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The Police「Ghost in the machine」世界制覇を予感させる充実作

リリース40周年、ポリスの意欲作『ゴースト・イン・ザ・マシーン』

今から40年前の1981年10月2日、ポリスの4枚目のアルバム『ゴースト・イン・ザ・マシーン』がリリースされた。

本作ではシンセサイザーやホーンが導入され、複雑なアレンジが施されており、それまでの作品からグッと大人っぽい作品となっている。

アレンジの幅が広がったことは、楽曲にバラエティをもたらし、スローで落ち着いた曲想やファンキーなビートの導入を促したと言える。それと同時に、それまでのトレードマークだったレゲエ調の楽曲は随分と少なくなっている。

ポリスのキャリアにおける本作の位置付け

ポリスのキャリアを振り返ると、どうしてもファーストの『アウトランドス・ダムール』とラストアルバムの『シンクロニシティー』の印象が強い。
前者はパンク・ムーブメントの真っ只中にリリースされた衝撃のデビューアルバムであり、とにかく良い曲がたくさん詰まっている。
そして、後者は説明不要の大ヒット作で80年代ポップミュージックを代表する名バラード「見つめていたい」が収録されている。

そんなわけで、本作『ゴースト・イン・ザ・マシーン』はディスコグラフィの中でも後回しにされがちな作品なのだが…何とも勿体ない話である!

サードアルバム『ゼニヤッタ・モンダッタ』までのポリスは、ギターバンド然とした演奏を基本とし、“どこがパンクやねん!”とツッコみたくなるほどの卓越した演奏技術とスティングの魅力的なソングライティングでヒット曲を連発してきた。
もう、ある意味、確実な必勝パターンを手に入れたバンドだったのだが、本作では新たな試みにチャレンジしながらも、見事にセールスと音楽的評価の両方を手に入れている。

また、この頃、イギリスの白人ロックバンドがシンセサイザーやファンキーなリズムを取り入れると、どういうわけか80's臭プンプンになってしまい、21世紀の現在では恥ずかしくて聴けないものになりがちなのだが、本作は売れ線を狙ったセルアウト感は微塵も感じないどころか、的確な演奏とアレンジ、ポップとアバンギャルドのバランス、スティングの声…と魅力をあげると枚挙にいとまがないほどの充実ぶりなのだ。

アルバム前半にシングルヒットを並べ、中盤はファンキーな新機軸、そして終盤には深淵な世界観を表現した楽曲を配置し、アルバム1枚としての構成も手堅く文句の付けようがないものとなっている。

スティングだけではない!3人の個性がぶつかり合って生まれた傑作

ポリスのメインソングライターは紛れもなくスティングなのだが、本作ではアンディ・サマーズ、スチュワート・コープランドの楽曲も充実しており、特にアンディのペンによる「オメガマン」は、個人的にはポリスのレパートリーの中でも屈指の名曲だと感じている。疾走感ある演奏にポップなメロディーが奏でられ、歌われる内容は終末観が漂うシニカルなものだ。

1978年、パンクバンドの1つとしてデビューしたポリスだが、キッカリ年1枚のアルバムリリースのペースを維持し、1981年には本作『ゴースト・イン・ザ・マシーン』の高みにまで達している。現在のロックバンドのリリース・ペースと比較すると想像もつかないほど濃密な創作だったのではないだろうか。

そして、本作からポリスにしては長い2年のインターバルを取って最終楽章の『シンクロニシティー』へと向かって行くのだ。
『シンクロニシティー』もスティングのボーカルを最大限に活かしたシングルカット向きの楽曲とアンディやスチュワートが作ったアバンギャルドな実験的な楽曲が含まれており、その振り幅は『ゴースト・イン・ザ・マシーン』よりも遥かに大きい。
こうしたアバンギャルドな楽曲とポップな楽曲を上手く調和させるアルバム構成の手法は、本作『ゴースト・イン・ザ・マシーン』から得た成果を更にブラッシュアップしたもので、『シンクロニシティー』の制作にも思う存分に活かされていることは一目瞭然だ。

ロック史的には『シンクロニシティー』、「見つめていたい」ばかりに注目が集まるのは仕方ないことなのだろうが、『シンクロニシティー』への序章という位置付けに留まらず、本作が独立した作品として再評価されることをリリース40周年を契機に期待したいと感じている。

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