン・マクラウド「Hold Fast」

英国からの新人SSW登場!
驚愕のセカンド・アルバムを聴け!

中古レコード屋巡りが日常になっている音楽ファンならディスク・ユニオンのエサ箱に餌付けされている人は多いことだろう。
そんなディスク・ユニオンも店舗での餌付けに留まらず、ネット通販によって、我々音楽ファンは肥育されている今日この頃なのだ。

親切なディスク・ユニオンは通販会員に定期的というか、ほぼ毎日、セール情報やリリース情報のメールを送ってくれるのだが、そんな中に一際目を引く新譜情報が紛れ込んでいたのだ。

「ブルース・スプリングスティーン好きは要チェック…英国の新鋭SSW=コリン・マクラウドのセカンドアルバムがリリース…」

たしか、こんな文面のメールだったと思う。
早速、サブスクでチェックしたところ、既発のファースト・アルバムと新作からの先行シングルを聴くことができた。
ファースト・アルバムはなかなか良い。セカンドからの先行リリースの新曲はもっと良い。これは来たるべきニューアルバムはかなり期待できそうだな。そんな感じで新作のリリースを待っていたのだが、なかなかリリースの具体的なスケジュールは聞こえてこない。

山ほどリリースされる新譜や新たに買った中古盤、レコードストアデイの魅力的なアイテムを追いかけるうちにコリン・マクラウドのことは私の頭の中から少しずつ薄らいでしまっていた。

スポティファイが教えてくれたセカンド・アルバムのリリース

アラフィフになると、新たに覚えることより忘れることの方が多くなる。特に昔のことは覚えているのに、最近の記憶は悲しいほどにあやふやになってしまう。

でも、大丈夫!
スポティファイは新譜のリリース情報を教えてくれるのだ。
そんなわけで、コリン・マクラウドのセカンド・アルバム『Hold Fast』がリリースされたことをスポティファイに教えてもらったのであった。

ロック感、歌心、苦みを増した充実のセカンド・アルバム『Hold Fast』

早速、聴いてみたセカンド・アルバム『Hold Fast』は予想以上の傑作だった。一聴してライアン・アダムスに似ていると感じるその歌声や演奏なのだが、ロック感溢れる力強さの中に詩情や歌心が感じられる作風だ。こうしたルーツロックに根ざしたものは、アメリカから出てくることが多いのだけれど、コリン・マクラウドはイギリスの出身。
どことなく湿り気のあるメロディーと影のある歌い口はイギリス出身ならではと言えるかもしれない。
そして、抑制された弾き語りに近い演奏をバックに歌う地味だけれど味わい深い歌からロック感溢れる力強い曲まで、どれも充実の内容でアルバム1枚を通して飽きることなく聴くことができる作品だ。

いつの時代にも通用する流行とは無縁の本格派

彼のような本格派の新人SSWの情報は、ここ日本で暮らしているとかなり積極的に集めないと得ることが難しいのだが、きっと世界中には地味だけれど、魅力的で良心的な歌を聴かせてくれるアーティストは物凄い数が存在しているのだろう。
しかし、その佇まいや存在感は良くも悪くも地味渋。
アルバムよりは楽曲単位でYou Tubeやサブスクで聴かれる2021年のポップミュージックの有り様とは相性が良いとは決して言えないのが実情だろう。

しかし、コリン・マクラウドは30年前の音楽シーンに現れたとしても確実に一定数のロックファンの耳を捉えたことは間違いないだろう。また、30年後に現れたとしても同じようなことが言えるのではないだろうか?
このように流行やシーンの潮流に左右されない芯のある音楽づくりを志す新進気鋭のSSW=コリン・マクラウドの登場は2021年の私の音楽ライフをとても豊かなものにしてくれた。
彼が日本の洋楽マーケットで今すぐ大きな存在になるかというとなかなか難しそうだが、せめて日本盤がリリースされ、認知度を少しでも上げてもらえたら嬉しいと感じる。

最近のことはすぐ忘れてしまう困ったアラフィフ・ロック・オジサンの心にも強く爪痕を残す歌たちは、力強さと繊細さを同時に持っており、2021年上半期に出会ったアーティストとしてはピカイチの魅力を放っている。

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